本書は、ジェホヴィの息子リカの時代における信仰者たちの3大指導者カピーリャ、モーセ、チンの歴史です。上界の書(リカ)が天界に関するものだとしたら、下界の書(ボンの弧)は、神の統治における地上の出来事を主に扱っています。
【1章】
- ヴィンデュのヤティンハダッタの上級国にあるダーマの山で、ジェホヴィの息子である神は、離散してしまった信仰者たちを集め、安全と繁栄を確立させるため、カピーリャの一族を選びました。
- カピーリャの時代から遡ること6世代前、神は天界の聖なる丘に降臨し、現在ヴィンデュと呼ばれるセムの地に降り立ちました。
- 神は領内全土に大声で呼びかけましたが、誰一人その声を聞く者はいませんでした。
- そこで神は天使たちを呼び寄せてこう言いました。
「ここに来て見てください。ここには何百万人も住む大国があるのに、彼らは神の声を聞くことができません」 - 神は天使たちに定命の人間たちの下に降臨し、6世代にわたって彼らと共に住むように命じました。
- 神は天使たちにこう言いました。
「神の声にとって都合が良いように、あなたたちは啓示やそれ以外の方法で男女が夫婦となるように導きなさい。私は御父の信仰者を救済するため、私の声を聞くことができる1人の人間を育てなさい」 - その時、天使ヒラタクスを指揮官に50万にも及ぶ神の天使たちが地上に降臨しました。ヒラタクスは天使の眷族をいくつかのグループに分けてそれぞれヴィンデュの特定の場所を割り当てて、そこで暮らし、任務に当たらせました。
- 当時、信仰者たちはヴェーデ、パーシー、ヒヤ、シアッタホーマといった名で知られていましたが、その他にも特記されないような様々な名前で呼ばれていました。
- 彼らはある場所では奴隷であり、ある場所では農奴、そしてまたある場所では荒野や山中に隠れ住んでいました。彼らは無抵抗で臆病であり、ディアスやその他の偽神や偽主神の偶像崇拝者により激しい迫害に遭っていました。
【2章】
- カピーリャの誕生に至るまでの離散した部族の系図は次の通りです。
- 主神の子ブラフマーの系譜において、ハティヴはルノアドを生み、ルノアドはヤイドを生み、ヤイドはオヴァラナを生み、オヴァラナはチェサムを生み、チェサムはホッタヤを生み、ホッタヤはリヴィアトを生み、リヴィアトはドールを生み、ドールはアヴラを生み、アヴラはルタを生み、ルタはジェイムを生み、ジェイムはヤンハドを生み、ヤンハドはヴラヴィシャを生み、ヴラヴィシャはホアミヤを生み、ホアミヤはウォチャを生み、ウォチャはサラッタを生み、サラッタはフリヴィースタを生み、フリヴィースタはサマトラヴを生み、サマトラヴはガトナットを生み、ガトナットはトゥリンを生み、トゥリンはヴリサガを生み、ヴリサガはヘセムウォッチを生み、ヘセムウォッチはラタを生み、ラタはヨシュオルヴァトを生み、ヨシュオルヴァトはカピーリャを生みました。
- 神の聖天使たちを通して神の道を知り、神の啓示の光の中で役立てなさい。
- カピーリャは生まれながらの無性者であり、また生まれながらのスイスでもありサルギスでもありました。
- 神は言いました。
「ご覧なさい、人間は自分の農園で種なしの果実の栽培を学ぶだけでなく、全ての果肉が『不毛』という同じ方向に向かうことも学ばなければなりません」 - 人間がジェホヴィの光に近づくにつれ、その種族の子孫は少なくなります。そして人間が『あらゆる光』と一体となる時、ご覧なさい、その者もまた無性者となるのです。
- 神は言いました。
「減食と断食によって、無性者でない多くの人々でさえも無性者に到達することは可能です。しかし、生まれながらの無性者は、ジェホヴィの道にさらに近づくことができるのです」 - カピーリャが生まれた時、彼の頭上に三日月の光が現れ、その光の中から神の声が聞こえてきました。
「この子は私の息子です。この子により、私は私の民を迫害してきた暴君たちの政府を倒します」 - カピーリャの母が身籠っていた時、大天使ヒラタクスの指揮下にあるジェホヴィの天使たちは、昼も夜も聖なる思いを巡らしながら彼女を守護していたため、母親の心はいつも天上のことを想っていました。
- カピーリャが生まれると、ご覧なさい、ヒラタクスは144人の天使の眷族を任命し、昼夜を問わずその子と共にいるようにしました。そして守護天使たちを4つに分けて、6時間毎に交替で監視に当たらせました。
- こうして神の天使たちはカピーリャに生まれた時から教育を施したので、カピーリャは他のすべての子供たちよりも賢くなりました。
- ところで、神が創造主の栄光のために諸国を統治する方法について、この救出の歴史を考えてみてください。
- ジェホヴィは、ヴィンデュの王の権力が、ハフガニスタンの王ヨコヴラナに集中することを許しました。ヨコヴラナは首都オブロウスキの王であり、ディアスに捧げられた大都市でした。ヨコヴラナは自国に貢納する40の州と400の都市を持っており、各都市はそれぞれ1人ずつ統治者がおり、ヨコヴラナ王の王室評議会は彼らで構成されていました。
- ハフガニスタンの法律では、最年長の男子の相続人が王位を継承しました。しかし王に男子の相続人がいない場合、王の長兄の男子が相続人となり王位を継承しました。そのため、どの王も男子を望みましたが、ヨコヴラナはジェホヴィの天使であるルーイの計画によって阻まれました。
- ルーイ長ヒラタクスはこう言いました。
「ジェホヴィよ、私はあなたの後継者を育てるだけでなく、あなたの栄光のためにその敵をも支配してみせましょう。私は啓示を下して、王の中の王と不妊の女と結婚させます。王には後継者が生まれないので、彼は迫害され追放されている信仰者たちを救う私の手駒となることでしょう」 - 当時、偉大なる霊魂オーマズドの崇拝者の子孫は教育を受けることを禁止されていました。それは、選ばれた民である信仰者たちの中から学識のある人物が救済に現れることを恐れたからで、彼らを無知の中に閉じ込めておくためでした。ジェホヴィの天使は、カピーリャが学識のある人物であり、各都市や王室会議に顔が利くようになることを予見していました。
この件に関して、天使ヒラタクスは、子供がいない大王ヨコヴラナは王位継承者となる後継者を望むであろうと予言しました。 - 王が神託を伺うと、見てください、ジェホヴィの天使たちが王にこう答えました。
「妻を暗い部屋に9ヶ月間閉じ込めておきなさい。そうすれば、彼女は男の子を産むでしょう。その子はあなたの弟の子供から王位を守ってくれることでしょう」 - 王は、出産期が終わろうとしていた王妃にそのことを伝えましたが、王妃は信じようとしませんでした。それでも王妃は神託にお伺いを立てると、ジェホヴィの天使はこう言いました。
「王は王位継承者を得ようとして、今まで妻を殺してきたのではありませんか?」 - 王妃は頷くと、こう続けました。
「確かに私は子供が産めないことが分かっていますが、どうしたらよいでしょうか?」 - 天使は言いました。
「王の仰せの通りにしなさい。そうすれば、天使たちがあなたが閉じ込められている暗い部屋に男の子を連れて来ます。あなたの侍女と召使いたちには、他の女性があなたの部屋に入ってこないように見張りをさせなさい。そうすれば、その子があなたの子であることの証拠となります。
また、死刑に処せられる恐れがあるので、このことは王に告げてはなりません」 - 一方で、ジェホヴィの天使たちはカピーリャの父母に、カピーリャが生まれる前から、その子が連れ去られ、最も憎まれ残虐な人物として知られるヨコヴラナ王に引き渡されることを予言していました。
天使たちはさらにこう言いました。
「あなたたちはその子を失っても悲しんではいけません。なぜなら、オーマズドはその子を民衆の救世主とするからです。それにその子が王妃に渡された日に、その子の母親が乳母となります」 - これらは実行され、カピーリャが生まれると天使たちは天使たちは彼をオブロウスキの町へと連れて行き、そこにあった王宮へと運び込み、暗い部屋の中で王妃の腕の中に抱かせました。
そしてこの瞬間、天使たちは部屋を照らすと、侍女や召使いたちは誰もがその子とその光を見て驚愕し、その場に平伏し、ディアスの庇護を求めてお祈りしたのでした。
【3章】
- ヨコヴラナが神殿へ生贄を捧げに行った時、大司祭はヨコヴラナにその子と王国のために神託を伺うようにお願いしました。ヨコヴラナが神託を伺うと、オーマズドの天使たちがこう告げました。
「王よ、万民から畏敬される汝は王国とカピーリャのために天界の天使たちの言葉を聞き、賢明に行動しなさい。
ご覧なさい、汝は先祖の慣習を守り、12番目の新月の時、毎日、神ディウスの祭壇で12人の若者と12人の乙女を殺害したのは、血によって汝が仕えし神が地上で勝利し、汝が最も恐れられる王となるためでした。それにより汝は、自分と自分が定めた法を崇めさせるために、あらゆる豊穣な地域を征服しました。 - それゆえ、天界の神は汝に告げます。
汝はもはや人間の血を供えてはなりません。その代わりに『汝の神の子羊』と呼ばれる子羊の血を祭壇に捧げなさい。そして、供物を捧げる最初の日にカピーリャを祭壇に連れて行き、汝の神への血の供物として、汝が屠った子羊の血をその頭に振りかけなさい。その子は天界の子羊『カピーリャ』と呼ばれるでしょう」 - これに同意した王は、カピーリャを王の祭壇に連れて行き、生贄として捧げられた子羊の血を振りかけました。これはヴィンデュの邪悪な神々による邪悪な布告に終止符が打たれた最初の瞬間でした。それ以降、王たちはこれを受け継いでいき、人間はもはや神々に生贄として供されることがなくなったのでした。
- カピーリャはヨコヴラナの息子と呼ばれ、当時君主に教えることが許されていたあらゆることを教えられました。また、王になるための準備として、ヴィンデュの国のすべての従属都市や国王や知事と面識を持たせました。
- カピーリャに関する以下の啓示については、全てにおいてジェホヴィ(オーマズド)の天使たちに導かれていたことを知っておいてください。
- カピーリャは成人すると、王に旅の許可を願い出ました。
「最も偉大な叡智とは、目や耳から得られるものではないででしょうか?
将来王となる者は、若いうちに王国をよく知っておくことが賢明ではないでしょうか?
そうすれば、年老いてから見聞を広めるだけでなく、統治の本質的なところ、つまり民衆にとって最も必要なものは何なのかを考える時間が得られます。 - これに対して王はこう答えました。
「息子よ、お前はすでに賢い。古の法について、お前は地球とその民について十分詳しい。それなのに知恵を求めて旅をするのは大きな愚行である。お前の目と耳は鋭敏すぎるのだ。お前にとって王国の民を見ない方が良かろう。
お前はいずれ彼らに厳しい仕打ちをせねばならぬ時が来る。それゆえ、彼らのことを知らないからと言って、お前の優しさが正義から外れることはあるまい」 - カピーリャは言いました。
「王よ、あなたは論理的に物事を判断なさられるお方です。あなたが賢いからといって、私が賢いという保証はありません。
息子の知恵は父から受け継がれるものです。あなたはこのように論理的に私の意見を拒んでくださったのですから、どうかお答えください。
若い王子が強大な王国の心配をする前に、外国に行って世俗の享楽を楽しむのは利益にならないでしょうか?」 - 王は言いました。
「この世には三つの楽しみしかない。一つ目が食べることと飲むこと。もう一つが寝ること。そして三つめが女と過ごすことだ。
それなのに、どうして外国に行かねばならぬのだ?」 - カピーリャは言いました。
「どうして息子を旅に出させたくないのですか。その本当の理由を隠しているではありませんか」 - 王は言いました。
「もし本当の理由を言うのであれば、お前が望むところに行かせてやろう」 - カピリヤは言いました。
「まず最初にお伝えします。あなたが私を拒んでくださったことを大変嬉しく思います。
王よ、私はあなたをとても愛しており、あなたと共にいること以外に喜びを知りませんでした。また、あなたは息子を深く愛しているので、息子が自分から遠く離れることを望んでいないということでしょうか?」 - 王はこの返事に大変気を良くし、こう言いました。
「王子よ、確かにお前の言う通りだ。もしお前が私の下から離れてしばらく旅に出たいというのであれば、私はお前が戻るまでこの淋しさを甘んじて受け入れよう」 - カピーリャは9年間旅を続け、ヴィンデュの地を東西南北の果てまで足を延ばしました。乳母、つまり実の母から、信仰者たちの迫害と苦難についての話を何千回も聞かされていたため、彼は離散した人々についての情報を得ようとしましたが、この時はまだ自分がその種族であることを知らずにいました。
- 9年後、カピーリャはヴィンデュの住民に関する豊富な知識を身に付けてヤティンハダッタに帰還しました。
ヨコヴラナ王の御前に出向き、大歓迎を受けたカピーリャは、ヴィンデュの国について得た知識、その広大さと壮大さ、そして数百の大都市と無数の住民について語りました。
こういった知識に耳を傾けた王は、カピーリャを世界で最も賢明で博学な人物であると宣言しました。 - そしてついにジェホヴィの子である神が降臨し、ジェホヴィへの信仰を確立し、信仰者たちを解放して、定められし場所に集める時が到来したのでした。
【4章】
- ジェホヴィ(オーマズド)の言葉がカピーリャに届き、こう仰せになりました。
「天界の息子よ、『永遠に臨在せし者』の声を聞きなさい!」
カピーリャはこう尋ねました。
「あなたは何を仰せになりますか?
『永遠に臨在せし者』よ?」 - ジェホヴィ(オーマズド)はこう仰せになりました。
「私を見なさい。私は王の法律に属す者ではありません。
私は王を作った創造主です。彼らは『永遠に臨在せし者』なる私に反する法を制定し、私の民を離散させ、私の民が知識を得る権利を否定しました。」 - カピーリャは言いました。
「私の目と耳はこのことを実際に確認しました。あなたの僕として何をしたらよろしいでしょうか?」 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「あなたは奴隷たちを解放し、古代の法に則って、一緒に暮らせる場所を用意しなさい」 - カピーリャは言いました。
「ああ、オーマズド(ジェホヴィ)よ、どうしてあなたの僕の私にこのようなことを課したのですか?
どうしてあなたはこのことをヴリクスの手に委ねなかったのですか?」 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「あなたは信仰者の一族であり、今回のことは生まれたときから用意してきたことなのです。
幼い頃にあなたを世話してくれた乳母を探しに行き、彼女と二人きりになった時にこう言いなさい。
『乳母よ、天の声が私に聞こえました、カピーリャよ、あなたは信仰者の一族である、と。それについて何か言うことはありますか?』と。
すると乳母はあなたにこう言うでしょう。
『息子よ!息子よ!ああ、私は悲しい!
あなたを、あるいはあなたの母を死なせようとでもしているのですか?
そんな定めではなかったはずですが?』」 - カピーリャは乳母のところへ行き、言われた通りに尋ねると、乳母はこう言いました。
「息子よ、息子よ。ああ!
私があなたやあなたの母の死になると思っているのですか?
それが定めではないのですか?」
カピーリャはこう答えました。
「それが定めです。しかし、真実を話してください。そうすれば、ディウスの名と、あなたの神、ジェホヴィ(オーマズド)の御名において、神の御心のままにあなたの言葉を秘密にすることを誓います。
私は養子に出されたヴリクスなのでしょうか?」 - 乳母は言いました。
「あなたは生涯私を愛してくださり、私はあなたを乳房から育ててきました。それなのに、私はあなたの愛を失い、悲しみに暮れて死んでしまうのでしょうか?」 - カピーリャは神々の前で誓いを立てると、彼女はカピーリャにこう答えてました。
「王子様、私はあなたの母です! 『永遠に臨在する御方』の天使たちは、あなたが生まれた瞬間に私のもとにやって来て、あなたを王妃の腕の中に運びました。
そして王は今日に至るまで、あなたが自分の子であることを知りません」 - カピーリャは言いました。
「なぜこんなことが起きたのですか?」 - 乳母は言いました。
「王子様、お聞きください!
王妃は不妊であり、王は王位継承者となる男子を望んでおいででした」 - カピーリャが口を挟みました。
「それで、あなたは自分が生んだ血肉を王妃に献上して、このことを成し遂げたのですか?」 - 乳母は言いました。
「王子様、ご勘弁ください!
私はただ一人の王『永遠に臨在する御方』を信じる一族です!
ですから、真実をすべて理解するまで私の言うことを信じてください。
あなたが生まれる前にオーマズドの天使たちが私のもとにやって来てこう言ったのです。
『ああ、選ばれし民は迫害され、虐待され、散り散りになり、軽蔑されています。しかし、彼らは忠実で最も高潔なため『永遠に臨在する御方』が来訪し救ってくださるでしょう』
そこで私は天使たちにこう言いました。
『それを私に言って何ができるのでしょうか?
見てください、私はただの召使いで、何もできません』 - すると天使はこう答えました。
『あなたは男児を産んだら、その子にカピーリャと名付けなさい。その子はあなたの民の救世主となることでしょう。そのためにはカピーリャに偉大な学問を受けさせる必要があります。しかしあなたの民は偉大な学問を受けることを禁じられているので、その子を王妃の養子とします。王はその子を我が子と信じ、学問と権力を与えることでしょう』 - 私は天使に言いました。
『もし私がジェホヴィ(オーマズド)にお仕えすることができたならば、私の肉や血には何の価値もありません』」 - カピーリャは言いました。
「あなたが私を神に委ねた以上、私は確かに彼の御方のものです」
彼らがまだ話しているうちに、ジェホヴィがカピーリャにこう仰せになりました。
「私は人々に新しい教義を与えるために来たのではなく、私の民を拘束から解き放ち、地上の住民と同じ権利を回復するために来たのです。
カピーリャよ、あなたはこの目的のためにこの世に派遣されたのです。
あなたが信仰者の血統であったからこそ、私の声が届いたのです。 - 王はあなたを自分の息子と信じており、深く愛しているがゆえに、あなたは王の手から逃れることはできません。
さあ、私が導く場所に行きなさい。私が、霊的な手段であなたを導くためにやって来た『永遠に臨在する御方』であることを証明してみせます」 - やがて王子は、王に目的を告げずに家を出発し、ジェホヴィの導きに従ってヴェスタタ川のほとりにあるホサゴウェスに到着しました。そこには森があり、牧草地が点在しており、流浪の4家族の信仰者たちが野営しているのを見つけました。
彼らは飢えに苦しんでおり、ぼろぼろの服を着ていました。 - 王子は彼らが恐れているのを見てこう言いました。
「恐れないでください。私は迫害したり、追い払ったりするために来たのではありません。
この服装で分かるように、私は王子です。だからと言って私をあなたたちを滅ぼすために来た敵だと決めつけないでください。
あなたたちがここに導かれたのと同じ力で、私もまた来たのです。
この土地を永遠にあなたたちに遺贈します。だから、各地を旅するのはもうやめて、この土地を開墾してください」 - ラバのヤティサッカは言いました。
「あなた様は何を仰っているのですか?
あなた様も同じ神によってここに連れてこられたのですか?
それならばあなた様は本当に印と合言葉を存じていますか?」 - カピーリャは言いました。
「そのことについては何も知りません。
しかし、あなたの民の間にはジェホヴィから誰かが遣わされ、選ばれし民を回復するという伝説があります。ですから私はあなたたちに告げます。私がその人です。あなたたちの支配者は私の支配者でもあります。
ラバよ、私を秘密の場所へと連れて行ってください。そうすれば『永遠に臨在する御方』が印と合言葉を与え、私のことを証明するはずです。 - さらに、あなたにこうも予言します。
三つの太陽が昇り沈む前に、あなたの民が何百人もこの地に来訪するでしょう」
ラバはカピーリャを調べ、彼が印と合言葉を持っていることを知って大変驚きました。
王子は木と石を100人が座るのに十分な大きさの三日月形に並べさせました。
カピーリャは言いました。
「これはジェホヴィ(オーマズド)の祭壇です。今夜はここに座りましょう。
御父の声は私と共にあります」 - 昼にはさらに多くの者がやって来て、夜には男、女、子供合わせて100人となり、王子は彼らにエホヴィの祭壇の周りに座るよう命じました。
するとすぐに祭壇の真ん中で声がして、
「この子は私の息子です。預言の通り、私の民を回復するために生まれた者です。
見なさい、私は『永遠に臨在する者』であり、人間の姿や形をしているわけではありません。
私は全ての空間、全ての場所そのものであり、天使たちと人間の霊魂を通して私の意志を行います。
義なる行いと互いの愛を堅持し、他のすべての民に対しても最も公正な行いをしなさい。
太古の昔、私はあなたたちの先祖と共にいましたが、同じように私はあなたたちと共にいる世界を確立します」 - カピーリャは最年長のラバを祭壇長に任命しました。これは、王子から追い払われないと保証された、100年ぶりに組織された家族(共同体)でした。
- 翌日、王子は民を少し離れた場所、徒歩で半時間ほどのところに連れて行き、こう言いました。
「ここにもう一つ祭壇を築きなさい。夜が来る前にこの祭壇にも人が来るでしょう。
『永遠に臨在する御方』のために祭壇を用意しておきなさい」
人々は信仰心に駆られてもう一つの祭壇を築きました。
祭壇が完成し日が沈むと、多くの信仰深い流浪の民たちがその場所にやって来ました。 - カピーリャは彼らにこう言いました。
「オーマズドの祭壇に来なさい。彼の御方は祝福する者すべてに生贄を望んでいるからです」
人々は祭壇の中に入って歌い、神に感謝を捧げてお祈りしました。
ジェホヴィはこう仰せになりました。
「私はあなたたちに、等間隔にさらに三つの祭壇を造るように命じました。なぜならこの三つの生贄の場に私の民を集めるからです」 - 翌日、高山地帯トゥベトからの襲撃者との戦いが続いていたアナサイオン州から逃れてきた多くの流浪の民がやって来ました。
カピーリャは彼らのためにも祭壇を築き、ラバと大ラバを任命しました。 - 彼らには食料がなく、多くの人々が何日も飢えていました。
カピーリャは民衆の中に自分を疑う者がいることに気付き、こう言いました。
「私を通してジェホヴィを信じる者は、今夜私と共にいなさい。御父が私たちの下に現れてくださるからです」 - その場所には40人しか集まりませんでした。なぜならカピーリャが詐欺師ではないかと恐れていたからでした。
この40人が集まると、カピリヤは彼らを試してみて、彼らが確かに信仰を持っていることを知りました。
カピーリャは彼らにこう言いました。
「輪になって手をつなぎ、立ちなさい。私はその真ん中に立ちます。但し、偉大なる霊魂が私たちに何をしてくださるかは私にも分かりません」 - 彼らが輪を作って立っていると、ジェホヴィが冷たい風を送り、天界からアハオマが豊富に降り注ぎ、それは人々を何日も養うのに十分な量でした。
アハオマが何であるかを知る者は誰もいませんでしたが、それは風味豊かで栄養価も高かったのでした。 - 人々は来てここで食事をしたり、またアハオマを集めて家に持ち帰りました。
カピーリャは彼らにこう言いました。
「オーマズドがこのようなことをなさったのですから祭壇に入り、彼の御方に感謝を捧げなさい」 - 人々は命じられた通りにして、この時からカピーリャへの信仰を失った者は誰一人いませんでした。
カピーリャは人々にこう言いました。
「この地はマクサビと呼ぶことにします。なぜなら、この地は御父がその御手で人々を養われた、世界で最初の植民地(タラグ・アトゥ)だからです」
こうしてその地はヴェーダ語でスタ・チ・チ(私は食物で語る!)を意味する『マクサビ』と呼ばれました。
【5章】
- カピーリャは40日間マクサビに留まり、人々を教えたり支援しました。そして40日目に彼は人々にこう言いました。
「もう行きます。御父が私を求めておいでだからです。
ジェホヴィに忠実であり、生贄(礼拝)を守りなさい。ジェホヴィの目はあなた方に注がれており、彼の御方の耳はあなた方が話す言葉だけでなく、あなた方が心に抱く思いをも聞いています。
後で私はあなたたちの所にもう一度訪れて、儀式と式典を回復します」 - ジェホヴィはカピーリャに言いました。
「ホサゴウェテで行ったように、ティベトキルラテでも行うように。
私はユシトラ州から私に選ばれし民を連れて来ます」 - そこでカピーリャはティベトキルラトに行くと、そこには700人以上の信者が集まっていました。
彼らはカピーリャを恐れ、互いにこう言いました。
「これは我々を罠にかけるために王が派遣した者ではないのか?」 - しかし自分を恐れているのを見て取ったカピーリャはこう言いました。
「オーマズドを信じる者は、天地の何者も恐れません。なぜなら全ての民には御父が割り当てた『時』があり、それは長くしたり短くしたりできないものだからです」
ラバの一人トロトナはカピーリャにこう言いました。
「あなたは本当に私たちの一人なのでしょうか?」
カピーリャは言いました。
「私は私です、それ故にあなたの問いに答えることはできません。もし私があなたと同族であると言ったならば、あなたの民の自由は回復されないでしょう。なぜなら私はあなたの民の『教師』として死を覚悟しなければならないからです。
もし私があなたと同族ではないと言ったならば、あなたの民は私を信じることはないでしょう。 - あなたたちに告げます。
あなたたちと同じく、私はただ一人の人間に過ぎません。
私は純粋でも善でもありません。なぜなら、純粋なのは創造主だけだからです。それ故に、あなたたちはジェホヴィを信仰し、私の言葉と働きが善である限り、他の者と同等に扱ってください。それ以上でもそれ以下でもなく。
しかし、あなたたちが信じている『常に臨在する神』を私は信じています。そしてあなたたちが信じていない『人の姿をした神』を私も信じません。 - 人間は皆兄弟であり、同じ霊魂によって創造されたのではありませんか?
この教義を認めない王たちはあなたたちの民を迫害し、追放します。
あなたたちの民は、私の民でもあり、その民を回復するために、私はこの世に遣わされたのです。
私の責務は重大です。この使命のために、私はあなたたちとその民と共にここにいるのです。 - この周囲の土地を、私は信仰者たちに贈ります。信仰者はここに定住し、開墾し、収穫し、もはや追放されることはないでしょう。
そして時が来れば私は教師を用意し、信仰者たちは知識を得る権利を手に入れることでしょう。 - カピーリャは大衆のために祭壇を築き、こう言いました。
「最初にあなたたちが手にしているすべてのものを神に捧げなさい。なぜなら偉大なる霊魂に捧げる儀式がなければ、あなたたちの民は調和を保てないからです。儀式を怠ることは、すべてのことを怠ることでもあります。
あなたたちは古代人の教義を知っていますか?」 - ラバの誰もカピーリャに答えることができなかったので、カピーリャは言いました。
「オーマズドはあなたたちの僕に多くの学識を与えました。私がここに遣わされたのはそのためなのです。ですからザラツゥストラやブラフマーの時代から続く古代人の教義を知りなさい。 - 日の出とともに起きなさい。
毎日一度体を洗い、肉も魚も食べないように。
日の出、正午、日没、そして寝る前にオーマズドにお祈りしなさい。 - 自惚れたある哲学者はこう言いました。
『日の出から1時間後に起きるのは罪ではない。
7日のうち1日だけ入浴すれば十分だ。血が冷たい魚の肉を食べるのは罪ではない』
ところが見なさい、彼らは2時間床に横たわり、入浴を一切やめ、食事に関しても魚の肉どころか、あらゆる肉を食べるようになりました。
こうして彼らは罪を得て、自分から御父を切り離していったのです。 - 聖書の一節に忠実に従いなさい。『不服』の扉を開く者やその哲学とは一切関わらないように。
- カピーリャは尋ねました。
「どうして人は悪行ではなく善行を行うのでしょうか?
また他の人は善行ではなく悪行を行うのでしょうか?」
ラバたちは答えました。
「前者はオーマズドに語り掛けられ、後者は悪魔に語り掛けられたからです。なぜなら、これらは人間の中に宿り、そのまま現れるからです」 - カピーリャは言いました。
「納得の答えです。だからこそ、あなたたちに祭壇を築き、供物を捧げるように命じたのです。なぜなら、それらはあなたたちの魂の表現であり、あなたたちが破壊者よりも創造主に仕えることを望んでいることの証明になるからです」 - これは古代のザラツゥストラの教義でもありましたが、他の哲学者たちは自分の考えに驕り、こう言いました。
「人は石や木の祭壇を築かずに、心の中で礼拝できないのだろうか?」
群衆は彼らの言葉に耳を傾け、さらにこう続けました。
「そもそもどうして礼拝するのだろうか?」
こうして彼らは闇に落ちていきました。
外面的な礼拝の表現を持たない魂は、地獄の淵に立っているのです。 - 通りすがりに祭壇を見たら、礼拝と創造主オルマズドへの思いが強く湧き上がり、魂は高みへと導かれます。悪や悪への誘惑を見ることは、魂が闇に導かれることになります。ですから、男女を問わず、身なりには慎み深くいなければならないのです。しかし、供物を捧げる祭壇は数多く設けなさい。
- カピーリャは尋ねました。
「第一の毒とは何だと思いますか?」
ラバたちは、カピーリャが博学で知恵に富んでいることを知っていたため、どう答えてよいか分からずにいました。
カピーリャは答えました。
「第一の毒とは自分自身のことです。
ある人が『儀式や祈りは愚かで無学な者には良いものですが私には必要ありません』と言ったとします。
私はあなた方にこう言います。
その人は第一の毒に酔っているのです。
その者の息があなたたちに吹きかかるのを許さないでください。そこから破滅の楔が打ち込まれてしまいます」 - カピーリャは言いました。
「第二の毒とは何だと思いますか?」
しかし誰も答えないのでこう言いました。
「第一の毒は第二の毒を生み出します。それは他者を導き、支配したいという欲望です」
ラバの一人タアイはこう尋ねました。
「指導者なしで、どうやってやっていけるというのですか?」 - カピーリャは言いました。
「誰にも導かれはなりません。善人とは『あらゆる光』を体現した姿なのです」
カピーリャは尋ねました。
「最良にして最も危険なものとは何だと思いますか?」
ある者が答えたら、別の者は他のことについて答えました。
カピーリャは言いました。
「最良にして最も危険なものとは言葉です。
善いこと、喜びのこと、愛のこと、オーマズドとその素晴らしい創造物のこと、生と死のこと、永遠の幸福のこと、これらは善い言葉であり、魂に大きな幸福を与えるものです。
悪のこと、邪悪な行いのこと、そういった隣人、嫌らしい振舞いや発言、これらは悪魔の懐を豊かにします。 - ある三人の男が大きな町を旅しました。彼らが家に帰ると、近所の人々が集まって彼らの旅の話を聞きました。
旅人の一人は見たもの、良いことも悪いこともすべて語り、もう一人は見た悪いことばかりを語り、もう一人は見た良いこと、喜びや最も美しいものばかりを語りました。
さて、この三人の中で誰が御父の王国のために最も貢献していると言えるでしょうか?」
ラバたちは言いました。
「最後の者です」
カピーリャは言いました。
「その通りです!
ですから、互いにそういった人になりなさい。そうすれば、言葉は危険ではなく、むしろ世のためになるのです。 - 世の中の悪事を語るのに悪人の数は十分足りています。善を語りなさい。常に清い地を歩むことによって、言葉と行いにおいて清くあり続けることができるからです。
- 霊魂と人間の両方を吟味しつつも、言葉に華やかさを求めてはいけません。なぜなら、その華やかさはしばしば毒を隠し、あるいは気づかないうちに感覚を蝕むからです。むしろそういった言葉を、人生に喜びをもたらす聖なる考えや善なる喜悦とならないか探ってみてください。
欺瞞者、嘘つき、放蕩者を厳しく批判する者は、悪魔がもたらす地獄の火消し人です。その者には何も答えてはいけません。そうしないとあなたたちの言葉が罠となり、あなたたち自身を捕らえてしまうからです」
【6章】
- カピーリャは3年間、ヴィンデュの地を東西南北に旅し、信仰者たちを見つけるたびに定住させました。そして、荒れ果てて耕作されていない土地をすべて彼らに与えていきましたが、人が住み、開墾された土地には手をつけませんでした。
- こうして地方の使用人たちは主人のもとから逃げ出してジェホヴィの土地へと移住したため、その影響は計り知れないものとなりました。そのため、総督や属国の王たちはカピーリャに対して不満を訴え、そのことはカピリヤの養父である大王ヨコヴラナに報告されました。
王は使者を派遣し、息子のカピーリャを首都へ召還し、この告発に回答させました。 - カピーリャが王室評議会の前に立つと、王はカピーリャに「どうしてお前がこの場にいるのか分かるか」と問われると、カピーリャはこう言いました。
「偉大な王の下僕が答えるその言葉はいずれも『束縛された言葉』です。しかしカピーリャの口から出る言葉はすべて、カピーリャが自分の言葉として発するものです。
死者の霊魂に操られた舌を持つ者は、自分の言葉に責任を負わないと言う者がきます。しかしカピーリャはそんな輩が入り込む穴を微塵も持ちません。
自分の肉体、欲望、情熱、そして言葉を制御できることは実に偉大な才能です。
カピーリャはこのことを断言します。それゆえ、カピーリャはすべての言葉において責任を持って発言します。 - 王室評議会の諸君、我らが偉大なる王ヨコヴラナに仕える諸君、カピーリャは王によってここに召集され、王室評議会の諸君らによる告発に答えます。
これらの告発は、カピーリャがいくつかの植民地を設立し、それによって属国の王や富裕層の臣民を誘引し、他の人々に不信感の種を蒔いたというものです。 - カピーリャはこれらの告発に答えるためにここに来ました。さあ、カピーリャの答えを聞いてください。
王位継承者であるカピリヤは、王に旅の許可を願い出ました。王はカピーリャにこう言いました。
『連合王国にとって良いことと思われることは何でも行うがよい』
王は確かにそう言いました。違いますか?」 - ヨコヴラナは言いました。
「その通りだ、息子よ」
するとカピーリャは言いました。
「カピーリャは9年間、遠くまで旅をしましたが、貧しい人々の惨めさと富める人々の栄光に心を痛めました。
カピーリャは多くの森や平原に誰も住んでいないのを知ると心の中でこう思いました。
『貧しい人たちをここに来て暮らさせよう』
しかしカピーリャは貧しい人を誰一人も呼びませんでした。
ではカピーリャが心の中でそう呟いたのは悪いことだったのでしょうか?」 - 王は言いました。
「まさか、そんなはずがあるまい」
するとカピーリャは続けました。
「こうして長い期間何もせずにいた後、カピーリャは二度目の旅に出ました。森や平原に着くと、なんと貧しい人々が集まっており、さらに多くの人々がやって来ました。
そこでカピーリャは彼らの間を歩き回り、共に賢く暮らす方法を教えました。
これはカピーリャにとって悪いことだったのでしょうか?」 - 王は言いました。
「いや、それは良いことだ」
そこでカピーリャは言いました。
「しばらくして彼らは共に暮らし、互いに助け合うことが良いことだと気づきました。そしてその噂が広まり、総督や富豪たちの使用人たちが彼らから逃げ出してしまいました。王や総督や富豪たちが、神々の苦難よりも大きな苦難のために、使用人たちを追い払っているというのは当然ではないでしょうか?」 - 王は言いました。
「当然のことだ。だがなぜ神々だと言うのだ?
この民のほとんどは神を信じていない。しかも彼らの多くは偉大なる霊魂を信じていると聞いた!」
カピーリャは言いました。
「王よ、その通りです。だがそれは彼らの問題であって、カピーリャの問題ではありません」
王は言いました。
「息子よ、その通りだ。だが、教育についてはどう言うのだ?
法律は守らないといけないのではないか?」 - カピーリャは言いました。
「あなたは王ですか?それとも死者たちの下僕に過ぎないのでしょうか?
死者の法を執行する下僕に過ぎない者をカピーリャは父と呼ぶのですか?
もしそうならばカピーリャは法に背いたことになります。ですが聞いてください、学識のある者たちよ、古代の法の一つだけを守り、他の法には従わないのでしょうか?
古代の法とは、王の死とともにすべての法は破棄され、その後、王となった者は新たな法を自ら制定するというものです。
信仰者の教育を禁じる法は古代の法です。カピーリャを告発する者たちは、彼らの好きなようにすればよい。なぜなら、もし彼らが古代の法に固執するならば、我々に法などなく、そこに王も属国の王などありません。
もし彼らが古代の法を否定するならば、カピーリャはいかなる法にも背いていないことになります」 - ヨコヴラナは言いました。
「カピーリャよ、お前は無罪である。古代の法はお前が仕える王や、その王に仕える王たちを縛ることはできない。それゆえ、これらの件に関して王室評議会は新たな法を制定しよう。
カピーリャはいかなる法にも背いていないので、新たな法を制定しても今の国家秩序を妨げるものにはなるまい」 - カピーリャは王族であったため、その王家ではジェホヴィとその天使たちの力が強大でした。
- 属国の王と総督たちの演説は、以下の通りでした。
「信仰者たちに偉大なる学問を許すことは、ディアスと彼に仕える神と主神たちを倒すことに繋がる。なぜなら、偉大なる学問を修得することで信仰者たちは最終的に王室評議会の一員となるからである。それゆえ、どんな危険を冒しても、偉大なる学問は禁じなければならない。偉大なる学問は良き奴隷制に反するものである」と。 - ジェホヴィはカピーリャにこう仰せになりました。
「この法が可決されるとき、あなたはその場にいなさい。なぜなら、そうすることで我が聖天使たちが、すべての人々の幸福のために王室評議会を支配するだろうから」 - 王室評議会は100日間この問題について議論しましたが、天使たちが意見と信仰をめぐって分裂を引き起こしたため、結局、この法律は制定されませんでした。
このように彼らが多くの時間を無駄にした後、カピーリャは国王と評議会の前で諸国の統治に関する施策に関する発言を求めると、許可されました。
カピーリャの演説の主旨は次のとおりです。
【7章】
- この世に生まれた者は、この世に生まれたという『事実』により、この世界の住人となります。
全ての人間は裸で無力な状態でこの世に生まれ、無力であるがゆえに、彼らは私たちの助けを必要としています。そのため無力な者を助けるのは最高の美徳なのです。 - 賢者2人は1人の賢者よりも偉大です。それならば賢者の国というのはとてつもなく偉大ではありませんか?
しかし、誰もが何も知らないままこの世に生まれてきます。彼らに偉大な叡智を与えることは、国民を賢くし、それは国を偉大なものに仕立て上げます。
あらゆる場所に偉大な学問への道を開くこと、これこそが偉大な王国の礎となるのです。 - 土地を耕すことは、狩猟や漁業よりも偉大ではありませんか?
開墾する者に東西南北の土地を開放することは豊かさの基盤です。
貧しく無知な人々に、食べるもの、着るもの、住む場所が与えることに罪などほとんどなく、そこから得られる美徳はより大きなものとなります。
そして、そのような者こそ王国において大きな力となります。 - それなのに開墾可能な土地を開墾もしないまま所有しているのは、何も持たない人々、つまり生きる手段も生計を立てる手段もない人々に対して罪を犯しているのです。
本当にそのような人々は国家の敵なのです。 - 政府には二種類あります。一つは政府のための政府であり、もう一つは人民のための政府です。
後者の政府は人民に支持され、人々の意志で強化されます。
前者の政府は人民を犠牲にして強化しようとする政府で、そのような政府は死の苦しみの中にあります。 - 繁栄と平和において政府と国民が一体になることこそ最高の統治です。
政府が国民に土地や水、優れた学問や音楽を惜しみなく与えることこそ最も賢明で最善の統治なのです。 - すべての欲望の頂点である自由を愛さない人間などいるのでしょうか?
政府は自らを弱体化させたり国民の愛と協力を失ったりすることなく、この自由を奪うことなどできるのでしょうか?
すべての人々に自由を与え、それを維持していくことこそが、政府がなしうる最大の善行なのです。 - しかし自由とは何か、またその目的は何かと聞かれたら、誰がうまく表現できるのでしょうか?
隣人を怒らせたり、善良な生活を奪う自由を誰も持つべきではないのです。
裏付けもない振舞いを行ったり、他人の畑に入ってその収穫物を奪う自由も持つべきではありません。
では、どうして政府は国民の意志に反して財産を奪うことができるのでしょうか?
深い学識を受けた者は、裏付けもなく怒らせたり、他人のものを奪ったりすることはないのです。 - それでは、政府にとって民衆に優れた学問を授けること以上に偉大なことは何だと思いますか?
貧しい人々に『ここに土地があるから食料を蓄えなさい』と言うだけでは不十分です。
優れた学識を持つ者を遣わし、土地を耕し、建物を建て、心身ともに清くあるよう教える必要があります。
優れた学問は書物の中にのみあるのではありません。書物に対する優れた知識を持っていても、大食漢、放蕩者、偏屈者、暴君、低俗な権力者はいます。そのような人々に優れた学問はなく、そこにあるのは大きな虚栄心だけです。 - ここにある2つの王国があったとします。一方は偉大な哲学者と大学があるものの、民衆は困窮しています。もう一方には哲学者も大学もありませんが、民衆の懐は潤っています。
さて、後者は前者よりも学問の豊かな王国と言えます。
偉大な学問とはいかに賢く生きるかを知ること以外に、他に何があると言えますか?
少数の哲学者では国家は成り立たちません。賢く生き、老後まで幸福に暮らせるような知識を国民に与えることこそ、最良にして偉大な政府の統治なのです。 - 『誰それの王は偉大である、なぜならこの王は大学を設立したからだ』とはよく聞く言葉です。これは決して些事ではありません。しかし、何千もの貧しい家庭を生み出した王よりも偉大なのは、彼らに賢く生きる術を教えた王なのではありませんか?
- 自由を阻む法律を制定し、奴隷をより厳しく縛ることは国家を弱体化させ王国を弱体化させることです。ある男には10人の自由の身の召使がいましたが、そのうちの9人を鎖で縛り、働きが芳しくないと文句を言いました。
この者は愚か者です。 - 国家を犠牲にして私事を働くのは国家を奪うことであり、財産を蓄えることは貧者から掠めることです。
人はこの世からどれほどの宝を運び出せるのでしょうか?
それよりも生きているうちに与えた方がよいのです。なぜなら、明日私たちは死ぬからです。だからそれを稼げなかった者たちに残すのです。 - 最高の安らぎとは魂の安らぎであり、それは全てにおいて自らの光に従って最も賢明で最善のことを行なったという意識から生まれるものです。
結局のところ、地上での生活は始まりに過ぎず、私たちが子宮の中にいるかのように、死後に訪れる『魂の状態』を形作っていると言えるのではありませんか?
だからこそ、私たちは時の流れを機敏に捉え、互いに正義を行うことを心掛けるべきなのです。
【8章】
- 王と王室評議会はカピーリャの偉大な叡智を目の当たりにし、出席していた人々は誰もが言葉を失っていました。
しばらくして王は言いました。
「我らの祖先は血によってディアス信仰を確立したのではないのか?
信仰者たちを迫害して逃亡させるのか?
逃げ出した種族を集めて養い、彼らに襲い掛かり、噛みつかれるのか?
勇敢な武力でディアスを守るべきではないのか?」 - これに対しカピーリャは答えました。
「ディアスの戦いには、ヴィンデュの神で十分です。もし王がディアスの戦いに馳せ参じなければならないのであれば、ディアスは実に弱い神ということになります。
カピーリャはそのような弱い神を信じたり、そのために働いたりすることなど、絶対にしたくありません! - 王よ、あなたの御言葉は正しいです。我らの祖先は血によってディアス信仰を確立しました。
しかし、古代の学問にも現代の学問にも、ディアス信仰を血によって保つべきという法はどこにあるのでしょうか?
あなた自身も、祭壇で人の血を捧げることを禁じる法を定めていませんでしたか?
それならばこのようなことを続ける戦場は、本当に神聖な場所と言えるのでしょうか? - 人は復讐を愛します。そして、人は正義よりも復讐のために、他人に危害を加えたり滅ぼしたりすることを望むものです。
しかしこの世の全ては因果応報、復讐は復讐に、血は血に、戦争は戦争の報いを受けます。そして、同じ法則が、徳には徳を、愛には愛を、平和には平和を、善行には善行を生みます。
なぜなら、こうしたことに対して大きな役割を果たすのは、外的な肉体ではなく私たちの魂だからです。 - 王室評議会の一人が尋ねました。
「儀式や式典についてどう考えていますか?」
カピーリャは答えました。
「儀式や式典がなければ、国家、組織、そして国民の精神的な支柱は、衣服を脱ぎ捨て、この世に辟易しながら入水自殺するようなものです。軍隊の兵士には訓練、つまり規律が必要ですが、同じように崇拝者にも儀式や式典が必要です。それは創造主への畏敬の念を魂に刻み込む訓練なのです。 - しかし、どのような儀式や式典であるべきかは私が言うことではありません。なぜなら、これらは自由に選んで差支えのないものだからです」
- 王室評議会の一人が尋ねました。
「悪人の中にも大きな喜びと楽しみを持つ者がおり、徳高く賢明な者にも、大きな試練と苦難を受ける者がいます。
それではあなたの哲学は、正義と善行を実践する者にどのような褒美を与えるのでしょうか?」 - カピーリャは言いました。
「私が見たままをあなたが見て、私が聞いたものをあなたにも聞こえるのであれば、この問いに答えるのは容易なのですが、まずは古代の教えにも啓示されている偉大な真理をあなたたちに伝えます。
今生きている人生は真の人生ではなく、胎児の状態です。現世で喜びと楽しみを得た人の多くは、天国で赤子として目覚めます。一方、徳高く賢明ながら、この世で大きな苦しみを味わった人の多くは、天国では力と栄光を持って目覚めます。そのため現世で試練と努力を積み重ねた生涯は安らぎと楽しみの中で暮らすよりも望ましいのです。なぜなら、前者は魂の成長を目指すものであり、後者は魂の退化を引き起こすからです。しかしながら、厳しい試練は誰にとっても大きな不満があります」 - 国王と王室評議会は、カピーリャが他の誰よりも才知が優れているのを見て、国王は彼らにこう言いました。
「世界中を探しても、息子を裁くほどの知恵者はいない。これについてどう思うか?」
彼らはこう答えました。
「その通りです」
そこで国王は言いました。
「カピーリャよ、国王の命令を聞くがよい。
今回のことは世界のすべての王国におけるお前に対する法となる。お前は地上で最も偉大な王によって裁かれ、無罪放免となり、人間の支配を超えた存在であると宣言する。
お前はどこの国でも望むところへ行き、望むことを何でもしてよい。誰もお前を逮捕したり、禁じたりすることはできない。そしてお前が制定した法は、いかなる王もそれを覆すような法律を制定してはならぬものとする。
お前が息子でなければ、神の子とでも言うのであろう!」 - 王の勅令は記録院に記録され、その写しはヴィンデュ全土の従属都市と王国に送られました。
ヨコヴラナはカピーリャの演説の写しを作成させ、「法の礎」という名の下に王と評議会によって記録・署名されました。 - ジェホヴィはカピーリャにこう仰せになりました。
「私はこの地が何百年もの間、戦争を続けるのを看過してきたのは、彼らが今回のことを成し遂げるためです。
ご覧なさい、彼らは平和と自由の教義を躊躇うことなく受け入れています」 - カピーリャは法について尋ねるとジェホヴィはこう仰せになりました。
「これ以上悩まれるな。私の手は王と議会の上に翳しています。彼らはあなたの言ったことを法として承認し制定するでしょう。
さあ、息子よ、私に選ばれし者たちの中に進み出て、儀式と祭儀を新たに確立しなさい」
【9章】
- カピーリャがウェストゥチャウアウに着くと、ジェホヴィはこう仰せになりました。
「私があなたとラバ長の名を冠した12の植民地に使者を遣わし、そこに彼らを召集しなさい。あなたは彼らに同じように教えを授けてください」 - 植民地は、タダイス、ルウェラート、ハダラクス、トワカ、ドルムストダッタ、ギバラトゥ、ヨン、テミスタ、ヴラチャオ、エボタ、エウェン、スラヴァトであり、各植民地には大祭司(ラバ)1人と随伴する3人のラバが派遣されたため、合計でラバ長13人とラバ39人となりました。
カピーリャは、古代ザラツゥストラ人の慣習に従い、彼らに鍔のない赤い帽子を被らせました。 - ジェホヴィはカピーリャにこう仰せになりました。
「若くよく成長した20人の乙女と、子供を産んだ経産婦20人を選びなさい。そしてザラツゥストラ人の娘たちの慣例に倣い、耳当て付きの青い帽子を被らせなさい」 - カピーリャは彼らに帽子とエプロンを着せると、怠け者や観衆が不用意に近づかせないようにするため、ラバと女性たちを山頂へと連れて行きました。
山頂でカピーリャは言いました。
「あなたたちが幼かった頃、私はあなたたちのために祈りました。今、あなたたちは成人したのですから、今度は自分たちの言葉で創造主を崇拝しなさい。
それぞれ石を持って来て、そこに投げなさい。なぜならそれが私たちをジェホヴィに捧げる祭壇となるからです。
私がするように、あなたたちもそうしなさい」 - 彼らは全員石を取り、それを積み上げていき、まだその近くで控えていた時、カピーリャは両手を天に挙げてこう言いました。
「御父よ、私が何の力も持たずにいた頃、あなたは私を養ってくださいました。私の母と父とラバは私のために祈り、あなたについて教えてくださいました。
それゆえ、私は感謝と賛美をもってあなたを称えます。
今、私は力を得たので、あなたの前にまっすぐに立ち、あなたを賛美し、異教徒のように司祭に祈ってもらうのではなく、自分の言葉でお祈りを捧げます」 - あなたが私を男(女)にしてくださったので、私はあなたの御前で自分の存在を証明するべく努力します。
私がここに投げ入れたこの石をあなたに対する私の誓約とし、今から世俗への情熱と欲望を捨て去ると誓います。
両手をあなたに捧げたこの私を、御父なる神よ、どうか正しい道に御導きください!」 - この言葉を全員が唱え終えるとカピーリャは祭壇の周りを一周し、他の者たちもそれに続きました。それからカピーリャはこう言いました。
「全能の神ジェホヴィ(オーマズド)よ、栄光は永遠にあなたの下にあります!
あなたは山の頂にも谷にもおられます。あなたの円は世界の円です。
私はあなたと共に円の中へと歩いていきます。あなたは永遠に私の傍にいます。
あなたの光は私の魂の栄光でもあります。
山よ、谷よ、彼の御方を謳いましょう。月よ、星よ、謳いましょう。
彼の御方の御手があなたたちを支え、その息吹はこの世界のあらゆる物を動かすのです! - あなたの中に私は生きています。あなたによって私は造られました。
ああ、あなたの御業を辱めて、あなたの前で恥をかかないように。
あなたは臨在する御方であるため、私はあなたを畏れ、あなたから隠れられないがゆえに、私は極めて慎重に行動します」 - カピーリャは祭壇に座りこう言いました。
「ここから少し行って、戻って来なさい。ジェホヴィの祭壇に近づく方法を教えます」
人々は命じられたとおりにカピーリャの近くに寄ると、カピーリャは言いました。
「誰が来ますか?」 - さて、カピーリャを通してジェホヴィが子供たちに教えられた質問と答えをここに記します。
- 「ジェホヴィ(オーマズド)の崇拝者よ。ご覧なさい、敬虔さと善行、そして互いに助け合うことで知られる私の民の祭壇を」
- 「ジェホヴィとは誰ですか?」
- 「臨在せし御方です。
彼の御方はあらゆる場所と空間を埋め尽くしています。
彼の御方は私を創造し、彼の御方とその御業を崇拝するように私に教えてくださいました」 - 「なぜあなたは他の場所ではなくこの地に来るのですか?
もし彼の御方が臨在するのであれば、他の場所で礼拝してもよいのではありませんか?」 - 「彼の御方は、清く善良な子供たちと共に留まるよう、守護天使を遣わします。この天使たちは、私の魂が特定の場所と時間にジェホヴィに捧げられるのを望んでいます。
この聖天使たちを通して、彼の御方は知恵と愛をもって私に教えを授けてくださいます」 - 「天使はあなたの守護者にして支持者であるのに、なぜ天使を崇拝してはいけないのですか?」
- 「主神や神といった天使の名を呼ぶのではなく、偉大なる霊魂であるジェホヴィの御名を呼ぶことが私の宗教です。天使や主神、あるいは神の名を呼ぶ者は彼らから答えを得ますが、創造主の御名を呼ぶ者は、至高なる創造主から答えを得ることができます」
- 「ジェホヴィはどのようにあなたに答えられるでしょうか?
彼の御方には唇や舌、口があるのでしょうか?」 - 「ジェホヴィは万物の魂であり、魂に語りかけています。その声には多くの呼び名があり、異教徒や偶像崇拝者からは『良心』と呼ばれています」
- 「彼の御方を崇拝することで、あなたに何の得がありますか?」
- 「私は彼の御方で占められており、そのためこの讃美の気持ちを表現するべく、彼の御方と交わりたいと思うのです。この願望を持たない者は悪人です」
- 「彼の御方はあなたの祈りに答えてくださるでしょうか?
いつもと違うお祈りをしたら、他の人よりも多くあなたの所に来てくださるのでしょうか?」 - 「馬が飼い葉桶から水を飲んで育つように、正義の人間は永遠の泉であるジェホヴィから水を飲み、自分の祈りに応えながら魂は成長していくのです。しかし、この世の全てはジェホヴィからもたらされ、ジェホヴィの歩みはいつもと変わりません。なぜなら常在の御方であるジェホヴィは、人間の魂の祈りにいつもと変わらぬように応えてくださるからです」
- 「神はどんな祈りに答えてくださいますか?
また、答えられない祈りはどのようなものですか?」 - 「彼の御方は純粋と愛と知恵と徳を求める祈りに応えます。他人に善行を施す許可を得るための祈りであれば、彼の御方は必ず応えます。
彼の御方は利己的な祈りや、邪まな祈りに応えません。それゆえ、悪人は『神は祈りに応えない』と言うのです」 - カピーリャは言いました。
「愛する者たちよ、あなたたちはジェホヴィの祭壇に近づくとき、私が教えた賢い言葉を唱えなさい。ただし、偶像崇拝者のように大声で唱えるのではなく、ささやくか低い声で唱えなさい」 - 「ジェホヴィに選ばれし者たちの礼拝とはどのようなものでしょうか?
また異教徒の礼拝とどこが違うのでしょうか?」 - 「ジェホヴィに選ばれし者たちは御父の前において平等であり、誰もが現世でも来世でも彼の御方の復活を果たすことでしょう。そのため彼らは直系の崇拝者であり、自分たちの祈りと歌でジェホヴィを崇拝するように教えられています。
異教徒には人々のために礼拝する司祭がおり、人々はその儀式のために彼らに金銭を献上します。異教徒の司祭は死者の霊魂を崇拝し、この霊魂は自分のことを主神、神、救世主と呼びます。選ばれし子らは戦争をせず、暴力を振るわれても恨むことなく、善によって悪に応え、慈善と愛を実践します。
神や主神、ディアス、その他すべての偶像を崇拝する異教徒は戦争を行い、兵士の軍隊を維持し、大虐殺の技術を教え込まれます。彼らは人間の記念碑を建てたり、さもなければジェホヴィを冒涜します。
彼らは、ジェホヴィは空虚であり、自らを巨人ディアスとなり、万物を創造した後、その御業を律する一定の法則を残して玉座に退かれたと教えています」 - 「生活におけるザラツゥストラの法とは何のことでしょうか?」
- 「ジェホヴィが生命の息吹を吹き込んだいかなる肉も食べないこと。
毎日一度沐浴すること。
朝日とともに起き、すべてのことにおいて節度を保つことです」 - 「ザラツゥストラ人の父と母とは何のことでしょうか?」
- 「一夫一妻とし、特に妊娠期間中は母胎の神聖性を保つことです」
- 「ザラツゥストラ人の補填とはどのようなものでしょうか?」
- 「万物はジェホヴィの所有物であり、人間はジェホヴィの下僕に過ぎません。大地と全労働の果実はラバの家に送り込まれ、ラバによって困窮者に届けられます」
- 「ザラツゥストラ人はなぜ迫害され、滅ぼされたのですか?」
- 「彼らは暴力で抵抗せず、異教徒の偶像を崇拝しなかったからです」
- 「彼らには自分たちを救う術はなかったのでしょうか?」
- 「ジェホヴィは彼らに特定の印と合言葉を与えました。それによって彼らは互いを知り、苦難の時には互いに助け合って逃げ延びるようにしたのです」
- 「どうしてジェホヴィは選ばれし民を守らなかったのですか?」
- 「割礼の法により信仰者たちはジェホヴィ(オーマズド)の知識を守るために、信仰者たち同士でしか結婚しませんでした。こうして神聖性を守り、逆に世俗のものや偶像崇拝を追い求めた者たちとの縁を断ち切りました。しかしこうした状況下にあっても、ジェホヴィは異教徒の中にスイスの継承者を育むことで、信仰者たちの子孫に利益をもたらしたのでした」
- カピーリャは言いました。
「あなたたちの子供たちにこれらのことを幼少の頃から教え、これをその子供たちにも教えていくように言い含めなさい」
【10章】
- ジェホヴィはカピーリャにこう仰せになりました。
「あなたは私の選ばれし民がこの儀式と式典と教義を学ぶまで彼らと共に留まりなさい。その後、私が導く別の地へ行き、そこでも同じことを同じ方法で教えなさい」
カピーリャは偉大なる霊魂の仰せのままにこれらすべてのことを行いました。 - カピーリャが説教を始めてから5年目のこと、ジェホヴィの御声がカピーリャのもとに届き、こう仰せになられました。
「ご覧なさい、あなたの養父の死期が迫っています。
あなたは彼のもとへ行き、彼が亡くなる前に保護の法を制定させなさい。そして彼の死後、あなたが即位した暁には、その法を批准し、その後退位しなさい」 - そこでカピーリャは、熱病にかかっていたヨコヴラナ王のもとに戻りました。
王は言いました。
「ああ、息子よ、息子よ!
お前を見る前に死ぬのではないかと思っていました。
あと数日で、私の命は尽きるだろう。お前が王となるのだ。
よく考えるのだ、まだ私が生きている間にやってほしいことは何だ?」 - カピーリャは言いました。
「王室評議会を召集し、ブラフマー人、ザラツゥストラ人(信仰者)が所有し、耕作し、今なお居住している土地を、永遠に彼らの所有物とすることを保証する法律を制定してください」 - 王はこれに同意し、法律が制定されました。これは世界中のどの王であっても信仰者たちに与えた土地は彼ら自身のものであるとする最初の法律でした。
そしてこの法律は、信仰者たちが独自の方法で礼拝を行い、またいかなる軍隊にも兵士として徴兵されないことを規定したものでした。 - 法が制定された後、ヨコヴラナはカピーリャに言いました。
「どうしてお前は即位するのを待たずにお前が望む法を制定したのだ?そうすれば、生きている間に廃止されなかったものを。
私は間もなく死ぬ。そうなったらこの法も私と共に失効してしまうのに」 - カピーリャは答えました。
「即位の日に古代の法に従い、私はあなたの法を拘束力の法として批准します。もし私が即位するまで待っていたら、いかなる個人も耕作した土地以外を所有せず、居住する共同体からの寄進によってのみ、かつ生涯のみ所有し、その後は共同体に寄進するという私の教義に縛られていました」 - ヨコヴラナは言いました。
「息子よ、お前は賢い奴だ!
お前が理解できないことなど、いったい何があるというのだろうか?」
王はしばらく休んだ後、こう言いました。
「カピーリャよ、お前は何度も天使を見たと言っていたが、彼らは一体誰なのだ?」 - カピーリャは言いました。
「かつてこの地球に住んでいた者たちです。彼らの中にはかつて他の星に住んでいた者もいました」 - 王は言いました。
「お前がそう言うならば、きっとそうなのだろう。儂は、彼らがこの空間で暮らす者とは別の存在で、ここで暮らしたことがないのではないかと時々思っていた。
カピーリャよ、お前はすべての霊魂は不滅だと言うのか?」 - カピーリャは言いました。
「彼らはそのように生まれました。しかし、すべての人間が永遠の命を受け継ぐわけではありません。肉体が滅びるように、人間の霊魂も消滅します。永遠の生命に対する信仰を得た者たちの果実は安全ですが、永遠の生命に対する信仰や創造主への信仰を失った者たちに対して、私は彼らとその子孫を悲しく思います」 - 王は言いました。
「どうして神託は嘘をつくのだ?
神託は天使の言葉だろうに」 - カピーリャは言いました。
「もし人間が自分で考え吟味しないなら、創造主はその者が嘘を真に受けるのを許すでしょう。天使と人間を信じないようになった者は賢者であり、この時、その者は真理の存在である創造主に立ち返ります。
これが知恵の始まりとなります。
この世には現世で善行をしようと思わない、魂の矮小化した善良な人間がおり、そういった人々を考え直させるために『蛇の牙』を必要とするのです」 - 王は言いました。
「儂はこれまで多くの人間を殺してきた。この儂が罪を犯したと言うのか?」
カピーリャは言いました。
「創造主に尋ねてみてください。私はあなたの裁判官ではありませんし、他の誰の裁判官でもありません」
王は尋ねました。
「もし人間が殺されてもその霊魂が生きているならば、殺しても大した意味はない。この世でその者の肉体を葬り去ったところで、霊魂は戻ってきて報復できる。そうではないか?」
カピーリャは言いました。
「その通りです、王よ」 - 王はしばらく考えてからこう尋ねました。
「息子よ、儂らが殺した者たちの霊魂が天界で儂らを捕らえて傷めつけてくることはできるのか?」
カピーリャは言いました。
「その通りです、王よ」
王は言いました。
「奴らは先に天界にいるから、戦いでは有利になろう。もし奴らが徒党を組んで、そこに指揮官(悪魔)がいれば多大な被害を蒙るだろう。
カピーリャよ、お前の哲学にとって重大な助言をしよう。それは、死が近づくと、儂らはこれまでの人生で何をしてきたかを振り返り、魂が震え始めるのだ。
時々、ディアスに言おうと思っていたことがある。
『今からあなたにお願いをする!』
だが彼が受け入れてくれるような物を何も持ち合わせていないことに気付くのだ。
儂らは健康と繁栄においてはなんと強く、そして逆境と死においてはなんと弱いのだろう!
祈れば天界での儂の立場は良くなるのだろうか?」 - カピーリャは言いました。
「私は天界の主ではありません。もしそうであったならば、私のあなたへの愛が、あなたをあらゆる闇から守るはずです」
王は言いました。
「あの司祭は、金を払えばディアスにとりなしをし、天界での高い地位を与えてくれると言っていた。儂が思うに、あやつは嘘をついている、なぜなら、ディアスはあやつのことを何一つ支配していないからだ。
わずかな知恵しか持たぬ儂でも、この2つのことが分かった。王の給仕人とディアスの給仕人は、大層な口調で言うが、約束をほとんど守らない。
息子よ、この2人には気をつけるがよい。 - 儂が優れているのは、知恵よりもむしろこの思慮深さにあると自負している。この世のあらゆる戦争と悪の根底には、奴らがいる。奴らは神々さえも欺くことができると聞いている。
カピーリャよ、お前が王になった暁には、この件にお前の知恵を注ぎ、奴らに容赦してはならない。
奴らはこの世界の呪いである。儂は奴らをなぜもっと多く殺さなかったのかと悔いている。
このことでは、儂の良心が苛むのだ」 - カピーリャは言いました。
「良心は人間の一部に過ぎないのですから、誤ることもあるのではありませんか?
良心は知恵を得るためにそれとは別の何かに依存しているのだと思いませんか?
結局のところ、その時、最適で最善と思えることを行ったならば、法を実行したということになるのではありませんか?」 - 王は言いました。
「そう思う。良心はその過誤や正義が受けた教育に左右される。しかし、良心とは心の病ではないだろうか?
何かをしなかったことを後悔する、何かをしたことを後悔する、これらは取り返しのつかない不満となる。こうしたことを前もって言える者や、いまだに過誤なく生きられる者は本当に賢い。
この世に生まれた人間は、せいぜい短い間しか生きられないことを儂は知った。若い時は死ぬことを嫌がるものだが、年老いた身ではこれ以上生きたくはない。
明らかに、人間を創造した神は、儂らが自分のことを支配する以上に、儂らを支配しておる」 - カピーリャは言いました。
「その通りです。人間はせいぜい、自分のことを半分程度しか支配できないのです」
ヨコヴラナは言葉を遮ってこう言いました。
「息子よ、私にはもう時間がないので、ここで少し話を遮らせてもらう。
死にゆく者にとって最大の慰めとは何かを尋ねたい」 - カピーリャは言いました。
「死にゆく者にとって大きな慰めが2つあります。
1つは跡継ぎがいないと知ることと、もう1つは高貴な息子を残すことです」
王は言いました。
「息子よ、お前は賢い。儂が神託所の司祭に同じことを聞いたところ、奴はこう言った。
『死にゆく者の霊魂が天界の楽園に入ると信じることだ』
そこで儂はこう言った。
『正直者はそのような信仰を持つことはできない。なぜなら、そのような運命は、罪によって天界を欺くことになるからだ。もし儂が創造主ならば、世界の半分の首をへし折っているだろう』
それでも、霊魂に関するそのような物語は愚かな死にゆく者を喜ばせるだろう。
息子よ、お前だけが、死にゆく者にとっての最大の慰めを語ってくれた。 - 儂の奴隷たちは王になるという信念を持っているのかもしれぬが、それが愚かだったと気付くことだろう。
人間は自分の霊魂が天界の楽園に入ると信じているのかもしれぬが、その者が目覚めたら、その誤りに気づくだろう。
保証のない信仰は愚かなものだ」 - カピーリャは言いました。
「自分の知識について1つでも知ろうとする者は、あらゆる叡智の中でも最も偉大なことです。
あなたのように、死の直前に哲学者となるのは偉大な魂であることの証です。
これに到達した者は少ないのです」 - 王は言いました。
「あなたの前では、私は知恵に欠ける。
お前は謎めいた存在だ。お前の母は、長い闘病の苦しみから解放されるために医者に殺されたが、賢くはなかった。儂については偉大なだけで、賢くはない。
儂は人々に畏敬の念を抱かせることはできる。だがお前は愛の秘訣を知っており、それは偉大なことだ。
カピーリャよ、お前の名は、儂の名が忘れ去られても長く尊ばれるだろう。しかし、儂は世界で最も偉大な王なのだ。
ああ、儂の最も素晴らしい息子よ!」 - カピーリャは言いました。
「王よ、あなたは私に偉大な学識と王の立場で父の気遣いを与えてくださったのですから、私があなたの名誉にどうしてならないのでしょうか?
あなたが天界で私を見てくださるとき、私への希望を失わないでください」 - 王は言いました。
「天使が定命の人間の同胞をあまり近くで見るのは賢明ではないようだ。もしそうでなければ、彼らは決して上天に昇ることはできないだろう。
予言者たちは我々の周囲に天国と天使が常に存在すると言っている。儂が思うにそれは嘘である。嘘でないなら、彼らにとってそこは天国というより地獄になろう」 - 王はしばらく休んだ後、こう言いました。
「お前に何を言うべきかずっと考えていた。もうすぐ血が止まりそうだからだ。
人間などせいぜい神々が弄ぶ玉に過ぎないのだと、私はこれまで以上に思うようになった。誰が知るだろうか、今ごろ彼らは私を地獄のようなゲームに利用できたと、内心でほくそ笑んでいるのかもしれぬ!
ああ、人間に物事を見極める立場があればよいのに!
ああ、人間に確固たる尺度と基準があればよいのに!
死者の霊魂や神託所の神々を調べてみたが、どれも嘘、嘘、嘘だった!」 - カピーリャは言いました。
「私たちの魂の中にある小さな火花というのは、まさに始まったばかりであり、もし正しく育てることができれば、その輝きは日々明るく澄み渡るはずです。というのも、この世の全てのものは育てられることで成長していくからだとは思いませんか?」 - 王は言いました。
「正しく生きるのだ!
息子よ、これが重要なことだ。そのために世界は人の血で塗りつぶされてきたのだ。
正しく!
この言葉の意味を本当に誰が知っているというのだ?
ああ、私の敵は何が間違っていて、そして私は何が正しいのかをはっきりと見抜いていたら良かったものを!」 - 彼は再びしばらく休んでからこう言いました。
「死の間際、儂に何が待ち受けているのか垣間見れると思っていたが、死といえども静かで暗く、人を欺くものだ。儂の身体は全体的に弱まっている。これは儂が良き血筋に生まれたことを物語っている。これでお前が息子でなかったら、儂はもっと喜べた。もしそうであれば、儂はここで自分の血筋が絶えたと知り、上天に行けたであろうから。だが今は、儂はお前を想って長い間地上に住まわなければならぬかもしれない。
お前の知恵と愛があったとしても、今やお前が他の誰かの息子であった方がよかったと思っている。そうであれば儂は楽に死ねるし、お前を残して死んで行くことにそれほど未練もなかっただろう。
儂には他に親族はいないのだ」 - カピーリャは言いました。
「ああ、王よ!
あなたは私の心を二つに引き裂きました!
私は本当はあなたの息子ではないのです!
あなたの妻が暗い部屋に横たわっていた時、天使たちが私を盗み、その場所に連れて来たのです。
私を育ててくれたのが母であり、その夫が私の父です。
私はザラツゥストラ人の血を引く信仰者のバラモン教徒なのです!」 - 王は言いました。
「本当か?そんなはずはない!乳母を呼んでこい!」
カピーリャは乳母を呼び入れると、王はこう言いました。
「お前を処刑する前に、聞きたい。この者はお前の息子で、お前の夫がその父なのか?」
彼女はこう答えました。
「私はジェホヴィに誓いを立てており、あなたにお答えできません。ですから、私に判決を下してください。
私は長年、重荷を背負って生きてきました」
見てください!
この時、天界の天使が現れたのです! - ジェホヴィの天使が王の前に現れると、全員がそちらに目をやると天使はこう言いました。
「王よ、カピーリャはお前の息子ではない!だが、そこに何の罪も犯されていない!」
そう言うと天使は姿を消しました。 - 王は言いました。
「もしこれが神々の作った偽物でなければ、その天使は儂の妻だったのだ。
ああ、カピーリャ!
儂らの愛はここで終わってしまうのか?
儂はこの大地からすぐにも消えてしまいそうだ!」
カピーリャは言いました。
「私たちの愛は決して消えることはありません!
ザラツゥストラ人のためにあなたが行った善行に対して、偉大なる霊魂はあなたの偉大な魂にふさわしい住まいを与えてくださいます。もしあなたに過失があったとしても、あなたはそれを十分に補っています」 - 王はカピーリャと乳母に来るように合図し、弱々しく言いました。
「神々の笑い声が聞こえるようだ!
この茶番を続けるように!
儂の兄の長男は何も知らずにいる!
王国など茶番に過ぎぬ。
カピーリャよ、私を抱き上げてくれ。お前の愛らしい顔を見た後に、目の保養に空だけを見ていたい」 - カピーリャが抱き上げると、王は乳母にこう言いました。
「お前に祝福あれ!
良い子を産んでくれた!
ああ、アデン(天)、アデンよ!
この世の全ては存在する!
そして全ては何もない!」 - そして息絶え、王は死にしました。
【11章】
- ジェホヴィはカピーリャにこう仰せになりました。
「私の選ばれし民に王はいません。ジェホヴィであるこの私こそが王なのです。
ザラツゥストラを通してラバとラバ長を与えたように、あなたを通して与えました。
彼らの家族は私の家族でもあるのです。 - 私は人間の王と王国を不義なる者に与えます。なぜなら、彼らは私を認識できないからです。
私はより高次の法ですが、彼らが認識できるのは、より低次の法だからです。 - 王国があなたに押し付けられました。あなたはどうしたいですか?」
カピーリャは言いました。
「ジェホヴィよ、私はどうすればよいですか?」
ジェホヴィはこうお答えになりました。
「本国と各州で宣言しなさい。その後、法律を批准したら退位しなさい。そうすれば王国は他の者の手に渡るでしょう」 - カピーリャは即位を宣言し、カピーリャ王として知られるようになりましたが、彼は退位したためヘロエペソスが王となったもののカピーリャに恩義があったため、カピーリャは王ではなかったものの、ヘロエペソスよりも強力な信仰者たちの保護者として振る舞うことができ、カピーリャの同意なしに信仰者たちに影響を与える法律を制定することはできませんでした。
- ジェホヴィはこう仰せになりました。
「私の民は独立した民となります。彼らは私の法の下で生きるものとします。なぜなら、彼らの王はこの私だからです」 - カピーリャがザラツゥストラ人(信仰者)の復興に着手してから、彼らの保護領を設立するまでの期間は、全体で5年でした。その後、カピーリャは東西南北を旅し、散り散りになっていた民を集め、植民地を建設し、儀式や式典だけでなく、失われつつあった土地の耕作技術や、麻、羊毛、絹を使った織物作りの技術も教えました。また学校を設立し、民のために教師を派遣しました。
- カピーリャは言いました。
「第1の美徳は、すべてのものの中にジェホヴィを見出し、愛し、讃えることを学ぶことです。 - 第2の美徳は清潔です。老若を問わず、すべての民は一日に一度沐浴しなければなりません。
- 第3の美徳は、魚や肉、その他の汚れたものを食べないことです。内側に汚れを入れておいて、外側を洗ったところで何の益があるでしょうか?
- 第4の美徳は勤勉です。御父は人間に羽毛も髪も羊毛も与えなかったのですから、人は衣服を着なければならず、これこそが神の戒めの証しとなります。衣服を着ること、そして食料を確保することはすべての人々に義務付けられた勤勉です。
これらに加えて、困っている人のために働くこと、彼らに入浴と食事を与え、住居と衣服を与えることは、御父があなたの魂の価値を御父に証明する自発的な勤勉となります。
勤勉なくして、いかなる者も善行者にはなれません」 - ラバの一人がカピーリャに勤勉とは何かと尋ねました。これに対しカピーリャはこう答えました。
「有益な結果を得るために絶えず活動し続けることです。日の出前に起き、日の出までに沐浴し、宗教儀式を執り行い、その後は日没まで厳しくではなく楽しく働くこと、これこそが勤勉となります。
勤勉な人はサタンの囁きに浸る暇などほとんどないのです。 - 第5の美徳も同じようなもので、労働です。
あなたたちの中に富める者は一人もいません。しかし、皆が労働するのです。あなた方が適切な労働によって肉体を強靭に鍛え上げるように、労働という行為は天界における住まいのために、人の精神を有益な成長へと導きます。
私はあなたたちに偉大な真理をお伝えします。それは、実体界の肉体を使って働かない怠け者や富裕者は、無力な幼子として天界に生まれてしまうということです。 - 第6の美徳は他のすべての美徳よりも偉大なものとなりますが、それは禁欲です。
禁欲がなければ、地上でも天界でも、誰も魂の平安を得ることはできません。
自分の利益のためではなく、まったくの赤の他人であったとしても、その人の利益になるかどうかをよく考えなさい。
第6の美徳がなければ、家族は平和に暮らすことはできません。 - 第7の美徳は愛です。
あなたが語るとき、その言葉が愛を育むものかどうかを考えなさい。もしそうでないなら、語ってはいけません。そうすれば、生涯敵はいなくなるでしょう。
しかし、もしあなたが誰かに対して正義心から良いことを言えるなら、黙ってはいけません。
これが多くの愛を得る秘訣です。 - 第8の美徳は思慮深さ、特に言葉に対する思慮深さになります。
よく考えてから話すことです。もしすべての人がこれを行えば、あなたは隣人の知恵に驚くことでしょう。
思慮深さとは調整器のようなもので、それがなければ、人はもつれた糸のようになってしまいます。 - 第9の美徳は、体制と秩序です。
弱い人間でも体制と秩序があれば、それを持たない強い人間よりも多くのことを成し遂げられます。 - 第10の美徳は遵守です。
遵守する人は、儀式や式典など、古来より善であると証明されてきたものを受け入れることができます。遵守しない人は、最古の慣習にまで遡って、現世における自らの利益を放棄することになります。 - 第11の美徳は規律です。これは個人と家族のためのものであり、規律を持たない者は、乗り手のいない競走馬のようなものです。
起床時間、食事の時間、祈りの時間、踊りの時間、労働の時間。これらは誰にとっても善いものですが、互いに一致団結して規律を守る家族は『規律者』となります。 - 第12の美徳は似たようなもので従順です。
すべての善良で偉大な人は従順です。規律に従わないことを誇る者は愚かで狂人です。
従順な弱者は、反抗心の強い人よりも偉大で優れています。なぜなら、前者は家族の調和を促進し、後者はそれを破壊するからです。 - これらの12の美徳について考えてみてください。それらは全世界にとって十分な法です。
人は書物や法をいくら増やしても、これらの12の美徳を採用しなければ、家族も、植民地も、国家も幸福にはなれないのです」
【12章】
- カピーリャは(ジェホヴィの霊感を受けて)こう言いました。
「あなたの一生が人々の手本となるように。
1人の善行は、たとえ人口の少ない土地であっても1000人の説教者よりも価値があるのです。 - 騒ぎ立てる舌は瞬く間に改宗者を生み出しますが、血を変えることはできません。彼らは儀式や式典を行いますが、その行いは12の美徳にかなっていません。
- 平和に暮らし、互いに愛し合い、善行を交わす20人の男女の共同体(家族)は、この世のあらゆる書物よりも多くの知恵を顕現した姿なのです。
- 思いやりを学んだ人は、猫や犬を蹴る哲学者よりも博識です。偉大な学問は書物の中にだけあるのではありません。
ジェホヴィと調和することを学んだ者は、偉大な学問を持った者なのです。 - 偶像崇拝者の教義は戦争です。しかし、私の息子や娘たちは平和を実践し、死の武器を持ついかなる者にも抵抗しないものです」
こうジェホヴィは仰せになりました。 - 「私の説法は言葉だけではなく、私の戒めを実践する私の民の心の中にあるのです。
- スドガの信者たちはこう言っていたはずです。
『見よ、スドガこそ我らの平和の子羊なり!』
彼らは戦士の民となり、最も偉大な殺戮者を称える記念碑を建てました。 - 私の民よ、言葉を少なくしなさい。自分の美徳については口にせず、ただ実行あるのみ、それが私の声なのです!」
- カピーリャは言いました。
「一人の人間の性格のあるべき姿、家族(共同体)のあるべき姿、国家のあるべき姿ー。
心の調和というのは人にとって最大の祝福であり、家族の調和も、国家の調和も同じなのです。 - 家族のために自分を犠牲にする者は、家族の中で最も偉大で最も優れた者です。
自分の欲望を優先したり、自分の意見や主義を他人に押し付けたりする者は、家族の中で最悪最低の者です。 - 天界におられる私の御父は、あなたたちの御父でもあります。
すべての男女は私の兄弟姉妹です。
この兄弟愛を実現するため自らの魂を高めることは、偉大な美徳です。彼の御方がどのような名前を持っておられようとも、創造主はただ一人であり、すべての民は彼の御方の子供なのです。
あなたたちがどのような名前で彼の御方を呼ぼうとも、私はあなたたちと言い争うつもりはありません。私は彼の御方の愛を受けた子供です。それを私は愛によって証明します。
戦争によってこれを証明できる者など誰一人いません。 - 真の人生は死によって始まります。
魂がしっかり錨(肉体)を降ろしている間に、しっかりと自己を形作りなさい。この世で最高で最善の人生は、天界でも最高で最善の人生をもたらします。
そのためにはあなたたちを創造した御父を愛することです。
徳行のある幸福とは、これより少しだけ大きいぐらいです。淫欲による幸福は、あなたの創造主が憎むところです。 - 泳ぎを習う者は、泳ぎ方を見つけるまで浮き輪をつけて泳ぎ続けた方がよいのです。創造主があなたたちに実体界の肉体を与えたように。
『不可視の世界』に急ぎ入ろうとするべきではありません。
肉と骨を捨てる前に『復活』への泳ぎ方を学んでいるか確かめなさい。 - 宗教とは、ラバを基調とする共同体の音楽(調和)の学び舎です。
音楽には2種類あります。それは音と同化です。ただの楽器は音を奏でますが、同化は、共同体と協調性を取って行動するという実体的な問題に帰結します。 - 善行!
この言葉の意味を誰が知るというのでしょうか?
ヨコヴラナ王は、人の善行を殺した悪人の数で判断しました。お恵みをこぼすことが人の怠惰を助長するというなら、それは善行ではありません。
説法、祈り、歌は善行ではありません。それらは魅惑的な香りを放つ花です。しかし悪魔はこれらを善行だと説きます。それでもすべての果実は開花から始まります。最も博学な人、最も敬虔な人、そして偉大な哲学者でさえ、「善行」の言葉の意味が何たるかを説明できません。しかし生後1日目の赤子を持つ母親ならばその言葉を説明できます。種を蒔き、収穫し、その半分を恵まれない人々に与えた農夫もまたその言葉を説明できます。 - 大地から食料や衣服を収穫し、自分にとって必要数分を超えた場合、それを他人に与える場合にのみ善行となります。
困窮している場合を除き、他人の稼ぎで生活することは悪です。
説法しながら他人のために実益をもたらさない者は吸血鬼です。その者は自分の言葉がジェホヴィの関心を引くものだと信じ込ませ、説法と意見を無知な者に売り込んでいるのです。 - 説法する者は貧しい人々と暮らし、自分の手で支え、教え、助けなければなりません。言葉だけを与え、労働を伴わない者は地獄の下僕です。甘い言葉を探し求め、声をひそめ、安楽と豊かさの中で暮らし、深刻そうに長い顔をさらに長く伸ばしている。その者は偽善者であり、創造主に対する冒涜者なのです。
- 愛と喜び、そして気さくな心をもってジェホヴィの前に正しく立ちなさい。そうすることであなたの説法は喜びの光の証となり、あなたの存在は、疲れ果て落胆する人々に、あなたたちは創造主の息子であると確信させ、正義と支援の手を差し伸べることで彼の御方の栄光を心から讃えることになるからです。
- カピーリャの格言集(ここでは4分の1は言及されていませんが)に加え、彼はザラツゥストラの戒律とヴィヴァンホの歌も復活させました。2,000年間、ジェホヴィの子供たちがこれほど世界の表舞台に立ったことはありませんでした。
そしてブラフマーの時代よりもさらに大きな平和と豊かさがヴィンデュの地に訪れました。 - カピーリャの物語はこれで終わりです。彼は自分が語ったその言葉でさえも知らず知らずのうちに天使たちを通して全てがジェホヴィに導かれていました。
創造主と共に歩むとは、まさにこういうことなのです。
さて、ヴィンデュでこのようなことが起こっていた頃、創造主はエギュプトの地でも天使たちを通して、あなたも耳にしたことがあるモーセと共に働いておいででした。
【13章】
エギュプトのモーセの歴史
- 神は上天のルーイたちにこう命じられました。
「地球のエギュプトの地に降臨し、私の声を代弁できる息子を育てなさい」 - 天使たちは命じられるままに降臨し、エギュプトとその周辺の地を探索し、人々の肉体と霊魂を調べました。
それから彼らは神にこう呼びかけました。
「エギュプトの地は闇の霊魂(ドルジャ)に覆われ、定命の人間はそれを見えるようになり、天使と人間が一つになって暮らしています」 - 神は言いました。
「あなたたちは選ばれし民の下へと行き、嘘と真実の見分けがつく1人の男性を見出しなさい。私の声を届けるため、その者にイヒン人の女性を与えるべく導きなさい」 - エラカスの地で、ルーイたちはフォネシア人でスイスの力を持つバクサという男を見つけ、こう言いました。
「どうしてあなたはこの世界で孤独なのでしょうか?」
バクサは言いました。
「ああ、私は今まで神を目の当たりにしたことがありませんでした。私の耳は神を聞いたことがない。私は世捨て人として神を探しているのです」 - ルーイたちはバクサがどういった人物であるかを見抜くと、イヒン人の女性を娶るように導き、やがてハスマットという息子を儲けました。
- ルーイたちはハスマットが成人するまで彼を守護し、ハスマットにも天使の声を聞き分ける力があるか試すように話しかけました。
- ルーイたちはハスマットに対してもイヒン人の女性を娶るように導きました。彼女はサイカバルという息子を儲け、ハスマットと同様にルーイたちに守護されました。
また天使たちはサイカバルに、ゼドの直系(家系)のテラッタと結婚するように導きました。テラッタはエダマスという娘を出産しました。エダマスは未婚のままイヒン人の父との間に息子を儲け、彼女はその子を「一つに結ばれている」という意のレビと名付けました。(というのも、レビの右足のつま先は離れておらず、右手の指も離れていなかったからでした)
レビは2人の巨漢よりも大きい大男に成長しました。 - レビはイヒン人の血統の中で第4位の出自であったため、選ばれし民の後裔とは認められませんでした。そのため、レビは『レビ家』と呼ばれる新たな系譜となりました。
- レビは信仰者の妻を持つ資格がなかったため、ルーイに導かれるままにイヒン人のメティッサを妻に迎えました。
メティッサはコハトという息子を産み、コハトは成人すると信仰者の第三位にあたるアヴァの教団に受け入れられ、そこで割礼を受け、後にエギュプトの信仰者に与えられる『イスラエル』と呼ばれるようになりました。 - コハトは敬虔なジェホヴィ崇拝者であるミラーを妻に迎えました。ミラーはアムラムという息子を出産し、アムラムはコハトの義妹ヨケベドを妻に迎え、ヨケベドは1人の息子を出産しました。その子がモーセでした。
- モーセが生まれる前に、ルーイたちはモーセが御父の声を聞けるようになることを予感していました。
ルーイたちは神にこう言いました。
「ご覧ください、この次の世代であなたが望む息子が生まれます」
【14章】
- 当時エジプトには記録所があり、国事、王、総督の出来事が記録されていました。また、人々の出生、結婚、死亡も記録されていました。
- 学者たちの言語はフォニシア語とパーシー語でしたが、現地人の言語はエギュプト語、アラビア語、ユースティア語、セミス語でした。学者たちの暦では1年は太陽2つ分でしたが、ユースティア族の暦では1年はわずか6か月でした。従ってエギュプトの地では、学者たちの1年はユースティア人とセミス人にとっては2年でした。
- 神は言いました。
「私の民は、住む場所と人種に応じて時を数えなさい」
人々はそのようにしました。そのためイスラエルの諸部族でさえも長暦と短暦という2つの暦を持つことになりました。 - 預言には、天空あるいは天界の時間を表す『頌歌(オード)』と呼ばれる別の暦もありました。1頌歌は11年の長さに相当し、3頌歌で1つの呪文となり、1世代を表し、11の呪文は1つの岩謡に相当します。
偉大なピラミッドの建設者であり学者でもあったトースマはこう言いました。
「直径は円の大きさに直結し、円は直径に関係するように、地球の季節にも法則があります。というのも暑さや寒さ、干ばつや雨など、いかなることがあれ、ある11年の合計は別の11年の合計と等しくなるのです。
1呪文は次の11の呪文と等しくなります。
1周期は各11の周期と一致します。これらの法則を地球に適用すれば、人が排水や灌漑によって自然の法則を破っていない限り、干ばつ、飢饉、疫病について正しく予言することができるでしょう。
もし人間が地球の光と闇を見つけようとするなら、これらの規則で十分なのです。なぜなら、一つの岩謡が363年であるように一年も363日であり、さらに太陽が南北の線上に止まる2と1/4日があるからです。 - これらの3つの暦の結果、エジプトの記録は混乱しました。人間の預言と系譜は価値を失いました。
また長さの測り方についても、あるものは3ずつ、あるものは10ずつ、あるものは12ずつと、言語の多さのために混乱しました。
エジプト人の偉大な学識や、記録所に保管する際にあらゆる配慮があったにも関わらず、彼ら自身が全てにおいて混乱を引き起こした最大の要因となったのでした。 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「2,000年間、私は私の敵に対して手綱を緩めてきました。彼らは世界で最も長い王朝を築いてきましたが、繁栄の最中にあっても彼らは酔っぱらいのように堕落し、自分たちの言語さえも泥沼の中で失われた真珠のようになってしまいました」 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「エギュプト王たちが私の民を追放し、偉大なる学問を得る権利を拒んだため、ご覧なさい、私の民も分裂してしまいました。実際に儀式や印、合言葉を除いて、ある部族が言語を持てば別の部族は別の言語を持つというように、もはや互いに理解し合うことができなくなったのです。 - そうです、王たちは私の民を無知のままにしておけば永遠に檻に閉じ込めておけることに気付いたのです。しかし私は私の選ばれし民の中からモーセを指導者に仕立てて王宮に遣わすでしょう。そうしたら王は彼に偉大なる学問を与え、それでモーセはあらゆる言語を習得し、私の全ての民と話せるようになります。
- イスラエル人(信仰者たち)は神や主神ではなく、偉大なる霊魂のみを崇拝し、他人から危害を加えられても憎まなかったため、1,500年間続いたエジプトの法律により奴隷状態にありました。これらの法律は、オシリスの制度を敷いていた管区の方式に因み、『太陽の法』と呼ばれていました。オシリスの制度とは以下の通りです。
- 太陽は中央に座する力であり、太陽に付随する惑星は衛星となります。同様に、エジプト王は太陽王であり、その副王(執政官)は衛星となります。天界の最上位の天使であるオシリスは太陽神、すなわち神々の神でした。他のすべての神はオシリスの衛星です。
オシリスは定命の人間に『太陽の法』という法を示し、末端の全ての法はその衛星となりました。太陽の法はエジプト全土に及びましたが、衛星の法は都市や地方の小さな案件に適用されますが、太陽の法に従わなければなりませんでした。
当時、闇の霊魂は、太陽はその昔、非常に速く回転してその表面を剥がしていき、そこから地球や月、星が作られたと教えており、当時のエギュプトの学者の間で受け入れられた哲学でした。
世界は円(軌道)を描いて回転しているため、円は最上位の尺度、つまり太陽の尺度とされ、円の直径はフォニセア語で「短い尺度」という意味の「オード」と呼ばれました。このオードという名称は風刺的にイスラエル人を指す言葉となり、これは今日でもアングロサクソン語の「オディウス」として使われています。しかしイスラエル人は甘美な歌を作り、その歌を「オード」と名付けました。 - 太陽の法には次のようなものがありました。それはつまりこうです。
「神々の神(すなわちオシリス)は布告する。
私に平伏さぬ者は私に属すことができぬ。見よ、私は円環の印そのものである!
私の敵は偉大なる学問を受けることを許さない。 - 彼らは太陽の座(雇用主)に就くことはできず、生涯奴隷としてのみ働く。次の特徴で彼らを見抜くことができる。
- もし彼らが、私ではなく偉大なる霊魂を崇拝しているならば。
- もし彼らが、創造主は人の姿をしていることを否定するならば。
- もし彼らが割礼を受け、兵役に従事しないのであれば。
- その時、彼らの財産は没収され、自分の名義で家を所有することも、子供たちを学校に送ることもできなくなる。なぜなら、彼らは奴隷となり、永遠に奴隷たちの奴隷となるからである」
- エギュプトの法律では、偉大なる霊魂ジェホヴィ崇拝することは偶像崇拝の十分な犯罪と見做されていたため、イスラエル人は罪状に対して審議するため法廷に出廷することさえ許されず、彼らが仕える主人の管理下に置かれ、その裁きに異議を申し立てることができませんでした。
- モーセが生まれた当時、エギュプトの人口は1,300万人で、そのうち多かれ少なかれ、400万人が信仰者(イスラエル人)でした。というのも、イスラエル人は全員が完全な信仰を持っていたわけではなく、太陽の法の苛烈さを逃れるため神(オシリス)の崇拝者を名乗ったり、恩恵を得るために兵役に従事したり、あるいは人間のやり方に同調する者が多かったからでした。
- そのため、太陽王(ファラオ)は、イスラエル人が太陽の法に反抗したり、兵士となってエジプト王朝を倒すために外国の王国と同盟を結んだりする日が来ることを恐れていました。
- 男神バアルと女神アシュタロスは300年以上もの間、諸外国を戦争へと駆り立てており、その結果、信仰者たちは他所で殺されるよりもまだましだと考え、エジプトへ逃れ奴隷として仕えるようになりました。
- ジェホヴィはこう仰せになりました。
「ご覧なさい、私の敵は互いに殺し合い、私に選ばれし者たちを脅して追い払っています。
私は彼らをエギュプトに導き、偉大な指導者を与え、私の教義を回復させた後、彼らの土地へと導きます」
【15章】
- 王の宮殿とピラミッドは石の壁に囲まれ、木と鉄でできた12の門がありました。壁は12人の男が並んで歩けるほどの幅があり、壁の高さは12平方(約32フィート)ありました。
壁の上には城壁を巡回する兵士の宿舎が12棟ありました。そしてすべての門には門番の家がありました。そのため、男も女も子供も許可なく宮殿やその敷地内に入ることはできませんでした。 - 王女レオトナスが侍女たちと共に川辺を歩いていたとき、葦の茂みの中に籠に入った子供を見つけました。
レオトナスは侍女たちにその子を連れて来るように命じて見てみるとイスラエル人の子でした。
彼女は言いました。
「神々がこの子を遣わしてくださったのです。この子は私の子とします」 - 彼らはこの子供を宮殿に運び入れると、レオトナスは王にこう言いました。
「見てください、奇跡の中でも最たる奇跡があったのです!
葦の茂みに籠にイスラエルの子供を見つけましたのです。
どうしてそこにいたのか、どのように城壁をよじ登ったのかは神のみぞ知るところです」
王は言いました。
「この子供を預かっておきなさい。そうすればあなたの兄弟にもも息子にもなるでしょう。しかし我が衛兵に侵入経路を見つけさせ、できなければ彼らの血が流れよう」 - 数日後、捜索は完了しましたが、その子の侵入経路は何も分からなかったため、王は布告を発し、モーセの母が来てその場に子供を置いた方法について告げない限り、モーセを含むイスラエルの男子1000人を死刑に処すと命じました。
王は3日間の猶予を与えましたが母は一向に来ませんでした。 - 王は娘を呼び寄せてこう言いました。
「どうすればよいだろうか?」
レオトナスは言いました。
「王は約束を破ってはいけません。しかしあなたはこの子を私に与えてこう言いました。
『この子を育てなさい。そうすれば、あなたの兄弟、息子としよう』
私はすぐに侍女を遣わし、イスラエル人の女を乳母として雇いました。
私はこの子が可愛くて仕方なく、この子を手放して生きることはもうできません。
ただ、あなたの命令は必ず実行されなければならないので、昨夜、この件について神託を伺いました」 - 王は言いました。
「神託は何と言っていたのだ?」
レオトナスはこう言いました。
「『乳母がその子の母親であると知らせなさい』と言っておりました。
王よ、どうか、この件について片が付いたと周知してください」 - 王はその子を見て思い直し、レオトナスの希望通りに布告しました。さらに、記録所に記録されたのは、子供の母親が籠を作り、それを王女が見つけた場所に置いたというものでしたが、どういう理由でそこに置かれたかまでは明らかにされませんでした。
これがエジプト人の説明でした。 - 事の真相はこうでした。ジェホヴィの天使たちがヨクベドのもとに来てこう言いました。
「あなたの息子は『先導者』という意味のモーセと命名され、イスラエルの民を奴隷から解放することでしょう。しかしモーセをあなたのもとから連れ去り、あなたはモーセを見つけ出すことはできません。なぜなら、ジェホヴィの天使たちがモーセをレオトナスの手に引き渡すからです。
彼女はモーセを兄弟、また息子として養育し、王子としての教育を施すでしょう」 - ヨクベドは恐ろしくなりました。なぜなら、当時、イスラエル人の血を引く男児を生かしておくのは禁じられており、殺しても罰せられることはなかったからでした。
ヨクベドはジェホヴィにお祈りしながらこう言いました。
「ジェホヴィよ、あなたの御心のままに。あなたの御手が私の息子の上にありますことを私は知っているからです。
しかし、御父よ、どうか私が王女のもとへ行き、あの子の乳母となるように取り計らってください」
ジェホヴィの天使はこう言いました。
「ジェホヴィの御前で誓ってください。その子に、あなたが母親であることを明かさないということを!」 - ヨケベドは言いました。
「王に命じられても、自分が母親であることを認めません。
ああ、ジェホヴィよ、あなたの御心のままに!」 - ジェホヴィの天使たちは籠を作ってその子を運び、レオトナスとその侍女たちが見つけた場所に置きました。
レオトナスはそれがヘブライ人の子だと知ると、侍女の一人にイスラエル人の女を連れて来て乳を飲ませるように命じました。
侍女はウタク門の外に出るとヨケベドを見つけて連れてきましたが、誰も彼女がその子の母親だとは知りませんでした。 - ヨケベドが王女の前に来ると、王女はこう言いました。
「この子を育てなさい。私はその子の母となり、姉にもなります。
神が私にこの子を託したのです」
ヨケベドは言いました。
「素晴らしい子です。私があなたのために育てましょう」 - モーセは成長して大男となり、銅色の肌と力強さを備えた純真なイフアン人となりました。
ていた。息子のいないファラオはモーセに心を寄せ、王子として育て、偉大なる学問を修めた学者たちに教育させました。
モーセは多くの言語に通じ、遠国近国を問わず各国の王や女王、総督たちと親交を深めました。そしてモーセは、エジプトの外にファラオに貢納する7つの王国を従属させる王の側近として仕えていました。 - ファラオはモーセを諸外国の大使に任命し、モーセはその職を12年間務めました。しかし、イスラエル人の血を引くという偏見から、ファラオの宮廷は王にモーセの解任を懇願したため、モーセは王の命令のもと解任されました。
- 王はモーセに言いました。
「息子よ、今回のことは老いた私にとって二重の苦痛を味わっている。まず第一に、お前への愛を私は断ち切ろうとしている、これは剣で突き刺されたようなものだ。
第二に、自分の宮廷の要求に従わうのは、ファラオにとって難しいことなのだ」 - モーセは答えました。
「王よ、私とあなたの愛が引き裂かれることを恐れないでください。人は往々にして、賢明な術も知らぬまま試練を受けるものですが、後になってそれが最善であったと気づくものなのです。 - 私としては、私が自分の民のために働かなかったためジェホヴィによって下された叱責だと考えております」
- 王は言いました。
「どうしてそう思うのだ?」
モーセは答えました。
「何日もの間、ひどい憂鬱がありました。まるで天界の風が私の心に吹きおろし、こう言っているかのようでした。
『モーセよ、モーセよ、あなたの民のために声を上げなさい。
ご覧なさい、あなたの父である王はそれを好意的に見てくれるでしょう』」 - ファラオはこう言いました。
「息子よ、何か望みがあるか?
できることであれば叶えてあげよう」 - モーセは答えました。
「彼らの所に行って何に不満を抱いているのかを確かめるまでは、どう答えたらよいか分かりません」
王は言いました。
「行きなさい。そして戻ってくるまでは誰にも言わないでおくように」 - そこでモーセは出発し、エギュプトの各地を巡り、4ヶ月間留守にした後、ファラオのもとに戻りました。
モーセはイスラエル人のあらゆる不満をファラオに語り、彼らに課せられた義務、宮廷での拒絶、教育の禁じられたことなどを説明した後、彼らが平和で高潔な民であることを褒め称えました。 - 王は言いました。
「残念、実に残念だ。
モーセよ、儂に何ができようか?宮廷でお前がどれだけ詰られているのか、お前もよく知っているだろう。もし私が法律の廃止を要求したら、宮廷はお前と私の頭に燃え盛る薪を積んでくるだろう」 - モーセは言いました。
「王よ、私もどうしたらよいか分かりません。」
モーセはひどく心を痛め、しばらく考えがまとまるのを待ってから言いました。
「王よ、今夜、レオトナスを交えて話し合いましょう。なぜなら、この件で私は心苦しく思っており、そうしなければならないと感じているからです」 - その夜、三人が一堂に会したとき、見てください、夜明けが始まったのです。
そこにモーセの耳に(天使たちを通して)ジェホヴィの御声が聞こえてきました。 - 「見なさい、王よ、レオトナスよ、そしてモーセよ。今こそ私の力が地上に顕現する時なのです。
私の息子モーセよ、あなたは自分の民をエギュプトから連れ出しなさい。そして私はあなたを古代の民が暮らしていた土地に導き、その地を授けましょう。
王よ、あなたの法律を変えてはいけません。エギュプトのやりたいようにやらせなさい。そしてイスラエルの民にも同様にやりたいようにやらせなさい」 - 王は言いました。
「400万人の民を救うとは!
なんと大変な使命なのだろう!」 - 翌日、大変な困難に見舞われていたモーセは一人で森に出掛けました。するとジェホヴィの天使が草叢の中の炎に現れて、こう呼びかけました。
「私の息子モーセよ、モーセよ!」
モーセは草叢が燃えていないのを見て、こう言いました。
「ここにおります。あなたの御声が聞こえました」 - 御声は言いました。
「私はアブラハム、イサク、ヤコブの神です」
モーセは言いました。
「何をお望みですか?」 - 御声は言いました。
「もう一度、あなたの民の所に行き、こう言いなさい。
『私、モーセはあなたたちをエギュプトの地から救い出し、あなたたちが代々相続する地へと連れていきます』」 - モーセは言いました。
「民は私にこう聞いてくるはずです、『誰の権威でそう語るのか?』と。
その時、私はどう答えればよいのでしょうか?」
御声が言いました。
「彼らにこう言いなさい、『唯一なる御方が私を派遣したのです』と。
もし彼らがさらに『あなたはエギュプト人のように嘘吐きの霊魂を持っている』と言ってきたなら、彼らにこう言ってあげなさい、『どうやって霊魂を見分けているのですか?』と。
彼らはこう言うでしょう、『自分のために働く者は私たちを騙そうとします』と。
そうしたらあなたはこう言いなさい。
『ジェホヴィを信じる者は誰であれ、私のように全てを捨てて従いなさい。もし大勢が御父に対する信仰心を持って出て行けば、御父は必要なものを与えてくださるでしょう』」
(これが、あなたたちがイスラエル人と名付けられる所以となった「信仰」の意味です) - そこでモーセとアロン兄弟はエギュプトの地を回り、ラバン家の者を呼び集めて説明し、出発の準備を整えたらエギュプトから出立するように出発するよう促しました。
このように彼らは3年間働き、計画が進行中であることは遠くまで知れ渡りました。 - エギュプト人の神託によれば、イスラエル人が国外に出た後、モーセが大使を務めていた王国と結託し、帰国したらエギュプト人を征服すると預言しました。
- 彼らはモーセに汚名を着せるため、エギュプト人とイスラエル人の二人の男が争っているのを見たモーセはエギュプト人を殺して砂の中に埋め、ファラオの宮殿から逃げたと言いました。
そして記録官たちは記録所に報告書を提出しました。 - 心優しいモーセは偉大なる霊魂にこう問い掛けました。
「正義の声が私のために語ってくれることはあるのでしょうか?」
ジェホヴィは天使を通してモーセにこうお答えになりました。
「あなたの敵に好きなように記録させておきなさい。なぜなら、真実が明らかになる日が必ずや訪れるからです。
あなたは自分の道を進みなさい。あなたが今もなお王のもとを訪れていることが無実を物語っているのですから。記録にあるように逃げたのであれば、その報告があなたの命運を握っている以上、あなたは戻れなかったはずです」 - 当時、エギュプトは栄光と悲惨が入り混じる国でした。貴族たちの暮らした壮麗さは言葉で言い表すことはできないぐらいでした。彼らの宮殿や戦車については、千冊もの書物を書いても語り尽くすことはできません。王宮の人々はあまりにも豪華で、彼らの多くは一年を通して地面の上に立つことはなく、歩きたい場所には絨毯を敷き詰めていました。戦車は銀と金で縁取られ、宝石が散りばめられていました。
- 王室と貴族は2480人おり、世界で最も豊かな国であったエジプトの何もかもを所有していました。
- 次に階級が高いのは支配人で、廷臣や貴族に仕える従者や借地人でした。3番目の階級がイスラエル人と呼ばれる信仰者で、彼らは支配人のもとで奴隷となっていました。
- イスラエル人の集会を招集したり、支配人に対する隷属を唆す行為は違法であったため、モーセとアロンは国法を破りましたが、モーセが王の印章を帯びていたため、誰も彼らを逮捕しようとはしませんでした。
- エギュプトの悲惨さはその半分も語られておらず、これからも語られることはないでしょう。なぜなら、それらは肉体の本質に関することで、その性質上、すべてを語りつくすことはできません。なぜなら、その物語は野獣、雄犬、雌犬、そして山羊にも及ぶものだったからです。
- 人々は悪霊の犠牲者となり、肉体を蝕む不自然な取り組みに走り、害虫が住み着き、爛れていき、その苦痛を緩和できるのは悪行だけでした。
人々は悪霊に魅惑され、後者は人々のもとに訪れるや、悪事のために実体人の姿になり、毎日人間と飲食を共にしていました。 - これらを見てきたモーセはジェホヴィに知恵と力を祈願しました。なぜなら、何千何万ものイスラエルの民も同じく苦しんでいたからでした。
ジェホヴィはモーセにこう答えられました。
「この地には邪悪な天使が溢れているので、ここに住んでいても私の選ばれし民が苦難から逃れることはできません」
モーセはイスラエルの民にこのことを説明しました。 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「モーセよ、あなたと弟は王のもとに帰りなさい。彼はあなたの身とその働きを心配しているのです。
ご覧なさい、貴族たちが王の御前であなたに対して苦情を言っています」 - モーセが王のもとを訪れると、彼は熱病にかかっており、宮殿の噴水の傍の長椅子に座り、従者たちが水を汲んでいました。
王はモーセが来たと分かると喜んで立ち上がり、モーセを呼んで傍に座らせました。
従者たちはレオトナスのもとに駆け込んでモーセが戻ってきたことを知らせました。
レオトナスもやって来て、モーセに会えたことを喜びました。
彼らが話しているうちに王は失神しましたが、モーセは王を抱き起して意識を回復させると、そのまま抱えて宮殿へと運び込みました。 - レオトナスは言いました。
「私の息子、私の弟モーセよ、私たちを見放すというのですか?
ご覧なさい、私の父は年老いてしまい、あなたが幼い頃、父はあなたのために心血を注いだのです。
あなたは父の息子となりなさい。王があなたの強き手の中でどのように生き返るのかを見届けなさい!」 - 王は言いました。
「息子よ、お前のあらゆる叡智を使って、1人の女を理解できるのか?」
モーセは言いました。
「残念ながら王女様を除いて、私は女を学んでいません。どうしてそんなことを聞くのですか?」 - 王はこう答えました。
「レオトナスは王国の情勢について一言も語らなかった!
女とは心の中で一番大切なことを最初に語るものだ。だが男は違う、心の奥底にあることを最初に語る。
モーセよ、私はお前を愛し、お前の前にいると喜びを感じる。だがこの王国は私にとって非常に憂慮すべき状態にある。貴族たちは、お前が奴隷に干渉したで不満を漏らしているのだ。だから私はお前に会っておきたいと思っていたのだ」 - モーセは言いました。
「御声が私のもとに届き、あなたが何を言おうとしているのかを知らせ、あなたのもとに駆け付けるように命じられました。なぜなら、あなたが熱病にかかっているからです」
王はこう答えました。
「もしお前が民の移住を成し遂げる前に私が死んでしまったら、後継者のヌ・ガンがお前の邪魔をするのではないかと危惧している。だから聞きたい、現在の状況はどうなっているのか?」 - モーセは言いました。
「ジェホヴィがこの移住を計画されたので、失敗することはできません。
私が見つけた証拠をお出しします。
イスラエルの民は、私が籠の中で名前を与えられた頃から指導者を探していたのです。そして私が訪れた先々でラバとその家族は、まるで心に刻まれているかのようにこのことを知っていたのです」 - 王は言いました。
「各地であなたとジェホヴィに対する不穏な神託があり、こう言っているのだ、『お前は悪霊の手に堕ちている』と」 - モーセは言いました。
「その神託は私にとって何の意味があるのでしょうか?
自分の行ないが善行であることを確信しています。それは神託よりも優れているのです」
【16章】
- ジェホヴィの御声がモーセに届き、こう仰せになりました。
「私があなたを導く国を調査させる使節団を王から授かり、その使節団が戻ってきた時、あなたは彼らの言うことを私の民に知らせなさい。
民は納得し、あなたに従うでしょう」
そこでモーセは王にエジプト人の使節団を要請すると、王は33人から成る使節団を手配し、彼らに7か月間の調査期間と乗馬用のラクダとロバ、さらに旅の途中の食料運搬用のラクダとロバを与えました。 - 一方、モーセはアロンをエジプト各地に派遣し、この任務を民に伝えるとともに、彼らにどのような服を用意しておくべきかを知らせました。
アロンはラバたちにこう言いました。
「民の服装について気を配りなさい。他人のものは、たとえ僅かでも持ち去らないように。
モーセはあなたたちにこう言うように私に命じました」 - 使節団が戻ってきて良好な報告をすると、モーセはその報告をイスラエルの民に伝え、こう付け加えました。
「ジェホヴィへの信仰の薄い者たちであっても、この使節団の言葉は信じるだろう」 - エジプトの神々は手を止めることなく、宮廷人や貴族たちに神託を送り、モーセが王に王位継承権を持つ息子がいないことを知りながら、王国を異国の者に明け渡すよう説得していると伝えました。
- そこで宮廷人や貴族たちは、王に二つの選択肢のうち一つを選ぶよう要求しました。
1つはモーセを国外追放し、イスラエル人の移住計画をすべて放棄すること、もう一つはヌガンに王位を譲ることでした。
その頃、エジプトは一年中、旱魃に見舞われ、川は氾濫せず、国内の多くの地域で飢饉が襲うことは明らかでした。 - 王は宮廷人や貴族たちの要求に対してこう答えました。
「私はエジプトの王ファラオである!
迫り来る飢饉に対して、民のために食料を配給せよ。
汝ら全員に告げる。この世界の変革が到来した。それは奴隷状態からの解放である!
貴族や宮廷人、そして王でさえ、この考えを止めることはできない」 - 宮廷人はこの答えを聞くと、互いにこう言いました。
「これは王の口を介したモーセの言葉だ。
確かに彼は主神への畏敬を失い、イスラエル人が信仰する偉大なる霊魂に耳を傾けている!」 - ジェホヴィは天使たちを通してモーセにこう仰せになりました。
「今こそあなたの出番です。あなたが選んだ長たちの所に行き、全ての長たちをそれぞれの場所に配置させなさい。そしてあなたは軍隊を出陣できるようにして、数でエジプト人を圧倒しなさい」 - この時、モーセによって任命された主なラバ長と、彼らが出発したエギュプトの場所は以下の通りです。
- ハゴルの地からウベトの子ラサク。
ランナの地からエスタの子アシメル。
ヌソマトの地からハノルの子ガンバ。
パルゴトの地からナイニスの子ボサド。
ボルゴルの地からヨトの子アムラム。
アパウの地からサムハドの子ラキディク。
ハサカルの地からケダムの子ヨカイ。
オエダの地からハベドの子ヨルウィト。
ハラガタの地からバルの子サットゥ。
ラーの地からアバンの子トゥスマク。
ナバオートの地からフィラッティの子マクラス。
ヌジョラムの地からトールの子ヒジャメク。
エニッツの地からハガンの子ファルー。
ロムハの地からシャッタ。
モアンの地からルッツの子ジョッキン。
ヘズロンの地からバラハの子トゥダン。
ライムの地からリブニの子オシャラク。
サカズの地からロダードの子タンマス。
テサムの地からティディヤの子ミサ。
アナイスの地からザッカスの子ソル。 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「長たちには77日前には知らせておき、彼らは各地のラバに知らせ、出発の準備を整えさせるように。但し、出発の日取りは民には知らせず、長とラバたちの間で秘密にしておくように。
ラバが率いる人数についてはすべて長に知らせなければなりません。
すべての準備が整ったら、決められた日に決められた人数が全員、同時に出発するように」 - モーセはアビブの月の十日目に、すべての民が出発する日と定め、さらに長たちにこう言いました。
「出発する前夜、日没の瞬間に、各家は子羊を生贄として捧げるように。
すべての男女、口の利ける子供は全員、子羊の血でジェホヴィと契約を交わすように」 - 生贄を捧げる時が近づくと、家族は円陣を組み、その真ん中に頭と足を縛った子羊を立たせました。その後、刃物が振り上げられ、一撃を加える時、誰も口をきいてはいけません。なぜなら、それは子羊の血が反エギュプトへの契約となるからでした。
喉が切り裂かれ、血が流れる時、全員がこう言うはずでした。
「エギュプトでジェホヴィの子羊は死にました。彼の御方はイスラエル人と共にここから去り、しかしエギュプトは今夜から呪われることでしょう。
ああ、ジェホヴィ(E-O-Ih!)よ、私とのこの契約をお受けください。
罪なき血があなたの御前で流れたのは、明日の朝、日の出と共に私は出発し、このエギュプトの地に二度と、永遠に腰を下ろさないという証とするためです」 - こうしてアロンとアカドは、イスラエルの家の長たちに秘密裏にこう伝えました。
「モーセはこう言っていました。
『これは全能者なるジェホヴィの御命令なのです!』」 - さて、イスラエルの民が勝利を得ようとしていた日の前の晩のこと。死に瀕していたエジプト王はモーセを呼び寄せました。モーセが馳せ参じると王はこう言いました。
「もし民が去る前に我が命を奪うのが主神の御心だとすれば、お前は大層苦労しよう。なぜなら、儂の跡を継ぐヌ・ガンはイスラエルの民をひどく憎んでいるからだ」 - モーセは言いました。
「どうすればよろしいでしょうか?」
王は言いました。
「見るがよい、疫病がナジャウトとアラベナに蔓延している。お前の民はその道を通ることができまい。
ヌ・ガンとその廷臣たちはハルボートに住んでいる」
モーセはこう答えました。
「私の民はナジャウトとアラベナを通り抜けます。疫病は彼らを襲うことはないでしょう。
なぜなら、今回のことは全能なる御方の手に委ねられているからです」 - モーセが王と共にいることを知ったレオトナスは、王に会いに行きました。
彼女は言いました。
「ああ、私の息子にして弟よ、ようこそ来てくれました。
見なさい、王宮の者たちの仕打ちと執拗な貴族たちが、王の死を招いたのです」
これに対し王は言いました。
「レオトナスよ、儂はまだ生きている!」
しかし、悲しいかな、これが彼の最期の言葉となりました。
彼は笑うと、心臓から血が噴き出し、そしてモーセの腕の中で息を引き取ったのでした。
【17章】
- ジェホヴィは天使たちを通してモーセにこう仰せになりました。
「王の遺体を防腐処理し埋葬したら、あなたは速やかに民の元へ行きなさい。
王位に就く者は主神バアルの声に従っており、私に選ばれし者の出発を阻もうとするからです」
そこでモーセは首都を去り、命じられたとおりにしました。 - ヌ・ガンは戴冠するとすぐに次のような布告を発しました。
「見るがよい、我はエジプトの王ファラオにして、世界の支配者である。
神は我が領土で声を張り上げてこう言った。
『万歳、実体界の太陽王よ。
見よ、我は地上、水中の全ての生き物を永遠に汝のものとして与える。
汝に言おう。汝のものは汝のもの、汝は汝のやり方で支配せよ。なぜなら、我は地球の全ての生き物を永遠に汝のものとして造ったからである! - 広原を駆ける獣、水中の魚、地上で暮らす人間、全ての生き物を我は汝のために創造し、汝は永遠にそれらを所有しよう。
我は生きとし生ける命を汝の手に委ねてこう言おう、
我はファラオの家を創造した。その家は我の家でもある、と。 - この地の王座に座する者は、我が息子であり、命ある限り、その者が所有する。されどその者が死に王位が跡継ぎに渡ったとしても、汝の王国の権利と権力と財産は消滅することも、無に帰することもない。しかしその跡継ぎは、我が我が領内に立てた我がファラオである』
主神はそう言った。 - それゆえ、今、神の命の、そしてその息子(オシリス)の命により全世界の王にして所有者となったファラオである我は死んで蘇り、自らを地球の神として、生きとし生ける全ての者を掌中に収め、今日も、昨日も、そして永遠に、永遠の王であり、万人の主神である。
そして我は、神から授かった権威により我が民となった者たちに宣言する、いかなる者も、いかなる民族も、我が慈悲深さ、そして寛大さによってのみ、この聖なる大地を歩く権利を有する、と。 - 我が印章を持たずに、此処彼処と行く者は死刑に処する。
- 田畑を耕し、家を建て、溝を掘り、煉瓦を作り、収穫し、家畜の世話をし、その他の我が命じたあらゆる仕事をこなすために神々の神たる者が与えてくれた奴隷である我が民が大勢、このエギュプトから逃亡し、我が敵である外国の王のもとに行こうとするのであれば、死罪に処す。
もしそのような者が我への奉仕を放棄し、我が聖地から出て行くのであれば、我が忠実な奴隷がその者らを襲い、男も女も子供も容赦なく殺すであろう。
これは、主上神がその息子である我に命じられたことなのだ」 - ジェホヴィは天使たちを通してモーセにこう仰せになりました。
「さあ、行きなさい。あなたの兄弟のアロンを連れて王の前に行き、あなたの想いを申し入れなさい」
モーセは言いました。
「全能なる神ジェホヴィよ、どうして私にそのようなことをおっしゃるのですか。
私には他の人のように議論できなければ、男にも女にも面と向かって話す勇気もありません。
私の舌は時が来なければ言葉を紡げません。
私は幼い頃から、王となったヌ・ガンを知っており、もし彼が私を踏みつけてきたら、私には何もできません」 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「息子よ、だからこそあなたに私の言葉を伝えることができるのです。
さあ行きなさい。恐れることはありません」 - モーセはアロンを連れてファラオの前に進み出ました。
王は尋ねました。
「お前は何を望む?」
モーセは言いました。
「私の民がエギュプトから旅立つ許可をいただくため、こうしてお願いに来ました」
王は答えました。
「主神は我と共におる。神は、お前は行くべきではないと言っている。
我は、神の言葉を伝えている」 - ジェホヴィの御力が宿ったモーセはこう言いました。
「王よ、束縛がこの世のものだけだと思わないように。これで終わりではないのです。
あなたは布告の中でこう言いました、『我は生きとし生ける者を委ねられた』と。
主神はあなたにそう言ったのですか?
疫病と死があなたの民を襲っている状況で、どこに正義があると言うのですか?
それなのに、この状況をあなたは『守っている』と言えるのですか?
あなたの神の言葉に対してさえ、あなたは完全に失敗しているのです。その罪はあなたにあります。だからこそこの地に必ずや降りかかる苦難の中で、あなたの失敗がこれ以上大きくならないように、私の民の旅立ちを許してください」 - 王は言いました。
「お前には権限はない。凍てついた蛇が王宮に運び込まれ解凍された途端、今度は恩人に噛み付いて殺すのだ。
お前は無法者で、神託でも呪われている。お前についてはこう言われている。
『お前はホレドに行き、そこで我が大司祭ジャスロと盟約を交わし、我が領土をお前の民に譲渡するために結婚した』
声を聞き、見えざる者に導かれていると嘯くお前は一体何者なのだ?
この奴隷風情が!」 - モーセは言いました。
「王よ、私は自分のために陳情に来たのではなく、民のために来たのです。しかしあなたの主上神が奇跡を翳すというのであれば、私はその神に平伏さない、それで十分でしょう。なぜなら、これらの奇跡は、あなたの神、そしてあなたの主神が、万人の幸福のためではなく、あなたとその勢力拡大のために働く死の天使に過ぎないという証拠だからです。 - 私にも奇跡はあります。あなたの魔術師が行えることは、私にもできます。
私には、神託者たちと同じ目や耳を持っていないとお思いですか?
私はあなたに伝えるとしましょう。あなたは私の民がエギュプトを出るのを許すだけでなく、彼らを追い出すのに軍勢を派遣することでしょう。
ああ、王よ、腐った肉を持つ者でさえ、杖を蛇に変えたり、水をワインに変えたり、死者の霊を見せるといったことができるのです!」 - ファラオは言いました。
「もし神託が神の声を聞くことができるなら、それは最も偉大なことではないか?」
モーセは答えました。
「天使の命じたことを語るのは、天使の僕です。素晴らしい真実を語る者は、ジェホヴィの御声で語られるのです」
ファラオは尋ねました。
「お前の言葉は創造主の言葉だとでも言うのか?」 - モーセは答えました。
「私は真実を語る全ての善人と同じです。全ての善、全ての真実はジェホヴィの御言葉なのです。
バラは香りで以て表現し、雷光の言葉は雷鳴であり、鳥の言葉は歌ですが、人間の声は人間の言葉なのです。地上や水中、上空の全ての生ける者、死せる者はそれぞれの方法で表現されます。なぜなら、御父の御手はすべての善と真実の基本だからです。
彼の御方こそ、あなたの御前に遣わした私そのものであり、今こうしてあなたの御前で口を開くようにと命じられているのです。
彼の御方の御名のもとに伝えます、あなたは私の民をエギュプトから出立することを許すだけでなく、軍隊を派遣して彼らを追い払わなければなりません」 - 王は言いました。
「モーセ、モーセ、お前は狂っている!
たとえエギュプト全土が血に染まっても、お前の言うとおりにはしない」
するとモーセはこう答えました。
「王よ、あなたに告げます。天には二つの力があり、一つは正義と善良、すなわちジェホヴィの力です。そしてもう一つは罪と死の力です。
もし創造主がその御手をエギュプトから離したら、その日、エギュプトは疫病の地となるでしょう。
あなたは覚えているでしょう、太古の昔、偉大なるトースマが最初のピラミッドを建造した時、あなたの先祖は天界の力を非難しました。するとたちまち、エギュプト全土と大ピラミッドそのものを悪霊が覆い、満ち溢れてしまいました。その後、異国の王たちがやって来て、エギュプトを略奪しました。
王よ、この伝説が単なる作り話だとは思わないでください。天界には、海を掃き出し、この国全土を水没させられる神や主神たちがいるのです。
見ていなさい、その日のことを。平和の子羊が死ぬ夜は決まっています。
その夜、全ての女性の初子、そして全ての獣の初子がエギュプト人全員のせいで死にます。
その夜、イスラエル人は誰一人死にません。
ジェホヴィはこう仰せになりました。
『私は契約を交わす時、私の民を通して私の力を示すでしょう』」 - ファラオは言いました。
「もしそんなことがあったら、神はもっと崇高な場所に来てくれるはずだ。
お前は狂っている。我はお前を追放する。二度とお前の顔を見ることはないだろう」 - モーセは言いました。
「現世であろうと来世であろうと、あなたは必ずや私を呼んで苦難から救ってもらおうとするでしょう。しかし私はあなたの命令に従います。私は二度とあなたのもとを訪れませんし、あなたも長らく私の顔を見ることはないでしょう」
こう言ってモーセとアロンは王に挨拶し、立ち去りました。
【18章】
- ファラオは総督を呼び寄せてこう言いました。
「ヘブライ人の煉瓦職人には、もはや藁を与えてはならない。彼らには自分で切り株を集めさせ、同じ量の煉瓦を作り続けさせよ。
また田畑を耕す者にも鋤を引くための家畜を飼わせてはならない。彼らには自分で鋤を引かせ、今までと同じ量の田畑を耕させよ」
このようにモーセの発言に激怒した王はイスラエル人にさらなる苦難を課したのでした。 - これを知ったモーセはジェホヴィに嘆願しました。
「ああ、どうして私をファラオの前に遣わしたのですか?事態は前よりも悪化しています。
ああ、私は舌を抑え込み、説得力のある言葉を使っていればよかったのに!」 - ジェホヴィはモーセにこう仰せになりました。
「あなたは私の命令を実行したのです。自分を責める必要はありません。そうしてくれたからこそ、今まで成せなかったことが成るのです。
エギュプトから出ることを躊躇っていたイスラエル人たちは、今や自分の意志で何をすべきかを決めるでしょう。またファラオが新たに加えた苦難は、あなたの民にとって祝福となるでしょう」 - そして、イスラエル人は使用人のもとから去り、ラバたちは彼らを長たちのところに送りました。
イスラエルの民がエギュプト全土を巻き込む騒動となったのです。エギュプト人も、宮廷人や貴族を除いて同じように騒然となりましたが、そこには目的や統制もなく、ただ混乱しただけでした。そのため、エジプト全土に田畑を耕す者も家を建てる者もいなくなり、清潔さは失われ、国は死骸のように悪臭を放ち、虫や害虫が空中に満ち溢れていきました。 - しかし、信仰者たちに害虫は寄りつかず、肉体は健全であり、エギュプト人のように熱病や癩病、腐敗病に苦しむことはありませんでした。
- ファラオは20万人の軍勢を出陣させましたが、見てください、逃亡兵が後を絶たず、苦しめられ、まるで統率も規律もない放浪者のようになってしまいました。
- ジェホヴィはモーセにこう仰せになりました。
「今、私は地上のはるか上空から、エギュプトの哲学者たちに奇跡を示してあげましょう。
彼らは『万物は大地から生まれる』と言ってきたではありませんか?
彼らはあらゆる手段で私を否定し、私が行ってきた創造を絵空事として片付けようとしてきました。
彼らは太陽を見ると、そこには雲一つないと言うでしょう。しかし、彼らが空を見上げると、はるか上空に雲が見えるでしょう。それはこのエギュプトの国土と同じぐらい大きく真っ黒な雲です。そして、その雲は地上に降りてきて、種からは生まれてこない蝗の大群であることが分かります。その数は非常に多く、わずか三日でこの地の全ての草木の緑葉を食い尽くしてしまいます。その蝗は、これまで地上に存在し、あるいはこれから存在するであろうどの蝗にも似せません。なぜなら、人間にその蝗が地上のあらゆる子種から生まれたものではないことを理解させるためです」 - モーセは使者を遣わしてこの預言を王に伝えるとともに、さらにこう付け加えました。
「どうして、あなたは私の民にこれほど多くの苦難を背負わせようとするのでしょうか?
あなたがやろうとしている悪事は、まだ実行もしていないのに既に崩壊していることに気付いていないのですか?
今やイスラエル人は誰も働いておらず、彼らの使用人たちは途方に暮れています。
もう一度言います、私の民を解放してください」 - 王はこれに何も答えず、黙って部下たちに軍隊を訓練させ、装備を整え、集結させました。
これを見たモーセは偉大なる霊魂がかつて仰せになった雲が現れる時が来たのだと悟りました。
そして、とてもよく晴れた日の正午、空高くに雲が現れ、それは次第に黒くなり、やがて大地に降り注ぎましだ。それは蝗の大群であり、まるで雪嵐が地上を覆うように、場所によっては靴や足首の深さまで積もりました。蝗の群れはあらゆる緑葉、草といった植物を食い尽くし、二日後には近くや遠くの何処にも一枚の葉も見当たらなくなりました。
三日目、蝗の群れはまだ飢えを満たしていなかったのか、老若男女問わず、全てのエギュプト人に襲いかかり、彼らの衣服を食べ、ついにはエギュプト人の肉体をも食べ始めたのでした。 - そして四日目、ジェホヴィは強風を起こし、蝗の群れを海へと吹き飛ばしました。
モーセは再び王に使者を派遣し、こう言いました。
「今こそ私の言葉をよく聞き、賢明なご判断をお願いします。
私はあなたに、創造主の御手がこの地に及んでいることを伝えました。
あなたは心の中でこう思っているはずです、『モーセは愚か者だ!ただの嵐が遠くの国から蝗を運んできただけだ』と。 - しかし、王よ、これはそうではないのです。
あなたはさらにジェホヴィの御力を見ることになります。蝗が天から降ってきた時、あなたはそれを自分なりの解釈で済ませましたが、ご覧ください、今度はまったく別の奇跡が起きます。突然、水中から蛙や爬虫類が出現し、人が足を置く場所も見つけられないほど地上を埋め尽くすでしょう。初日は無害ですが、二日目には人々の体や衣服の下、家の中にと入り込み、三日目にはエギュプト人の肉体を食べ始めます。しかし、この蛙や爬虫類はこの地にいるヘブライ人に触れることはありません。 - これほど多くの蛙や爬虫類がどこから来たのか、誰も知ることはできないでしょう。なぜなら、この蛙や爬虫類は他の蛙や爬虫類とはまったく似ていないからです。
そして五日目、風や雨もないのに、忽然と姿を消します。しかし、腐敗した肉のような悪臭が放たれ、エギュプト人を死ぬほど苦しめるでしょう。 - 王よ、もう一度懇願します。私の民を平和裏にエギュプトから立ち去らせてください。
これがあなたに嘆願する最後の機会です。もしあなたがこの願いを聞き入れてくれなければ、アビブの月の九日目の夜に、ジェホヴィはイスラエルに御手を差し伸べてくださり、一方でエギュプトには、あなたの主神が死をもって贖われます。その日の夜、何処であろうとも、エギュプト人の全ての家族で長子が死にます。そして、この死が預言によるものとあなたに言わせないため、見ていてください、ヤギ、羊、牛、ロバ、犬、猫や、その他の人間が使役する全ての家畜の長子も死にます。
その日の夜、四百万人のイスラエル人がジェホヴィと死の契約を交わします。
翌朝、イスラエル人は出立し、二度とエジプトに居を構えることはありません。
これは、ヘブライ人があなたとその民全員から受けた苦しみに対する無血の報復となるでしょう」 - 王はモーセに答えずにいると、エジプト全土はモーセの予言通りに蛙と爬虫類で覆い尽くされたのでした。
- ジェホヴィはモーセにこう仰せになりました。
「私の息子モーセよ、人間を憐れみなさい。私は絶えず奇跡や前兆を示し、これだけ預言を与えているにも関わらず、彼らは私のことを一向に信じようとしません。
人間の目を内側に向けさせるのはただ一つ、それは自分の身内の死を目の当たりにすることだけなのです」 - さて、イスラエル人が子羊の血によって契約を結んだ過越の夜のこと、熱風が地上に吹き荒れ、エギュプトの人間や家畜、すべての長子が死にました。
ファラオやその兄弟の長子も全員が死にました。宮廷人や貴族の長子も、その他の全家族の長子も死に、どの家族にも死者が一人ずつ横たわっていました。 - これだけの災厄に見舞われていたファラオでしたが、それでも悔い改めようとはしませんでした。彼の心には悪意で満ちており、モーセとイスラエル人を呪い、イスラエルの男女や子供を一人残らず滅ぼし、地上に誰一人生きて残さないと誓い、士官たちに虐殺を始めるよう命じました。
- 信仰者たちは一晩中ほとんど眠らず、旅の準備をしていました。夜が明けて日が昇る頃には全員が出発し、エギュプト全土から、西のスコトに向かって進みました。長たちが先頭に立ち、各団体はラバに率いられ、それぞれの家族は父や長男に率いられました。
出発に際し、彼らは長たちを通してこう言いました。
「おお、ジェホヴィよ、あなたの御名において、私たちは、私や息子、娘たちが生まれたこの故国の地から出立し、永遠に戻りません!
あなたが地球全土を統べるまで、エギュプトの繁栄はもはやないでしょう」 - しかしエギュプト人にとって状況は驚くほど変化していました。彼らはイスラエル人が実際に出発し、さらに身に生じた奇跡を知ると態度を軟化させ、金銀の贈り物を持ってきたり、ヘブライ人の女性や子供たちには乗馬用の驢馬や駱駝や食料を与えたりもしました。
しかしイスラエル人の女性たちはこう言いました。
「いりません。もしこれを受け取ってしまうと、私たちはエギュプト人に恩義を感じてしまいます。イスラエル人は代価を払えないものを受け取ることはしません」
するとエギュプト人は恐れおののきながら言いました。
「神々に呪われたくないので、どうかこれらの物を、あなた方の神の御名のもとにお受け取ください」 - そうしたことがあり、信仰者の女性たちは驢馬や駱駝、その他の多くの贈り物を受け取り、驢馬や駱駝に乗って旅立ちました。
- モーセはこのことを聞くと、イスラエル人にこう叱責しました。
「これを受け取ってしまったから、あなたたちはエジプト人から略奪しようとして、これらを借りたり、懇願したのだと言われるでしょう」 - イスラエルの民がスコトの近くに到着した時、ジェホヴィはモーセとアロンにこう仰せになりました。
「あなたたちはここに十二日間留まり、私の民が通り過ぎるのを見守り、彼らからも見られるようにしなさい」
そこでモーセとアロンは、道の傍の高台に天幕を張り、そこに十二日間留まり、モーセは彼らの前に姿を見せては語りかけたり、励ましました。 - その後、イスラエル人は荒野の出口のエタムを通り、そこから神バアルの神託所があるバアル・ゼフォンに近いミグドルへと向かい、ピハヒロトの前で宿営し、モーセはそこで数日間の休息を命じました。
- 一方、ファラオですが、主神が彼の軍勢を混乱させていたため、イスラエル人にいかなる攻撃も仕掛けられずにいました。
ファラオはイスラエル人が無傷であることを知ると、自ら出陣することを決意し、エギュプトの全ての戦車を搔き集めて、自ら軍勢を率いて進軍しました。
イスラエル人は疲労困憊し、足も痛んでいました。ファラオが追ってきていることを知ると、多くの者が不平不満を溢しました。
「ああ、モーセよ、どうして私たちを故郷から連れ出しのだ?
エギュプト人に奴隷として仕えていた方が、殺されるよりはずっとましだった」 - モーセは彼らを叱責しました。
「あなたたちは信仰者であると言いながら、まだジェホヴィを信じていないのですか?
彼の御方を信じなさい。きっと約束通り、あなたたちを安全な場所へと導いてくださるはずです」 - ジェホヴィはモーセにこう仰せになりました。
「彼らは私が差し伸べる救いの手を知るでしょう。
今日、イスラエル人を追跡しているエギュプト人は、二度と追跡できなくなります。
あなたが彼らを海に連れて行く時、持っている杖を上げて見せなさい。そうすれば、私は海を分け、私の民が海底の乾いた土の上を歩いて渡れるようにします。そしてファラオの軍勢も追ってきますが、水の中に飲み込まれることでしょう」
これはその通りになりました。 - ジェホヴィは強風を起こし、海の水を分断し掻き分けると、イスラエル人は土の上を渡ることができました。しかし、追跡してきたファラオの軍勢は、海水の大洪水に巻き込まれて溺死しました。
- こうしてジェホヴィはイスラエル人をエギュプトから救出し、イスラエル人はジェホヴィと、その僕のモーセを信じたのでした。
- さて、スコトから海の対岸まで、昼は雲の柱がイスラエル人の前に立ち並び、夜は火柱が上の方に灯ったので、人々は雲か光を見ながら進みました。
海を渡り終えた彼らが到着した場所は、シャケルマラトでした。
彼らはそこで何日も逗留しました。 - モーセがイスラエル人の移住を開始してからシャケルマラトに到着するまで、4年と207日かかりました。またエギュプトを出立したイスラエル人の数は、男女子供合わせて375万人であり、彼らに同行した他の民族は40万人おり、古代の割礼を受けていない部族の出身であったため、ヘブライ人は彼らを『不完全な肉体を持つ者』という意味のレビ人と呼びました。
- モーセはレビ人に、イスラエル人とは別に宿営するように命じると、自分たちがアブラハムの真の末裔であると主張していた彼らは万事、モーセの命令に従いました。
- そしてモーセはジェホヴィに讃歌を捧げ、妹のミリアムはそれを歌い、タンバリンで演奏し、イスラエルの女性たちはジェホヴィの前で踊りました。
- これが『モーセの歌』と呼ばれるもので、内容は次の通りです。
【19章】
- 全能にして私の神であるエロヒよ、あなたは私の民を救ってくださいました!
私はあなたにこの歌を捧げます。
イスラエルの子供たちもあなたにこの歌を捧げます、ああ、エロヒよ! - エロヒよ、あなたは偉大な力をお持ちの救世主です。
エロヒよ、私はあなたのために家を建てます。ああ、私の御父たる神、エロヒよ! - エロヒよ、あなたは私の戦士です。あなたの御名を永遠に!
- あなたはファラオとその軍勢を取り囲み、選りすぐりの隊長と兵士たちは紅海で海に呑み込まれてしまいました。
- 海の深さが彼らに襲い掛かり、石のように海底へと沈んでいきました。ああ、エロヒよ!
- 全能なるエロヒよ、あなたの右手は力に満ち溢れ、無辜の民の血を流さずに済みました!
- 私の神エロヒよ、あなたは威厳に満ち溢れ、その右手は敵を粉々に打ち砕きました!
- 崇高なるエロヒよ、あなたの行く手に立ちはだかった人々に恵み深く臨まれました。
あなたが息吹を送ると、その正義の剣によって彼らは藁のように刈り取られました! - あなたの鼻息で海水が汲み上げられ、あなたの声で洪水が起こり、彼らを海の真ん中に閉じ込めました!
- あなたの敵は言いました。
「私は追いかけ、追いつき、その戦利品は私のものとなるだろう。
私は剣を抜き、この手で彼らを滅ぼしてみせる!」 - あなたは風を起こすと、海は彼らを襲い、鉛のように大海に沈んでいきました。
- エロヒよ、神々の中で、あなたに叶う方など誰がいるのでしょうか?
聖なる栄光に満ち溢れ、賛美と奇跡によって畏れられる御方こそエロヒなのです!
あなたが右手を上げると、彼らは大地の下にと沈んでいきました。 - 慈悲深き全能者にして、私の神、そして私の御父たる神、エロヒよ。
イスラエルの民を父祖の地へとお導き下さった御方、エロヒよ!
イスラエルの民を聖地に、そして安息の地にお導き下さった御方。 - 全ての民よ、聞いて畏れなさい。
パレスチナの住民に冷静な思考が宿るでしょう。
エドムの貴族たちは驚愕するでしょう!
モーブの戦士たちは震え上がり、野蛮なカナンの民は消え失せるでしょう! - エオヒよ、あなたは彼らを恐怖で震え上がらせるでしょう。
あなたの大いなる腕力に彼らは驚愕し、石のように無力となるでしょう。
エオヒよ、この地はあなたのものです。仔羊の血で結ばれた過越の日に、この地をあなたが買い取りました。
イスラエルの民はこの地を恐れ戦きながら通り過ぎます。 - あなたはイスラエルの民を、私たちの神エオヒが住まわれる、相続すべき山に連れて行ってくださるでしょう。
あなたが永遠に統治するために建てられた聖地に住まわせるためにー。
【20章】
- モーセは長とラバたちを密かに集め、こう言いました。
- 「ジェホヴィよ、私は何を引き受けてしまったのでしょうか?
ご覧ください、あなたの息子や娘たちは私に従ってエギュプトから出ました。天界におられる御父よ、どうすれば彼らを私ではなく、あなたと結びつけることができるでしょうか?」 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「モーセよ、モーセよ、私があなたに言うことを、ラバと長たちにも伝えなさい。
『あなたたちをエギュプトから連れ出したのは、モーセでも、長でも、ラバたちでもありません。あなた方を連れ出したのは、万人の神、万人の長、万人のラバたる万物の創造主ジェホヴィなのです』 - 私は、私の民と私の敵、つまり人間の偶像崇拝者との間に境界線を引きました。
偶像崇拝者たちは、兆候と奇跡ゆえに、魔術師を人間の神として崇拝します。しかし、私の息子モーセよ、あなたが示した偉大なる奇跡に対して、それに匹敵する者が果たしているでしょうか? - 私の数百万の民を連れ出して、一人の男女子供も失うことなく、巨大な権力から救い出したのは誰でしょうか?
- しかし、私はあなたに宣言します。
あなたは今まで行ってきた全ての奇跡よりもさらに大きな奇跡を行います。なぜなら、あなたは人々の前で偶像崇拝の対象となることを自ら避けるからです。
あなたはあらゆることにおいて、私のことをあなたの民に伝え、あなたがただの人間にすぎないことを教えなさい。そして、あなたの長やラバたちも同じように教えなさい。
なぜなら、私は地上のあらゆる偶像崇拝を根絶したいからです」 - 私は王も女王もいりません。私は全ての人間がいればそれで十分なのです。
- アブラハムが私の民を家族ごとにラバを任命し、そこからラバ長を任命したように、あなたも自分の民を再編しなさい。
- そして、アブラハムに与えた私の掟をあなたにも与えます。それを以て、ラバたちと共に私の三日月を再編します。また、わたしの三日月は、ラバとラバ長にとって完全な法となることでしょう」
- モーセは言いました。
「ジェホヴィにお伺いします。
『真昼の広場で、どういう風に整えればよいでしょうか?』
すると、ジェホヴィの天使が御父の名のもとにこう伝えました。
『北東に神、南西に主神、北西にバアル、南東にアシュタロスを配置しなさい。
というのも、オシリスは既に死んでいるからです。 - それゆえ、今夜、偉大なる霊魂が私たちを祝福してくださるよう、場所を準備しなさい』」
ラバと長たちは「分かりました」と言いました。 - 夜になり、モーセとラバ、そして長たちは人里離れた場所に行き、そこに見張りを立てて誰にも邪魔されない状態を作りました。こうして準備が整うと、ジェホヴィの光がモーセの上に降り注ぎ、古代の書物がモーセの前に現れました。モーセはラバや長たちに『エメタハヴァ』を授けました。それは、ジェホヴィの御声により再確立されたあらゆる儀式や式典であり、今日に至るまで行われているものになります。
その後、長たちは長と呼ばれず、ラバ長と呼ばれることになりました。なぜなら、モーセがジェホヴィの命により彼らに聖油を注いだからでした。 - それから間もなくして、モーセはレビ記の法を書き記しました。なぜなら、ジェホヴィの内面的な神殿は言葉によってのみ伝えられていましたが、外面的な神殿は文字によって記されていたからです。それゆえ、こう言う風に言われました。
「ヘブライ人には二つの法がある。一つは誰も知らない法であり、もう一つは信仰者に適さない者たちの法である。この者たちはレビ人と呼ばれていたが、実際にはレビ人ではなく、エジプトからイスラエル人に付き従って来た者たちであり、そのほとんどは神を持たず、判断力が乏しく、学識もない者たちであった」 - しかし、モーセが行ったこと、教えたこと、そして彼が自分の手で為したことは、多くの書物が書けるでしょう。そして、世界がこれほど善良で偉大な人物を今まで輩出したことがあるのかは分かりません。
- モーセがシャケルマラトに到着した時、彼はヘブライ暦で44歳でしたが、エギュプト暦では88歳でした。
- 海で滅ぼされなかったファラオとその軍勢については、そのまま帰還したと言われています。それから間もなくして、ファラオは神(オシリス)を地上から消滅させ、自分を『世界の救世主にして、聖霊の代理者』であると宣言しました。
- 書記官と記録官はカオナに集まり、イスラエル人がエギュプトを出発した経緯について書かせるため、フェーヤ(エギュプト人)にその役目を与えました。フェーヤはその報告書を書き上げると、それは「ヘブライ人の出エジプト記」と呼ばれ、王の記録所に保管されました。その写本は主要な都市に送られ、そこでも残されました。なぜなら、そうすることがエギュプトの法だったからです。
フェーヤの記録は後にエズラに採用され、今日では「出エジプト記」の初本として知られています。 - エギュプト人の記録として残された創世記は、アカボス、デュラム、ハゼドによって書かれ、エズラが書記官を通してそれを写し取った内容は、今日に至るまで変わっていません。
創世記製作における霊感は、偽神オシリスとその使者からもたらされたものであり、その使者の長はオシリスに仕えた天使ヨタバとエギュプトでした。
現在記録されているものに関して言えば、この二つの本の精神は取り扱っている主題に対してのエギュプト版でした。 - 人々が非常に長寿であったとされる系譜について触れると、その理由は次の通りです。
- トースマは記録官たちにこう言いました。
「伝承についてその真実を探求しようと際には、許容幅を設けなさい。なぜなら、ある伝承において、ある人物が700年前に生きていたと言い、別の伝承では1050年前に生きていたと言ったとする。この時の二つの許容幅は350年となり、それがその人物の一生の長さとなる」
こうして、許容幅は事実と混同されるようになりましたが、それは騙そうとしてのものではありませんでした。 - そういうことがあり、記録は何の価値もなくなっていったのでした。さらに悪いことに、記録は六千冊以上もの書物という膨大な量となり、エズラの書記官たちはその内容を最初から最後まで全く理解することができませんでした。しかしながら、この書物は全て、イスラエル人によってではなく、彼らの敵によって書かれたものだったのです。
従って、奇跡に関する証言としては全く損なわれずに済んでいるのです。 - こうして、モーセによる信仰者たちのエジプトからの脱出の物語は終わります。
- 次はジャフェスの地のチンについてお話しします。
【21章】
中国の礎を築いたジャフェスのチン(秦(:TSCHIN’E))の歴史
- これから記すのは、偉大なる霊魂オーマズド、あるいはフォネシア人がエロイヒと呼んだ神に選ばれしチンの七代前の祖先たちの系譜です。それは次の通りです。
- ツェウォンはヒガンを生み、ヒガンはア・ソーを生み、ア・ソーはツォー・ヨンを生み、ツォー・ヨンはア・パインを生み、ア・パインはチョク・リーを生み、チョク・リーはツァイン・ルーを生み、ツァイン・ルーはア・ショーを生み、ア・ショーはツァイン(チン)を生み、彼らは6世代にわたり、スイスとサルギスの才能に恵まれました。
- 彼らのうち、ツォー・ヨンとア・ソーはジェホヴィ(オーマズド)の預言者であり、ア・ショーは予見者でした。それでも、この6世代の彼らは全員、神の声を聞くことができ、ザラツゥストラの法に示されたジェホヴィの掟を守り、正しい道を歩んでいました。
- ア・ショーは、ザラツゥストラと同じく籠職人であり、彼の息子のチンは、ア・ショーの妻ソン・ヘンの四番目の子供でした。
モーセのようにチンは銅色の肌で非常に大柄でしたが、髪は狐のように赤く、内気で口数の少ない子供でした。 - ア・ショー、すなわちチンの父はこう言いました。
「私には他にも息子がいましたが、私の言葉は賢明で真実を語っています。チンはこの世に生まれた時からどの子供とも違っていました。男の子か女の子か、医者にも区別できませんでしたが、どちらかといえば男の子のようでした。ジェホヴィ(オーマズド)の天使が、この子が生まれる前に私のところに現れ、こう言いました。
『この子はチンと名付けられるでしょう。名前の由来は性別がないという意味です。
古代の書物に記されているようなイエス、すなわち世俗的な欲望を持たない者になるでしょう。なぜなら、彼はジェホヴィに選ばれし人々を連れ戻すからです』 - 私はこの子が生まれる前に医師たちにこのことを話しましたが、彼らは信じようとしませんでした。しかし、ジェホヴィの御命令により、私は7人の医師を呼んで出産に立ち会わせました。これは、後になって医師たちが赤ん坊の出産時に不適切な処置をしたと言われないようにするためでした。
- この時呼び寄せた医師たちは、エム・ガ、ツェ・タ、ア・エム・ファエ、テ・ゴウ、ツィ、ドゥ・ジョン、フォ・チャイン、そしてア・カオンの7名であり、彼らは生まれたばかりの子供を診察すると、その出生の異常さ、生誕時の預言について誓いを立て、記録を残しました。
この記録は、太陽王に属するハ・タエ・キン(図書館)に保管されました。 - 今や老齢となった私ア・ショーは、チンの幼少のことに関して何百人も私のところに聞きに来たため、そのことを記録に残します。
- まず第一に、彼は子供たちの中で一番怠け者で、信じられないほど愚鈍でした。彼の兄弟姉妹たちは、彼が偉大な人物になるという私の予言を嘲笑っていました。
- 第二に、彼は小さな鳥(ファアク)よりも食べる量が少なく、幼い頃はひどく痩せていたので、私たちは子供の時の彼のことを恥ずかしく思っていました。実際、彼は大きな頭をした、骨と皮ばかりの体つきでした。
- 第三に、彼が歩き回ると、椅子やテーブルが誰も触れていないのに、彼の邪魔にならないように自然と動きました。
- 第四に、ジェホヴィの天使たちがしばしば彼を小屋の周りに運び、木から果物を摘むために彼を持ち上げたりしていました。
- 第五に、彼は決して笑いませんでしたが、まるで世捨て人の老人のように、真面目で愉しげでした。しかし、彼はほとんど話さなかったので、賢いのか愚かなのか、誰にも分かりませんでした。
- 彼が3歳の時、母親は乳離れさせた、いや、むしろ自分から乳離れしました。それ以来、彼は果物と木の実と米粒以外は何も食べませんでした。
16歳になると、彼は突然大柄で強く成長し、肌の色も濃くなりました。そこで私は彼のために教師を雇いましたが、なんと一日で一冊の本をすべて覚えてしまうのです。
一度聞くだけで学び、学んだことは決して忘れませんでした。 - 彼が22歳の時に話し始め、天界の天使たちも彼を通して話すようになりました。彼のその言葉は偉大でした。
- 日の出から夜遅くまで、彼の舌は語ることを止めませんでした。まるで彼の口は天界の代弁者であるかのように動いていたのです。というのも、一人の天使がしばらく聴衆の前で語り終えたかと思うと、次は別の天使が、その次にまた別の天使と次々と現れ、語り続けたからでした。そして誰も現れない時は、チン自身が語りました。
- 彼のもとには多くの大学者や哲学者たちがやって来て、彼の知識を試そうとしました。しかし、彼らは全員がまるで愚か者のように困惑して立ち去りました。
彼が正しく答えられない質問をすることは不可能だったのです。
石板を読むことや、見たこともない神殿の大きさや構造を明らかにすることや、遠く離れた人の病状を言い当てるといった質問は、彼にとって万事が捲った書物のように明らかなことだったのです。 - この偉大な叡智が四年も彼の中に宿り続けた結果、彼の名声は東西南北へと広がり、その名声がどこまで及んでいるのか想像もつかないほどでした。
彼にどこまで見聞きできるのかと質問すると、「私の領内の全てです」と答えました。
そして指でこう示しました、「この石板のチンの土地!」 - こうしてこの国はチン(チャイナ)と名付けられ、今日までその名を保っています。
- ア・ショーは言いました。
「突然、チンの饒舌な言葉は止まってしまい、彼は全ての質問に対して『はい』か『いいえ』しか答えなくなりました。そして彼は7年と80日間、沈黙を守りました。
その後、第二の天界から降臨してきた天使たちが彼のもとにやって来ました。それ以来、彼は(私的な場を除き)人間のように話すことはなく、『あらゆる光』のように話すようになりました。
その後のことは世間に知られている通りです」
【22章】
- チンは言いました。
「私はただの人間ではありません。私は『あらゆる光』です。
私の声は永遠に生きる声です。
私を崇拝してはいけません。人間を崇拝してはいけません。『あらゆる光』を崇拝しなさい。私は常在のジェホヴィ(オーマズド)です。
人間の中に『私』が満ち溢れているからこそ、人間は口を開き、言葉を発することができるのです。 - 私を知ることは、すべてのことを知ることでもあります。
私に近づこうと努める者は、私に選ばれし者です。
私を知らない者は私を証明できません。私を知る者は私を証明する必要がありません。
すべての『自分』にとって、私はあらゆる『自分』の中の『自分』です。
すべての『自分』の中で『自我』を完成させた者は私と一つになった状態です。
そのような道を歩むことが正しい道なのです。 - 聞きなさい、人間よ!
私は三千年ごとに訪れます。
私は世界に新たな光を灯します。
私の声は人間の心に届きます。
あなたにとっての至高なる者は私であり、あなたにとって最低なる者は罪です。
人間よ、私があなたたちの前に置くのはこの二つだけです。私という『自分』か、あなた自身という『自分』かー。
あなたはどちらに仕えますか?
これによってあなたの復活か、あるいはあなたの地獄が決まるのです。 - 太古の初めの頃、私は同じ質問を投げかけました。「オーマズドよ、私は、万物の根源なるあなたに仕えます」と言った者は誰であれ、私に選ばれし者でした。一方、「私は自分自身に仕えます」と答えた者は悪魔に選ばれし者でした。
後者は誤った道を進む者です。彼らの足跡は血と死に満ちており、戦争こそが彼らの栄光でした。 - 彼らは私に選ばれし者たちに襲いかかり、虎のように追い詰めました。
私は太古の昔にこう叫びました。
『どうしてあなたたちは私に選ばれし者たちを迫害し、滅ぼそうとするのですか?』
彼らはこう答えました。
『彼らは戦わない。彼らは我々の王に仕えない。
彼らが仕えるのは王の中の王である。
彼らは平和を行う。
彼らは我々の神を崇めない』 - 私は第二の天界から手を差し伸べて私の処女なる娘にして悩める大地マラにお辞儀をしました。
私は選ばれし者たちを連れて、ブラフマの手に委ねました。彼らは均整のとれた体つきで、足が速く、愛と善行において勇敢でした。
そして私は人間の息子たちに偉大な学問と知恵と平和と大きな喜びを与えました。 - マラは花開き、新しい蜜のように香ばしく、清らかで徳に満ちていました。
彼女の娘たちは太ももと足首を隠し、豊かな胸は表に見せず、言葉遣いは慎み深くありました。 - 彼女の息子たちは早起きで、豊作をもたらし、喜びの歌を歌い、踊り明かしました。
このように、私の愛する者が人間の歩むべき道を形作ったからです。彼らの子孫は果樹園の甘い花々のようであり、赤いクローバーの香りのようでした。
私は彼らに言いました。
「恐れないでください。あなたの息子、娘たちは大きな栄光となるはずです。
あなたの妻の産み月を数え、出産が近づいたら喜びなさい。なぜなら、それが私とあなたの果実だからです。 - 彼らは幼い者たちに手を叩いて喜び合うことを教えました。
私は彼らをこのために創造したのです。
大地よ、歌いなさい!
あなたの頭を高く上げなさい。
私は愛する者たちに言いました。
『私の場所は栄光と甘美な愛で満ち溢れており、素晴らしい喜びで輝いているのです。誰もその感情を抑えられませんでした。まるで子馬や子羊が戯れるように、彼らが絶えず跳ね回る姿はこの上なく愛らしかったのです。 - これは私の良き創造物であり、私の選ばれし者たちにとって至福のものとなりました。
これは私の選ばれし者たちの時代において、平和な時代であり、私の美しい地球でした。
そこには戦争も涙もなく、飢えも渇きもなく、飢饉もなく、荒廃した畑もなく、病気も悪しき病もなく、呪いも誓いもなく、嘘もなく、欺瞞もなく、苦難も辛い労苦もなく、太陽の下に悪しきものは何一つありませんでした。 - 『あらゆる光』である私ジェホヴィがお話しします。
彼らは私の言葉を聞いていたのでしょうか?
人間は創造主である私をどのように評価していたのでしょうか?
人間は私の愛する者のもとに、そして私の戒めを守る者のもとに行ったことがあるのでしょうか?
人間は私の選ばれし者たちの手にある美しき地球を見たことがあるのでしょうか? - おお、人間よ!
あなたは何て愚かなのでしょう!
あなたは暗い隅っこに行って『なんと暗いことか!』と言っているのです。
あなたは私の敵の前に立って『なんと虚しい創造物だ!』と言っているのです。
あるいは、私に仕えない者たちの所を探し回っては『惨めな世界だ!』と言っているのです。
私を憎む者たちの所に行っては『なんと醜悪に互いに殺し合っているのか。ジェホヴィがもっと良いように創造物を創っていればよかったのに!』と言っているのです。 - あなたはこう叫んでいるのです。
『地上に幸福などない。すべては悲惨と苦しみと痛みと死ばかりだ!』
これがあなたが創造主に対して下している評価基準なのです、人間よ!」
あなたはこう言います。
『地上には平和も喜びも愛も協調もない!』 - 頑固な人間よ!
反抗的で、狭量な判断力しか持たない人間よ!
ああ、あなたたちが清らかな高い場所に立ち、その上で評価できればよいのに!
あなたたちは私を信仰する私に選ばれし者たちを正しく評価したことがあるのですか!
どうして、あなたたちは自分を尊んでいるのですか?
どうして、あなたは自分を何よりも先んじるのですか?
欲望と自惚れに浸っている者以外で、私という存在を否定した者を見つけられましたか? - 至高の存在以外に、あなたの評価基準はどこにあるというのですか?
あなたは最低の存在について何を議論しているのですか?
もし私が自分で至高の存在と名乗ったら、あなたはさらに満足するのですか?
もし悪魔が自分を最低の存在と名乗ったら、あなたは納得するのですか?
それとも、人間は至高の存在や、最低の存在について何も語ってはならないのですか?
そういった存在は存在しないとでも言うのですか?
そして、それらに名前など無いとでも言うのですか? - あなたの邪悪な手は、私の選ばれし者たちに向けられ、彼らを死に追いやろうとしています。
あなたが地上を血で覆い尽くし、あなたの手が破壊によって疲れ果て、あなたの幼子たちが食べるものさえなくなった時、あなたはこう祈るのでしょう。
『ああ、御父よ、あなたの幼子たちをお助けください!』」 - 私はこうして話し終えました
【23章】
- チンはジェホヴィの御言葉を語った後、こう言いました。
「彼らは快楽と、そしてあなた、世俗のものを求めました!
彼らは王や富める者たちに平伏し、その結果がご覧なさい、この悲惨さです!
王は言いました。
『我に仕えよ。槍と強い弓矢を携えて私と共に来るがよい。
我は汝に大いなる喜びを与えよう。
汝は我が敵を屠り、我は汝に褒賞を取らせる』 - そして彼らは王に仕えるために馳せ参じ、彼らは私の罪なき者たちの血で手を洗いました。
王が『勇敢だ!立派な殺戮者だ!』と言うと彼らは喜び、手厚い報償を受けました。 - 私は言いました。
『あなたたちは間違った道を歩んでいます。
私だけを崇拝しなさい、なぜなら、私こそが善良なる喜びだからです。
あなたたちは互いに殺し合うゆえに、土地は耕されず、飢えと貧困に苦しんでいるのです』
すると彼らはこう聞いてきました。
『ジェホヴィはどういった報酬を与えてくれるのですか?
それは王よりも多いのですか?』 - 人間よ、ここにあなたの弱さがあるのです!
あなたは言います。
『しばらく待ってください。まずはあの人間に仕えてから、ジェホヴィに仕えます』 - あなたは兄弟の死から何を得るというのですか?
人間の金銀財宝を全て手に入れて、それであなたに何が残るというのですか? - 見なさい、私と私が教える道を選ぶ者たちでさえ、あなたは平和に生きさせようとはしてくれません。なぜなら、彼らはこう言っているからです。
『私の王は創造主です。私は創造主にお仕えします』
それに対して王はこう言います。
『彼らを討伐せよ!皆殺しにせよ!
彼らは我よりもジェホヴィを崇めている!』 - そしてあなたはこう言います。
『王に仕え、敵を殺すことは、とても素晴らしく健全なことである。
人を殺すことで国に尽くすことは、大変な栄誉である!』 - しかし、私の愛する者の声が私のもとに届きました。
私の羊たちは狼から逃げ、豊かな牧草地から追い払われていたのです。
ご覧なさい、私は彼ら、平和と徳と慈愛を愛する者たちのもとにやって来たのです。
私の手を彼らに差し伸べて強大な力を、そして私の言葉を与え、死なせません。 - 私は彼らを呼び集めます。
彼らは再び顔を上げて、私の臨在に喜び踊ることでしょう」 - ジェホヴィの御声がチンに届いた後、チンは遠く各地を旅しました。
その並外れた知恵ゆえに、学者や各国の王までもがチンを招聘しました。
彼はどこへ行っても同じように、平和と愛を説き、戦争に反対しました。 - チンは3年間旅をして、天地万物の中で創造主こそが至高の存在であると説き続けました。
その後、彼は140日間休息を取り、幼子のように眠り、子供が話す以上のことは何も語ろうとはしませんでした。 - その時、チンにある変化が起きました。
彼はまるで別人のようになり、もはや神ではなくなったのでした。
その後、彼は立ち上がり、こう言いました。
「人類の創造主たる私の御父が呼んでいます。
私は彼の御方の声を聞きます。それは私の心の中で燃え盛る火のように、私を突き動かしています。それは苦痛ではなく、偉大な力によって突き動かされるようなものです」
創造主はこう仰せになりました。 - 「私の息子チンよ!私の息子チンよ!
私の家が燃えています!私の幼い子たちが炎に包まれています。
チンよ、彼らのところへ行きなさい。彼らは恐怖で震え、どうすればよいか分からずにいます。
地上の王たちは彼らを無法者扱いにしました。彼らは追討され、飢えに苦しんでいます。
チンよ、彼らのところへ行きなさい!
なぜなら、私があなたをこの世に生み出したのはそのためなのですから。
あなたは彼らにとって私の声となるのです」 - チンは言いました。
「ジェホヴィはこう仰せになりました。
『家に残ったままで、誰に火を消すことができますか?
火を消そうとするならば、外に出て水がある場所に行きます。
私の民を私の敵の家から出してあげなさい。
彼らに清らかな水の泉を与えなさい。彼らは喉が渇ききっています。
彼らにこう言いなさい。
『ジェホヴィは生きておいでです!
その愛は満ち溢れています。枯れることのない私の泉に来なさい。
ここに来て、私の息子チンが語る契約の話を聞きなさい。』」 - 全能なるジェホヴィよ、あなたに誓います!
あなた以外に他に神はおりません、創造主よ!
あらゆる光、最も栄光ある御方よ!
あなたこそ私の王です!
聖なる、聖なる、常在する御方よ!
ああ、私の導き手、至高なる導き手よ!
昇る太陽の中であなたに敬礼します! 正午の最も光が力強い輝く中で!
そして、美しい夕日の中で! - 私はあなた以外に何も知りません。
この最も厳粛な誓いをあなたに立てます、おお、ジェホヴィよ!
あなたの神聖にして最も賢明な天使たちをお呼びください。
あなたの記録を司る天使たちを!
彼らが、私の創造主たるあなたに立てる誓いの言葉を聞いてくださるでしょう!
彼らが、そのことを天界の書に書き記してくださるでしょう、おお、私の主よ!
そして太陽に、月、地球、そして星々が存在する限り、あなたに対する私の誓いは私が守るべきものとしてあり続けるでしょう。 - あなただけが私の王であり、あなただけが私の神にして、天界の統治者です。
私は他の全ての王や神々、将軍、そして偉大な統治者を拒絶します。
私は彼らの誰にも跪いたり、崇めたりしません、永遠に。
私チンはそれを伝えます」 - 偉大なる霊魂よ、私はあなたに誓います。私はこの世が終わる時まであなたに拘束されます。
私は戦争をしたり、促したりせず、永遠に平和を誓います。
たとえ彼らが私に強要し、拷問し、あるいは殺害しようとも、私を屈服させることはできません。
あなたがこの地上に生み出したいかなる男女子供から、一滴もその血を流させません。 - 私は、地球や太陽、星々でさえあなたの手のひらのくぼみを満たせないほど広大な全人格のあなたに誓います。私はあなたのようにならんとすることを、おお、ジェホヴィよ。
あなたが望まれるように、全ての人に公平に接し、善を行い、寛容で、永遠に怒りを抱きません。そして、あなたに選ばれし者たちと全ての財産を等しく分かち合います、おお、ジェホヴィよ。 - 挫折した者を立ち上がらせ、苦しむ者や無力な者を救い出し、いかなる人にも悪や怒りをもたらさないことを誓います、永遠に、ジェホヴィよ。
私を虐げる者にも善を行い、創造主であるあなたの道に忠実たらんことを。 - 私の血を以て、私の肉体の血管を介してあなたと永遠の契約を交わします。
あなたの秩序たる『ハイツペ』に背いて結婚しなことを誓います。
あなたに選ばれし者の血統を受け継ぐ者たちが私の相続人や、その後の相続人もそうすることを誓います、永遠に。 - 聞いてください、ジェホヴィよ。
私は新たな契約を交わします。それは天界の大宇宙に刻まれるでしょう。
私は力の限り善行を尽くします。
苦しむ貧しい人々の涙は、私の血管を灼熱の血潮となって流れるでしょう。
彼らが困窮している間は、私は座って休んだり、安楽を求めたり、財産を所有することもありません。 - 天界におわす御父よ、私を突き刺してください。
私の良心を剣よりも鋭く砥いでください。
貧しい人々や苦しんでいる人々のために働くよう私を駆り立ててください。
彼らに善行を施している以外で、私に安息を与えないでください。 - ああ、私の誓約が剣のように、創造主オーマズドたるあなたにお仕えする以外に平和など見つけられない剣のように、四方八方を向けていればよいのに。
そして、私が清らかで強く、賢く、生と死よりも速く、決して揺るぎない存在であればよいのに。 - 私の誓いがあなたに選ばれし者たちに届き、彼らのもとに私の声が聞こえんことを。
私の声は彼らにとって甘美で、初恋のように魅惑的であらんことを。 - あなたの忠実な子供たちが、隠れ家から出てきて怯えることのないように。
- 私は恋人のように彼らのもとへ行き、彼らの長きにわたる苦難と、あなたジェホヴィへの信仰に敬意を表して頭を下げます。
- 息子を失い、再び見つけ出した父親として、全一にして永遠の霊魂たるあなたの崇拝者である彼らをこの腕に抱きしめましょう。
- 泥の中で踏みにじられたバラの茂みのように、彼らがどれほどひどく苦しめられてきたことか、おお、ジェホヴィよ。
死ぬほど貧しく、ぼろをまとい、散り散りになってしまった。
しかし私は彼らを清め、新たな土地を与えます。彼らの歌と賛美の声は、地球全土を喜びで満たすことでしょう」
【24章】
- ジャフェスにおける古代の大都市は、ジョス(ティイン)と彼の悪しき霊魂たちが定命の人間達に戦争を唆したことで破壊されました。その大部分が廃墟と化していましたが、壊れた城壁の傍に立ち並ぶ数千もの都市が、国土全体に広がっていました。
- ジェホヴィはチンにこう仰せになりました。
「今こそ、私に選ばれし民にとっての好機です。
ご覧なさい、私の敵である偶像崇拝者たちを。彼らを見分けるには、その兵士たちを知ればよいです。彼らは今や弱っています。彼らは大戦での働きで疲労しています。
私の民を家から出させて、頭を上げさせなさい。 - あなたは彼らにこう言いなさい、おお、チンよ、あなたたちを恐れさせるようなジョスもなく、ホジョスもなく、ティインもなく、ポーもなく、ポーティインもいません。敵が休んでいる今こそ、私の息子、娘たちよ、立ち上がりなさい!
彼らは荒廃した土地に住み、そこに花を咲かせ、豊かに実らせることでしょう。
国土を追われた私の民を集めなさい。敵は傷つき病んでおり、その心は恥辱と絶望に満ちており、打ちひしがれています」 - チンはアションへ行き、多くの改宗者、信仰者の子孫、純粋なバラモン、ザラツゥストラ人の血統を引く人々、偉大なる全一神を崇拝する人々、神や主神を認めない人々を集めました。
そして彼は彼らを組織し、地面を耕すための鋤と鍬を発明しました。なぜなら、この道具は何百年もの間失われており、誰も作り方を知らなかったからでした。 - チンは彼らに言いました。
「これはとても良い哲学です。ジェホヴィの祭壇に頭を垂れるのに、食べ物と衣服が満たされるまで待つべきではありません。まず彼の御方の御前でお祈りし、歌を捧げてから畑に出て働きなさい。そうすれば、彼の御方はあなたたちを祝福されるでしょう。 - 異教徒たちはこう言います、『まず肉体を鍛、次に霊魂を鍛えよ』と。
しかし私はあなたたちにこう言います。
ジェホヴィはその二つを同時に創造されたのです。そして『まず肉体を養え』と言う者は、決してその後で自分の霊魂に目を向けようとはしないものです。 - あらゆることにおいて、霊魂を最優先させなさい。
創造主があらゆる創造物の上に君臨するように、人間の霊魂もまた、人間の創造物、そして実体界の肉体の上に君臨するべきなのです。 - ここに、あなたたちの祖先であるザラツゥストラ人の叡智の礎がありました。自分のために働く異教徒や偶像崇拝者にとって、肉欲の奴隷である以外に何があるというのでしょうか?
- ある人々は、愛、善行、そして正義により、霊魂を高めるために働いています。
そのような人々は、偉大な人間になるための正しい道を歩んでいます。しかし彼らが自分のために努力すると堕落が始まります。 - そういった者たちの領土は広大で、民も増えるかもしれませんが、そこには害虫が潜んでおり、遅かれ早かれ破滅が訪れます。
- 二つの行き過ぎた者たちが遭遇することは常に危険をもたらします。それは、莫大な富を持つ者と極度に貧困な者です。富める者は貧しい者に財産を与えるだけでなく、彼らのもとに行き、教え、成長させないといけません。
- これを行わない者は、ジェホヴィに祈ることがどれだけ無駄なことなのか考えるべきです。その者の祈りは天に届きません。
その者はまず貧しい人々に手を差し伸べなさい。それが自分の霊魂を開くことになり、そうすればジェホヴィはその者に手を差し伸べることができます。 - 人間は誰もが判断力を持っており、そして物事をあなたの立場ではなく、客観的な立場から見るようにしなければならないということを覚えておきなさい。
そのため、求められてもいないのに、自分の意見を他人に押し付けることがどれだけ不当なことなのかよく考えなさい」 - チンは選ばれし者たちの家族群を作りましたが、その数は200家族までと制限し、各家族に一人の司祭を置きました。しかしチンは1つの都市に暮らす特権を4000人にしか与えませんでした。
- チンは言いました。
「あなたたちは神々に苦しめられてきました。私はあなたたちを家族として自由へと解放するべく、創造主によってこの世に遣わされました。
私はただの人間です。私自身には何の権威もありません。
創造主であるエホヴィは、私の中で自由に暮らしています。あなたたちも同じようにできるのです。 - 彼の御方が私の中に宿っているため、この地はチンと呼ばれるでしょう。
これには時機というものがあります。
創造主が全人類のための平和の神殿を建て始められた時、私の名はそれを示す標識となります。 - ジェホヴィはこう仰せになりました。
「どうして人間は自分のことを誇りに思うのですか?
私はこの地上に誰一人として自分と同じ存在を創造していないのです。
人間は魂から肉体まで、あらゆるものの寄せ集めなのです。
その肉体について考えてみなさい。その肉体をどこから受け取り、どのように維持しているのしょうか。
髪の毛一本さえも、自分の力で作り出したものではないでしょう。ましてや、新しい素材から作られたものでもなく、永遠に繰り返し使われてきたものなのです。 - それなのに人間の心はその者自身のものではなく、最も単純な思考でさえもそうなのです。
人間は最初から最後まで借り物で作られているのです。なぜなら、私がそのように人間を創造したからです。 - 人間は、人間を創造した私を存在しないと思っています。しかし、そう思うことさえも他人から借りてきたものなのです。
人間は方々から少しずつ知識を集めてきて、そして自分の知ったことを宣言しているのです」 - チンは言いました。
「ある者が『私は正常な人間です。だから天使や人間のどちらにも私は支配されない!』と言ったとします。しかし彼はただ、同じことを言う狂人のように自慢しているだけなのです。
また別の者が『見るがよい、私の知恵を!最高の天使たちが私の中を駆け巡っている!』と言ったとします。しかしその者はそれが真実かどうかを知りません。彼らの誰も、脳裏に湧き出る泉を知りません。なぜなら、もし天使がそう言ったとしても、その天使も借り物の知識で作られているからです」 - チンは言いました。
「ある日、偉大な数学者に出会いました。彼はこう言いました。
『神も主神も天使もいかなる全人格もいない。この世のすべては無なのだ』
彼は私に一冊の本を見せてきたので、私はこう質問しました。
『この本は誰が作ったのですか?』
彼は言いました。
『私が作りました。
いや、私や布や装丁はしていません。言いたかったのは、この本に書かれている哲学を作ったのは私であるということです。
いや、哲学を作ったのではなく、見つけたのです。
いや、その哲学は失われていたわけではありません。言いたかったのは、私はその哲学に自分で辿り着いたのです。
いや、人は自分のことを導くことはできません。言いたかったのは、私は探求し、私にとって新しいものを見つけたのです』
結局のところ、その本で彼自身が書いたものは、ごくわずか部分だけだったのです」 - 私はその男の傍らに三人の天使が立っているのを見ました。彼らはその男を嘲笑っていました。
もし私が天使たちに尋ねたなら、彼らはこう答えたかもしれません。
『いや、それは私たちの考えでした』
もし私がさらに目を凝らしたなら、彼らの後ろにも天使たちがいて、同じことを主張しているのを見たのかもしれません。
しかし、そのような存在であっても、至高の存在ではありません。 - それゆえ、私はあなたたちに言います。
この世の全てのの物は至高の御方からもたらされるのです。
あなたたちは彼の御方をどのように呼んでも構いません。しかし『ジェホヴィが私に仰せになられた』と言う者は、全ての中で最も的を得た者です。
なぜなら、人間に与えられる全ての善良な知識は、その者に与えられたジェホヴィの言葉だからです。
それが天使によってもたらされたものであれ、他人を通してであれ、あるいはありふれた物体から得られたものであれ、全ては至高の御方からもたらされるのです。 - それゆえに、人間にも天使にも跪き、崇めてはならず、ただ至高なる御方であるジェホヴィだけに跪き、崇めなければなりません。なぜなら、彼の御方は想像しうる限りの至高の存在の頂点にして、象徴だからです。そして対照的に最底辺の存在は、梯子の最下段にある存在、すなわち闇、悪、邪悪、罪、死、悪魔と呼ぶ者です。
- 何もかもを人間や天使のせいにしてはいけません。なぜなら、彼らは第一の原因でもなければ、部分的にしか責任を負っていないからです。全ての善きもの、高尚なもの、最良のもの、賢明なものはジェホヴィに帰し、全ての悪しきもの、暗きもの、邪悪なもの、卑しいものは悪魔に帰しなさい。
- これらの言葉によって、あなたたちは互いの真意を理解し合うことができるでしょう。そして、自分の心を見つめ、この二つのうちどちらに最も心が傾いているかを理解することは容易なことです。
- 魂は、上にも下にも伸ばすことができる葡萄の木に例えることができます。葡萄の木が上向きに伸びているか下向きに伸びているかを知りたいなら、香りを嗅ぐのではなく、果実を見なさい。
ある人々は熱心に祈っているのに、善行に関しては何も実を結ばないのは、香りだけが豊かな葡萄の木のようなものなのです」
【25章】
- チンは言いました。
「ある者は、自分が金持ちになるまで貧しい人々を助けるのを待っていました。
またある者は天使が自分に霊感を与え、奇跡を起こしてくれるまで、無知な人々に教えるのを待っていました。
またある者は大勢の人々が参加するのを待っていました。
またある者は別の何かを待っていました。
そのような人々には気を許さないようにするか、彼らを藁をも計量できる秤にかけなさい。 - ジェホヴィの息子や娘たちは、前進し続けます。
彼らは言います。
『これは最高で最良なものです!
私はそこに入りましょう!
たとえそれが達成できなくても、私は(自分の役割としては)失敗していません。 - 常に物事の根本を考えなさい。
ジェホヴィはこう仰せになりました。
『私は全ての生き物を、それぞれ自分の種族を生み出すように創造しました。
あなたたちは結婚相手を選ぶ際にそのことをよく見極めて、あなたたちの選択にとって普遍となる至高の霊感についてよく考えなさい。 - 男女に関する至高の御方の霊感については、その言葉ではなく、その成果で判断しなさい。なぜなら、世界の成長は、大半は賢明な結婚の果実によって成し遂げられるからです。
- チンは言いました。
「私は、人々が知らない束縛について宣言します。というのも、それは次の世界に関するものだからです。それは、現世における利己的な子孫の誕生です。なぜなら、こういった子孫が闇の中にいる限り、彼らは昇天できないからです。 - 同様に、私は、自己犠牲の精神をもって結婚し、絶えず他人に喜んで善行を施す者たちに、天界での栄光を宣言します。なぜなら、彼らは善行によってジェホヴィに栄光をもたらす子孫を生み出しているからです。
- このために、あなたたちの先祖に割礼の印が与えられたのです。それは、信仰者の女性たちが偶像崇拝者によって惑わされないようにするためでした。しかし、あらゆる予防策を講じたにもかかわらず、多くの者が肉の誘惑に負けて堕落してしまいました。
彼らの子孫は人格の姿を見失い、彼の御方を信じられなくなり、ますます深い闇へと沈んでいったのです。 - 労働で鍛えられた手は、傲慢な女のふっくらとした手よりも優れた子孫を生み出すでしょう。後者は欲情の魂を持ち、その子孫は苦さと甘さが混在したような魂を持つことでしょう。たとえ今は甘くても、いずれは苦いものとなります。
- あなたの子孫のことを考えなさい。その者に、秩序正しく統率の取れた家を見せなさい。そうすれば、その者は地球と天界の規律を理解し成長するでしょう。
- 父親は万事において主導権を握り、母親は副主導権を握り、父親の不在時にはその代理を務めるものとします。
- 各家族はそれ自体が一つの王国となるべきですが、たとえ優位な立場にあっても、何人も暴君であってはいけません。
- 全員が着席するまで食卓に座ってはいけません。
全員が着席したら、こう言いなさい。
『おお、ジェホヴィよ、あなたの御名を讃え、この贈り物を頂きます。
あなたの栄光のために、私たちと共に永遠におられますように、アーメン!』 - 言葉の中で一番の美徳は、若者の心の規律にあります。天の天使たちの規律に倣って、彼らをしっかりと導くことです。そして、彼らがあなたと共にそれを繰り返すことによって、あなたのことを本心から敬うことを学びます。
- 息子や娘たちがまだ幼い頃、あなたは彼らに働くことを教えなさい。何よりも、地獄の淵に繋がる怠惰に陥らないように、彼らを励ましなさい。
- しかし、彼らに過度の負担をかけたり、苦痛を与えたりしてはいけません。彼らはあなたの栄光となるべき存在であり、ジェホヴィがあなたに託された命なのです。決してあなたの自己顕示のための命ではなく、彼らの喜びと聖なる喜びのために遣わされた命であることを覚えておきなさい。
- 彼らは歌い、演奏し、手を叩き、喜び、踊るでしょう。これらは創造主への感謝の表れであり、そうすることで地球は彼らがこの世に生まれたことを喜びます。
- 労働は喜びであり、苦労は大いなる喜びであると覚えておきなさい。もしそうでなければ、あなたの子どもたちや、あなた自身にとっても、人間を野獣のように堕落させることになります。
しかし、あなたは彼らをいくつかのグループに分け、彼らの労働を遊戯と、そして教訓に満ちたものとしなさい。 - あなたの幼い子供たちでさえ、あなたがただの兄弟であり、年長の兄弟であり、同じ創造主の子どもたちの一人に過ぎないことを学ぶでしょう。物を貯め込み、自分の所有物として独占する者は、身内の肉と血を喰らう人食い族と同じであると子供たちに教えなさい。
- 何よりもまず、あなたたちは、創造されたこの体を神聖で清く保つことを教えなければいけません。なぜなら、そこに健康と力が宿るからです。
汚れは病んでいることであり、病んでいることは汚れていることでもあります。
ご覧なさい、異教徒や偶像崇拝者、そして肉血を喰らう者たちを。
彼らは健康体でいる時でさえ、死体のような悪臭を放っています。
彼らの肉体は充血して膨れ上がり、その息は犬小屋のように臭いのです。どうして彼らの魂が清らかで、理解力があり明晰であると言えますか?
彼らは自分の魂を、自分で腐敗した悪臭の巣窟にしてしまったのです。 - それなのに彼らはこう言います。
『愚かしい!
私はジェホヴィを見たことがない!
全人格なる存在など知らない!
私は全ての魂を認めない!
霊魂はどこにあるのだ?
私には見えない。もしくは、その声を聞いたことがあるのか?
私は聞いたことがない。偉大なる霊魂がいるというなら、私の前に現れてみよ!
私はその者に会っていたいのだ』
そうです、彼らは汚れた体でそう言うのです。彼らが純粋な心を持つようになれば、この言葉がどれだけ虚しいかを理解するでしょう。
【26章】
- ジェホヴィはチンにこう仰せになりました。
「今こそ、私は各国を奮い立たせましょう。あなたを通して、私は自分の王国の栄光と支配を示しましょう。 - なぜなら、あなたは足を使わずに歩き、手を使わずに書き、耳を使わずに聞き、目を使わずに見ることができるからです。そして、鳥のように空高く舞い上がり、自分の意志でどこへでも行くことができるでしょう。
- そしてあなたは雷雲を呼び寄せ、その声で雨を降らせることができるでしょう。
- あなたはこう言いなさい、『雲よ、去れ』と。
すると太陽がそこに輝きます。 - あなたは飢えている人々の所に行ってください。そうすれば、あなたの声は私のもとに届き、私は天界から天界の食料を降らせます。
それであなたの民は食べて満たされるでしょう。 - あなたは炉に入れられようとしている死者たちの上に手を伸ばしなさい。そうすれば、彼らは再び生き返り、完全に癒されるでしょう。
- なぜなら、こういったことができるのは、あなたが私の僕であり、私の戒めを守ってきたからであり、その証なのです。
- あなたは彼らにこう言いなさい。
『ご覧なさい、私はただの人間である!
なぜあなたたちは神々の前に平伏して崇拝しているのですか。
おお、あなたたち全員よ、私は命じます。私を崇めてはいけません。そして私のことを、創造主である御父の意志を遂行すべく振る舞う一人の人間として呼んでください』 - 誰であれ、彼の御方と一つになる者は、多くの奇跡が可能となります。
しかしながら、私はあなたたちに告げますが、それは実際には奇跡ではありません。むしろ、行動と真実を以てジェホヴィにお仕えする正義の人々に与えられた可能性なのです」 - ジェホヴィはチンにこう仰せになりました。
「これらのことを多くの人々に示したとき、あなたの地上での時間は終わったと悟りなさい。なぜなら、私はあなたを夢現の状態にし、人々は嘆き悲しみ『ああ、チンは死んだ!』と言わせるからです。彼らはあなたを覆い、死者の慣習に従ってあなたの体を炉に投げ入れるでしょう。
火は燃え上がり、彼らの目の前であなたの体を焼き尽くすでしょう。しかし、あなたは事前に人々に炉の傍で見守るように命じておきなさい。
あなたは焼かれた体の元素を集め、それで元に戻り、再びその体に入り、人々の前で説法をしなさい。 - それゆえに、あなたは準備をしなさい。
これらの預言を事前に伝えておき、人々に証言させ、王や女王の図書館に記録させるようにしなさい」 - チンは、真のザラツゥストラ人の信仰者たちの集会において、オーマズド(ジェホヴィ)が語ったことを伝えると、多くの人々は激しく泣き崩れました。
- これより前に、チンがジェホヴィの御声に従って旅をして説法をしていた頃、彼は多くの地域の王や君主、富裕層を訪ねていました。そして、彼らの統治や財産について叱責しながら語っている間、彼らは誰もチンに抗弁しませんでした。
しかし、チンが去った後、王や女王、貴族たちはこう言いました。
「チンは危険な教えを説いていた。彼は『創造主以外に王を持つべきではない。創造主こそが万物の王である』と言ったのだ。
これは我々の奴隷たちに反旗を翻させることになるのではないか?
もし、民が王を無視して自分たちの組織を作ってしまったら、王はどこから税を得ればよいのか?」 - ディアスや他の神々に仕える神官や、そして神々が砂盤に文字を書く神殿(神託所)の預言者や、さらに数え切れないほどの数多くの予見者や預言者がいました。チンの教えが真実であるかどうかを確かめるため、王たちは警戒を怠らず、霊魂たちに問いかけました。
- ある霊魂は言いました。
「全人格などいない。見るがよい、我々は星や太陽を訪れ、遠くも近くも見て回ったが、いかなる創造主も全人格も見たことはなかった。
かつて定命の人間であり、天地であらゆる力を持つに至ったティインを除き、偉大な霊魂など存在しない」 - その他の霊魂はこう言いました。
「地上にないもので、天界にあるものなど存在しない。どうして我々がオーマズドを見つけることなどできようか?
チンとその教えに時間を費やすべきではない。彼は汝らの王国を滅ぼすであろう。
食べ、飲み、欲望を満たせ。それこそが、天地において全てであり、本質なのだ」 - アエンナポー州の首都アションの王であるティジーは、偉大な哲学者であり、かつてチンの説法を聞いて深い感銘を受けていました。
その後しばらくして、魔術師のルー・シンがティジーのもとを訪れると、ティジーは魔術師にチンの奇跡について語りました。
魔術師は王の話を聞くと、王は魔術師に対して、その手品以外に、チンのように言葉で叡智を示せるのか、もしできるとしたら、どうすればそれができるのかと質問しました。 - 魔術師のルー・シンはこう答えました。
「ティジー王よ、あなたは自分の下僕である私をどれほど困らせているかご存知ありませんか。なぜなら、私たちは若い頃、魔術師としての天賦の才能があることを知ると、熟練者のもとに行き、教団のあらゆる秘儀を教わります。そこで、暗示、言葉、印、文字など、いかなる方法であっても、私たちの秘儀や秘密を一切漏らさないという、非常に厳粛な誓いを立てるのです。その誓いを破れば、私はあなたに言えないような恐ろしい罰を受けることになります。 - そこでですが、王よ、私はあなたの質問に全て答え、あなたにお仕えしたいと願っていますが、どうすればよいでしょうか?」
- 王は言いました。
「私は王であるゆえ、貴殿の誓いを解こう」
魔術師は言いました。
「王よ、私が戸口から戸口へと物乞いをする身であっても、私の力に比べれば、あなたの力は風に吹き飛ばされる籾殻のようなものです。
私の神秘的な領域には、あらゆる支配権の鍵があります。私と私の術は、人間だけでなく、死者の霊の支配に関するものもあります。それゆえに、あなたに私の誓いを解くことはできません、なぜなら、私自身でさえ解くことができないのだから!」 - ティジー王は言いました。
「それならば、汝はあらゆることを、特に誓いも解けないのだから、私の役には立つまい」
何か報酬を得たいと思っていたルー・シンは言いました。
「王よ、申し上げますが、私は全てを明かすことはできません。私の術の真髄は、その秘密と神秘に大きく依存しているからです。
しかしながら、私は大変貧しいので、あなたにその手掛かりをお教えしましょう。もし、あなたが熱心に努力すれば、残りの部分も習得できるでしょう」 - そこで王は彼に自分の前でその術を披露するよう命じ、運命(霊魂)が定める所に従って褒美を与えると約束しました。
ルー・シンはすぐに術を披露し、食卓や椅子、机などを動かしたり転がしたり、見えない場所から声を発したりするなど、驚くべき術を次々と披露しました。
彼はまた、杖を蛇に変えたり、王の肩に鳥を止まらせたり、水をワインに変えたりもしました。 - 王は彼に言いました。
「こういったことは全て、私は幼い頃から見てきた。
貴殿はここにいたままで、私の隣の家の様子を見ることはできるのか?
できるならば、今すぐそれを見せてみよ」 - 魔術師は言いました。
「分かりました、王様。しかし、その術を行うには聖霊の状態(トランス状態)に入らなければならず、その代償は高額です!」 - 王は言いました。
「貴殿に報酬を取らせよう。だから聖霊の状態に入るがよい」 - ルー・シンは目を上に向けて身震いし、まるで死にゆく者のように横たわると、王に質問を促しました。
- 王は言いました。
「ここにチョークがある。私の石板の一番上、玉座の左側にある文字を床に書き記してみよ!」
すると魔術師は正しくその文字を書き記しました。
王は再び、彼が目を使わずに、遠く離れた場所を見通す能力持っているかどうか、様々な方法で試した後、こう言いました。
「貴殿は死者の霊魂も見せることができるのか?」 - ルー・シンは言いました。
「確かにできます、王よ。しかし、そのためには創造における崇高な境地に入らなければならず、さらに高額になります!」 - 王は言いました。
「貴殿に報酬を支払うと言ったではないか?
さあ、すぐに創造における崇高な境地とやらに入るがよい!」 - ルー・シンはそれから暗い隅に行き、床に横たわり、舌を飲み込み、まるで完全に死んだかのように身動き一つせず静止しました。
やがて、薄い煙のような光が体から立ち上り、少し離れたところで漂い、その光の中から声が聞こえてきました。 - 「死者の霊を呼び出す者よ、汝は何者だ?
気をつけるがよい!
我の傍らに横たわる、この冷たく硬直した体を持つ者は、不死なる神々の後継者の一人である!
地上の人間よ、汝は何を望むか?」 - 王は言いました。
「お前は誰だ?」
声は答えました。
「私はジョス、ティインである!
天地の支配者!
偉大なる霊魂の化身!
万物の創造主である!」 - 王は皮肉を込めてこう言いました。
「ティインよ、よく来てくれた。
お前が私の場所を神聖な場所にしてくれたおかげで、私は最も祝福された人間の一人となった」 - すると、その霊魂は人間の姿となって王の前に立ちました。
魔術師の体は、すぐ傍の床に横たわったままでした。
霊魂は言いました。
「王よ、何が汝を悩ませているのか?
話してみるがよい、我が汝に答えてやろう。なぜなら、我はあらゆる叡智と真理を体得した者だからだ」 - 王は言いました。
「どうして、お前はこれまで私の前に姿を現さなかったのだ?
どうして私はお前の真の存在について知らずにいたのか
この問いに答えみせよ。なぜなら、これは私がこれから聞こうと考えている多くの質問における共通事項となるからだ」 - その霊は言いました。
「我が息子ティジーよ、我は汝が幼い頃からずっと傍にあり、見守ってきた。なぜなら、汝は全世界で最も偉大な王となる者だからだ。
そうだ、汝には成し遂げるべき大いなる役割がある。もし汝が王国を広げたいと願うなら、もしくは、大戦に勝利したいと願うなら、我がその道を示してやろう。
あるいは、もし汝が別の女性を妻に迎えたいと願うなら、我がその女性を見つけてあげよう」 - 王は言いました。
「貴殿は偉大な天界の支配者と信じているが、お前はまだ私の質問に答えていない。さらに、お前は私の王国や、別の女性を妻に迎えることについて聞いてきたが、それは私が望んでいることではない。それに妻のことだが、私はまだ一人も妻がいない。したがって、別の妻を望むわけがない」 - 霊魂は言いました。
「汝は我を何者だと言うのか?」
王は答えました。
「お前が愚か者なのか悪魔なのか、私には見当もつかない。
多くの魔術師を通して、お前のような者、まさにお前そのものを見たことがあると思う。
ただ残念なことに、ここで全ての知識は尽きてしまうのだ」 - 霊魂は言いました。
「汝は運命が定めたものを支払うと言ったな。
では聞け、王よ。汝はルーシンに金貨四枚を与えるがよい。そうすれば、我は全てを説明してやろう」 - 王はそこで四枚の金貨をルーシンに投げ渡し、約束通りの知識を要求しました。
すると霊魂は言いました。
「汝は誓って、このことを誰にも明かさないと約束するか?」 - 王は言いました。
「私は、お前が教えてくれることを何一つ漏らさないと固く誓おう」
霊魂は言いました。
「では、王よ、知るがよい。
我は魔術師ルーシンである!
長年の修行によって、魔術師は魂を肉体から離れさせ、望むあらゆる姿形となって現れることができる。我を試してみるか?」
王は言いました。
「ハ・ゴウツェの霊魂を見せてほしい」 - その霊魂はルーシンの体に戻り、まもなくして王の前に現れると、確かにその姿はハ・ゴウツィの霊魂のようでした。
王は言いました。
「確かに王のようだ!」
霊魂は答えました。
「さあ、人間よ、これが哲学の終着点だ。
見よ、我もまたルーシンである。ある者は一つの霊、ある者は二つ、ある者は三つ、ある者は四つの霊魂を一つの肉体に宿している。
しかし実際は、ただ一つの人格しか存在しないのである」 - 王は質問しました。
「肉体が死んだとき、魂はどうなるのか?」
霊魂は答えました。
「全ての人間にとって、二つのうちどちらかが可能である。一つは存在しないものへと消滅し、空気のように、燃え尽きた火の熱のように散り散りになって虚無となるか、もう一つは、生まれる前の子供の体に再び宿り、再び生きるかのどちらかである。 - こうして全ての人間はこの世に生まれた。死産の子供は、その体に魂が定着できなかった者である。
新たな創造は存在しない。今、地上で生きている人々は、常に生きてきた者たちであり、それ以外の人々はいない。
彼らは老いて衰えた体を離れると若い体に入り、永遠に何度も何度も生き続ける。
世界のいかなる男女子供も、それ以上、それ以下の何者でもない」 - 王は尋ねました。
「では、人間が一生のうちにすべき最も崇高で最善のこととは何であろうか?」 - 霊魂は言いました。
「食べたり飲んだり、眠ったり休んだり、そして多くの子孫を儲けることを楽しむことだ」 - 王は言いました。
「もし霊魂が転生しないとしたら、どれくらい生き続けるのだろうか?」
霊魂は答えました。
「もし肉体が灰になるまで焼かれたなら、それで終わりである。
もし肉体が埋葬され、腐敗して土に還るなら、そこでも終わりである。
もし肉体が防腐処理され、良好な状態に保たれているなら、霊魂はその肉体に戻り、その肉体が塵になるか、灰になるまでそこに留まる。その時、霊魂は解放され、再び転生するか、あるいは完全に消滅して永遠に消え去るかのどちらかになる」 - 王は尋ねました。
「お前と同じように、全ての魔術師も同じなのか?」
霊魂は答えました。
「汝は金貨を四枚しか与えていない。もっと聞きたいなら、代価は高くなる」
王は言いました。
「私は運命が定めるままに支払うと言っただろう。だから続けよ」
霊魂は言いました。
「全ての魔術師も同じである」
王は尋ねました。
「では、お前がチンのように説法できるか、今すぐ見せてみよ」 - 霊魂は言いました。
「汝は我に質問するがよい。そうすれば、我はそれについて説法しよう」 - 王は多くの質問をし、霊魂はそれについて語りました。
最後に王はこう言いました。
「もう十分である。褒美を与えよう。
お前はもう行くがよい。お前の説教や教えなど、何の意味もない。
今度は別の魔術師を探しに行く。なぜなら、多くの者から話を聞ければ、真実に辿り着けるからだ」
【27章】
- ティジー王は別の魔術師ワンジョを呼び寄せ、彼にその力を披露するよう命じました。
ワンジョは高額な報酬を要求しましたが、王はそれを支払うことに同意したため、ワンジョは術を披露しました。
まず、彼は閉じたガラス瓶の中にバラの花を出現させ、次に、杖から小さな蛇を作り出し、鳥を呼び寄せて王のために歌わせました。それから酢を水に変え、石板に触れることなく、しかも石板が王の足元にある状態で文字を書きました。 - その後、彼は同様の奇跡をさらにいくつも披露した後、こう言って報酬を要求しました。
「天使たちは去ってしまいました。これ以上は何もできません」
王は言いました。
「彼らを呼び戻す力はないのか?」 - ワンジョは言いました。
「いくら払えますか?」
王は答えました。
「金貨三枚だ」
するとワンジョは言いました。
「ああ、それならば、ご覧ください、彼らがまたやって来ました!何をお望みですか?」
王は彼に死者の霊魂を見せてらもい、彼らと話がしたいと命じました。 - ワンジョはルーシンが以前に披露した場所に入り、そこに横たわり死んだかのようなトランス状態に入りました。
すると間もなく、白い衣をまとった天使が現れ、王の前に立って言いました。
「最も偉大な王よ、汝は一体何を望むか?
見よ、我は女神オエトゥ・ヘントである。上天の玉座より来た。
もし、汝が戦争での勝利、あるいは莫大な富、あるいはより多くの美しい妻を望むのであれば、我が絶大なる力によって汝に与えよう」 - 王は言いました。
「女神よ、あなたが私に会いに来てくださったことを、私は大変光栄に思います。しかし残念ながら、あなたが述べられたことはどれも私には当てはまりません。私は現世で何も望むものはありません。
シー・クアン王が住んでいる天界の場所について、私に教えてください」 - 霊魂は言いました。
「彼は汝の友人か、それとも敵なのか?」
王は答えました。
「彼は私の宿敵でした」
霊魂は言いました。
「我が汝に尋ねたのは、彼が汝の友か敵か、である。なぜなら、我は地獄で激しい苦痛に喘ぐ一人のシー・クアンを見たからだ。そして、天国にもう一人のシー・クアンを見た。
だから、我は地獄にいる彼を連れてこよう」 - その霊魂は隅の方に移動した後、しばらくして戻ってきて『ああ、ああ、ああ、ああ、ああ!恐ろしい!悪魔だ!地獄だ!』などと叫び、まるでシー・クアンが苦しんでいるかのように、苦痛に喘ぐふりをしました。
- その後、王は実在したか否かを問わず、多くの様々な霊魂を呼び寄せると、彼らは全員やって来た。
最後に、ティジー王は言いました。
「さあ、天界で最も賢い神を連れて来てください。というのも、その神に質問したいのです」
そこで、その霊魂は再び隅の方に行った後、近づいてきてこう言いました。
「地球の人間よ!
汝が我を呼んだので来た。
我が来たことを汝が知ったならば、我が預言者ワンジョに金貨四枚を与えることを命じる」 - 王は言いました。
「最も正義なる神よ!
私は彼に払います。ですから、教えてください、人間はどこから来て、その運命は何なのかを」 - 霊魂は言いました。
「まず、地上の大気は元素という霊魂で満ちている。最も大きなものは人間のこぶし大であり、最も小さなものは地上にいる最も小さな昆虫よりも小さい。その大きさは彼らの知性を表しており、最も大きなものは人間向けに作られている。
これらの霊魂は地上のあらゆる大気、そして地上のはるか上空の天空のあらゆる空間を満たしている。
彼らは永遠に存在しており、始まりがない。 - さて、子供がまだ母胎にいる間に、これらの霊魂の一つが子供の中に入り込むと、そこからたちまちに人間の始まりとなる。
地上のあらゆる生き物も同様に生まれる。 - 王は尋ねました。
「人間が生まれる前に、これらの霊魂が浮遊している間、彼らは何を知っているのでしょうか?」
霊魂は答えました。
「彼らの多くは大きな知恵と狡猾さを持っているが、同時に大嘘つきで泥棒であり悪党でもある。
汝は魔術師のルーシンを知っているか?」
王は「はい」と答えました。
すると霊魂は言いました。
「さて、ルーシンはこれらの霊魂に取り憑かれているのだ。そして彼らは全員、死者の霊魂を装う大嘘つきである!
我は最上階の天界から来た、最も徳の高い女神である。
王よ、これらの霊魂は世界の災いである。彼らは魂を持つために、この世に生まれることを切望しており、転生する機会を得るために、人間を父性や母性へと駆り立てるのだ」 - 王は言いました。
「女神よ、あなたはとてもよく答えてくれました。
私はあなたの命令に従い支払います」
その後、その霊魂は去っていきました。
ティジー王は別の魔術師で、司祭の地位にあるハイ・ゴウを呼び寄せ、彼に術を見せるための報酬について交渉した後、術を行うよう命じました。 - ハイ・ゴウも他の者たちと同じように、素晴らしい奇跡を次々と起こしてみせました。
王は彼にも死者の霊魂を呼び出すよう命じました。
ハイ・ゴウは報酬について不満を漏らしたが、王から要求は必ず支払うと保証されると、魔術師は同じ隅に行き、聖霊状態(トランス状態)に入りました。
すると間もなく、一つの霊魂が現れてこう言いました。
「王よ、ご挨拶申し上げる!
汝は征服を望むか、富を望むか、あるいは多くの女性を望むのか、何なりと申すがよい。
我は惜しみなく与えよう。
我は偉大なるザラツゥストラの霊であることを知るがよい」 - 王は言いました。
「偉大なるザラツゥストラよ、よくぞお越しくださいました。しかし、残念ながら、あなたが挙げてくれたものの中に、私が望むものは一つもありません。
ザラツゥストラよ、教えてください。
人間の起源と運命は何でしょうか?」 - 霊魂は言いました。
「まず、王よ、太古の昔、太陽はあまりにも速く回転したため、その外縁部が剥がれ落ち、無数の破片となって四方八方に飛び散った。この破片が星や地球、そして月となったのだ。 - そして何百万年もの間、地球はただの石塊で、溶けるほど熱かった。しかしやがて冷え、地表の石は酸化して苔が生えた。そして苔は死んだ。
しかし苔の霊魂は転生し、草となった。そして草は死んだ。
しかし草の霊魂は生き続け、転生して木となった。 - その後、木は死んだが、その霊魂は生き続け、転生して動物となった。
やがて動物たちも死んだが、その霊魂は生き続け、転生して人間となった。
その後、霊魂はもはや転生することなく、平和のうちに昇天し、長い間安息を得た。
そしてついには太陽へと戻り、燃え尽きたランプのように消滅する」 - 王は尋ねました。
「では、あなた自身はどうなのですか?」
霊魂は答えました。
「私は、この世界を司るために太陽からやって来た、最初の太陽神である。
この世界は私の管理下にある」
王は尋ねました。
「では、今もなお太陽に留まっている、万物の根源なる存在とは誰なのでしょうか?」 - 霊魂は答えました。
「王よ、汝の質問は多いため、より多くの金貨を支払わねばならない」
王は霊魂に、金額に関わらず必ず支払うと約束しました。
すると霊魂は言いました。
「アフラ・オーマズドがすべての起源であった。しかし太陽がその表面を吹き飛ばした時、アフラ・オーマズドは粉々に砕け散り、地球を除く全ての星々に一片ずつ飛んでいった。
我は、ここが他のどの世界よりも大きく優れていたので、自らの意思でここに来たのだ」 - 王は霊魂と司祭から話を聞くのをやめて、司祭の地位にある別の魔術師グワン・リーを呼び寄せました。グワン・リーは報酬が支払われることを確信すると、早速その術を披露しました。
彼は他の者たちと同じように様々な術を披露しました。
その後、王はグワン・リーに死者の霊魂を呼び出すよう命じました。 - 司祭は死のトランス状態(聖霊の力)にかかる費用について謝罪しましたが、自分の要求が支払われることを改めて確信すると、隅の方に行き、身を硬く冷たくして昏睡状態に入りました。
- 間もなくして、天使が現れてこう言いました。
「見るがよい、王よ、我はブラフマーである。
もし汝が戦での勝利、あるいはより多くの富、あるいはより多くの女性を望むなら、我はそれを汝に与えよう。
我は汝に隠された宝物、豊かな鉱山、そして非常に魅力的な女性たちについて教えることができる。
また、汝の軍隊が敵を大虐殺して打ち負かす方法も教えることができる」 - 王は言いました。
「ブラフマーよ、私は大変嬉しく思います。しかし、あなたが言ってくれたものの中に私が望むものは何もないのです。
人間の起源と運命について教えてください」 - 霊魂は言いました。
「王よ、よく聞くがよい。生きとし生けるもの全ての者には二つのものがある。それは肉体と霊魂である。
死んだものにはただ一つ、霊魂しか存在しない。
王よ、汝は最初、石であった。それも非常に大きな石であった。それが朽ちて塵となった時、汝の霊魂は銀となり、非常に大きな銀の塊となった。しかし、銀が錆びて朽ちた時、汝の霊魂は金となった。そして金がすり減った時、汝の霊魂は動物の生命へと転じ、次に下等な人間、そして今のような高等な人間へと進化していった。
このようにして、人間は最初から何度も何度も転生を繰り返し、より高く、より高みへと昇っていった。
そして汝が今のように霊的に完成した時、二度と転生することはない」
王は尋ねました。
「この世を去った後、霊魂はどうなるのでしょうか?」
霊魂は答えました。
「汝はそこで、あなたの性的な伴侶、霊的な妻と出会うだろう。その後は、ひたすら性的な快楽に耽り、喜びに満ちた霊的な子孫で霊界を満たすことになる」 - 王は言いました。
「よろしい。汝は素晴らしい教えを持っている」
すると霊魂は去り、司祭もまた去りました。
王は別の司祭でバラモンの預言者であるツィインを呼び寄せました。
王は彼に尋ねました。
「あなたは王のために何を見せてくれますか?」 - 司祭は言いました。
「私は教団の儀式により、あなたが贖罪に対する代価、すなわち金貨二枚を支払うまでは、天地の秘密を一切明かすことはできません」
そこで王は彼に金貨を支払いました。
ツィインは言いました。
「あなたは富、あるいは戦での勝利、あるいは新しい妻を望みますか?
もしそうなら、言ってください。代価に応じて与えましょう」
王は言いました。
「ああ、ツィインよ、私はこれらの恩恵を何も望まない。
私に人間の起源と運命を教えてほしい。なぜ、私は存在し、その目的と終着点を知りたいのだ」 - ツィインは言いました。
「まず最初にブラフマーがいた。それは卵のように丸かった。
そしてブラフマーは割れ、殻は二つに分かれた。
一つは空となり、もう一つは大地となった。
それからブラフマーは地上に姿を現したが、彼が期待していたような一つではなく、千万、百万もの部分に分かれて現れた。
それから、それぞれの部分は生き物となり、木、植物、魚、鳥、獣、あるいは人間となった。これが、存在する全てであり、かつて存在した全てであり、これからも存在し続ける全てである。 - しかしブラフマーが世界を見渡すと、善人もいれば悪人もいることに気付いた。
そこで彼は言った。
『私は善人と悪人を分けよう』
そして、正義が行われるように、彼は全ての国と部族の者たちを自分の前に呼び集めた。
人々が集まると、彼はこう言った。 - 『地上を愛する者は、永遠に地上を所有する。たとえその者が死んでも、その者の魂は別の生まれていない子供に転生する力を持ち、再び生き返り、そして永遠に生き続ける。
そしてその者は地上で飲食や女性との性交、その他あらゆる快楽を存分に享受するであろう。なぜなら、それらは永遠にその者のものとなるからである』 - しかし、霊魂に喜びを見出す者は、霊魂に祝福されるであろう。その者は死後、再び転生して生き返ることはなく、永遠に天界に住み、天界の喜びを享受するであろう。
しかし、天界の喜びは地上の喜びとは異なるため、霊的な選択をした者は地上の人々のように生きられない。 - しかし、その者は世俗から離れて暮らし、断食と苦行によって肉体を苦しめなければならない。その者は結婚もせず、女性と暮らすこともなく、子供をもうけることもなく、地上でいかなる享楽も味わってはならない。ただ生きるためだけに生きるのである。なぜなら、地上は彼のものにあらず、彼もまた地上の者ではないからである。
そして、その者が肉体を苦しめれば苦しめるほど、天界における至福は高められるのである」 - さて、ブラフマーが地上の人々に二つの選択肢を示した後、さらにこう付け加えました。
「さあ、どちらを選ぶか決めなさい。一度選んだら、それが最終決定となる。
地上を選ぶ者は、子々孫々まで地上に属する者となる。しかし、天界を選ぶ者は、本人とその子孫にとって、それが最終的なものとなり、永遠に続く。 - ここで人間たちは選択を迫られた結果、見るがよい、彼らのほとんどが地球を選んだのである。しかし、数千年、数百万年後、ブラフマーはかつての布告を後悔した。なぜなら、地球が人で溢れかえり、罪深い存在が限りなく増えていたからである。
そこでブラフマーは洪水を引き起こし、そのうちの一千億人もの人々を滅ぼした。
そして、新たな裁きを下すため、ザラツゥストラをこの世に遣わしたのである。 - ザラツゥストラは再び天界の扉を開き、こう言った。
『この後、ブラフマーを選び、自らの肉体を苦しめ、地上を憎み、世俗から離れて生きる者は、この私が地上からも、そして地獄からも救い出すであろう。なぜなら、私は創造主に対して非常に大きな力と影響力を持っているからだ』 - 王よ、これが人間の起源と運命である。ある者は永遠に地上に生きるために生まれ、ある者は天界に生きるために生まれる。
しかしながら、全ての人間に道は開かれており、地上か天国か、どちらを選ぶかは自由なのである」
【28章】
- ティジーは長い間、多くの予見者、魔術師、予言者、そして司祭たちと共に調査をしました。その後で彼はこう言いました。
- 「全てが虚しく、全てが偽りである。
人間の起源と運命について、正しく答えてくれた者は誰一人とていない。
天使たち、あるいは何者であろうと、彼らは地上のことしか私に伝えることができないでいた。彼らは人間が見るものにしか見ることができないのだ。そして、この天使たちはルー・シンが言っていた、つまり魔術師の霊魂以上の何者でもないのかもしれない。
彼の体がトランス状態に入ったことを考えると、そう考えるのがもっともらしい。 - それゆえ、私はこれらの魔術師や司祭を追放する。彼らはこの世に何の益ももたらさないからである」
そこでティジーは自分の領内に布告を発し、魔術師と司祭たちに死刑を宣告し、領内からの追放を命じました。
こうして彼らはティジーの支配地から去っていきました。 - さて、偶然にも他の五大州でも、全く同じことを王たちはほぼ同時期に行っていました。それらの州とは、すなわち、ルン・ワン王統治下のシャン・ジ州、ロア・キー王統治下のガー州、アカ・ウン王統治下のサビンソウ州、ティ・シーヨン王統治下のゴウ・グー州でした。
これらの州はジャフェスの主要地となっていました。そして、これらの王たちは全員、同じような勅令を発布しました。そのため、魔術師や予見者、司祭たちは、その職を辞めるか、あるいはこれらの州の外の野蛮人が住む地へと行かざるを得なくなりました。 - ジェホヴィはチンにティジー王のもとに行くよう命じられました。
チンが王のもとに着くと、王は彼にこう言いました。
「数年前、私は貴殿の話を聞いたが、貴殿は実に深遠なことを語っていた。
再び私の前に来てくれたことを嬉しく思う。
貴殿に質問したいことがあるのだ」 - チンは言いました。
「以前、あなたが私の言葉を聞いた時、私を通して偉大なる霊魂が語っておりました。
今、私は十分に学び、彼の御方から私に、自分の知識に基づいて語るよう命じています。 - まず最初に、私はあなたと同じ人間です。しかし、人はそれぞれ異なる役割を持っています。あなたはここの領主であり、しかも善良で賢明な方だと聞いています。あなたがそうであることを私は願っています。そうでなければ、私が語ってもあなたは何も喜ばないでしょう。
私は、この土地をチンヤ(チンの地)と名付け、偉大なる霊魂を受け入れる人々を新たに確立するためにこの世に遣わされました。なぜなら、チンヤとその民は、世界の他のどの国、どの民族とも異なる国、異なる民族であり続けるからです。 - それゆえ、王よ、私がチンであるからといって、私が偉大であるとか、多くのことができるなどと虚しい自慢話をするために来たのではないことを知ってください。むしろ、私はあなたに言います、私は人間の中で最も弱い者の一人です。それでもなお、私は世界中のどの人間よりも大きな力を持っています。
しかし、よく聞いてください、私には誇るべきものは何もありません。私はただジェホヴィ(オーマズド)の手の中にある道具にすぎず、私が何かをするのではなく、彼の御方が私を通して行うのです。 - 私はあなたを見て、あなたが魔術師や司祭たちに質問を重ねてきたものの、何も満足していないことを知っています。
王よ、あなたの思考を高めようとしなかったことが、あなたの過ちであることを知りなさい。 - あなたは、第一の復活の天使、そしてそれ以下の天使たちの力の下にある魔術師たちと共に活動してきました。
- これらの天使たちは皆、独自の理解に基づいて教えを説き、彷徨える個として行動します。
そして、彼らの奇跡も同様に、単なる個としての奇跡に過ぎません。 - 私が教える御方は、小さな片隅ではなく、王国や国家レベルの奇跡を行います。魔術師を通してだけでなく、王や女王、そして一般の人々に対しても行います。
あなたもまた、彼の御方の道具なのです。 - ご覧なさい、あなたが魔術師と禁欲主義者に対して布告を発するまさにその時、他の五人の偉大な王たちも同じことをしているのです!
これはまさに奇跡です!
誰も彼の御方の奇跡を模倣することはできません。このようなことが偶然起こると考えてはなりません。
これらは偶然ではなく、ジェホヴィによって引き起こされているのです。なぜなら、第二の復活における神の天使たちは組織化され、強大な軍隊として働いているからです。 - ティジーは言いました。
「あなたは偉大だ、チンよ。そうでなければ、あなたの突然の哲学に、私は頭を混乱させてしまうだろう!
続けてほしい!
まず第一に、天使たちが本当に死者の霊魂であるかどうかを、どう見分ければよいのだろうか?
第二に、第一の復活と第二の復活を、どうすれば区別できるのだろうか?」 - チンは言いました。
「人は、自分の目と耳、そして霊的な目と耳を通して見聞きすることによってのみ、地上においても天界においても、あらゆることを知ることができるのです。これらの感覚が清らかで澄んでいる時、人は死者の霊魂が生きていることを知るのです。
おお、王よ、私は真実を告げます。
私の体の霊魂は、何度も体から抜け出たことがあります。時には主体的に、時には他動的に。これは私だけに与えられた特別な能力ではありません。何千、何万人もの人々が、修練によって到達できるのです。 - おお、王よ、第一の復活と第二の復活について知るべきは、個々の物事、あるいは地上の物事を司る霊魂、あるいは富や個人的な利益、結婚などを提案し、この人の場合は何が良くて、あの人の場合は何が良いかを説く霊魂、あるいは偉人の名を騙って、遠い昔に死んだ偉大な人物であると称する霊魂は全て欺瞞者であり、第一の復活を終えていない者です。
彼らは『我在、偉大なる霊魂、全人格』を否定します。
彼らの最上位の天界は、人間への再受肉と欲望に耽ることです。
彼らはあなたに媚びへつらい、あなたが前世でこの偉人だったとか、あの偉人だったなどと告げます。
彼らはあなたを利用して、自分の魔術師たちに利益をもたらそうとします。
彼らには真理も徳もなく、知恵もほとんどありません。 - 第二の復活は、個人に個人としてもたらされるのではなく、軍隊のようにもたらされるものですが、個人ではなく王国、国家、共同体にもたらされるものです。
天界において天使たちが組織化された共同体に属しているように、その組織は地上の徳のある人々の組織と協力して働いているのです。 - 王よ、これこそが叡智なのです。個としての自己から離れ、組織と一体となり、偉大なる霊魂と共に人々の復活のために働くことです。
あなたがこの目的のために多くの人々と一つになるように、御父もあなたや彼らと共に働いているのです。
あなたが個としての自己に留まる限り、個としての天使たちが個としてあなたのもとにやって来るでしょう。 - 個は個に対して答えます。
第一の復活は第一の復活者に、第二の復活は第二の復活者たちに。
さらに、全人格は万人の上に君臨しており、それぞれの秩序に従って、大いなる目的のために働いているのです。 - 王よ、私が新しい教義を説いていると思ってはなりません。私はただ、古代の人々にも伝えられたことを伝えているだけなのです。そして進んで信仰心を持った者たちは全員がジェホヴィに選ばれし民と呼ばれました。なぜなら、彼らが選んだのは確かにジェホヴィだったからです。
- それゆえに、全人格を否定する者は、彼の御方の秩序に属する者ではなく、また、そのような者に御父の光は宿っていないと見做してください。
しかし、万物が一つの調和のとれた全体であることを理解した者は、全人格という言葉の意味も理解しています。なぜなら、彼の御方は全てであり、ゆえに常在し、全てを満たし、あらゆる場所に及んでいるからです。 - 彼の御方とは対照的に、二つの哲学が並行して存在してきました。それは闇と悪です。
一つは、万物は人格を持たず、空虚であり、それを構成する要素よりも劣ると説きます。
もう一つは、唯一の至高なる存在は私が崇拝する偉大な天使であり、その者は人間のような姿をしており、万物から隔絶していると説いています。 - これらは、世界中のあらゆる教義、あるいはこれまで存在し、これから存在しうる全ての教義の基礎を成すものです。
後者は偶像崇拝であり、悪と呼ばれるものです。次点は不信仰であり、それは闇と呼ばれるものです。そして一番は信仰、真理、愛、知恵、そして平和です。 - これら三つをもとに、全ての人間はジェホヴィとその天使たちによって分類されます。
彼らは野原を眺める三人の男に例えることができます。一人は光を見ており、光を見ていることを知っています。もう一人は光を見ることを願っていますが、白い葉っぱしか見ていない者です。そして三人目は何も見ていない者です。 - 従って、後者は目撃者としては何の価値もありません。二番目の者は状況証拠による目撃者ですが、最初の者は確かな目撃者であり、全目撃者の中で最も高く、最も確固たる者になります。
その者は天界の御父を知っています。その者は花の中に、雲の中に、太陽の光の中に、果物や草の中に、野の獣の中に、あらゆる這うものの中に、星や月や地球や太陽の中に、御父を見出しています。
病める時も、健やかなる時も、悲しみの時も、喜びの時も、その者はあらゆるものの中に確かにジェホヴィを見出します。
その者はジェホヴィの目と耳が永遠に自分に向けられていることを知っており、恐れながらも、真実と信仰と誇りと喜びをもってまっすぐに歩みます!」 - ティジー王は尋ねました。
「おお、チンよ、人間の起源と運命は何であるか教えてほしい」 - チンは言いました。
「常在する御方は、母胎の中で人に生命を吹き込みます。そして、その時その場所でその者は新たな創造物となり、その霊魂はジェホヴィという霊魂から生を授かり、その肉体は大地から生み出されます。
御父はその者を二重の存在として創造されたのです。 - 人間の目的地は永遠の復活です。この点において、人間は永遠にいつまでも成長し続けながら、喜びにあふれた労働ができるのです。
- 王は尋ねました。
「もしジェホヴィが常に創造し続けているとしたら、天空は天使でいっぱいになってしまうのではないか?」 - チンは言いました。
「千人の人間が一冊の本を読んでも、その本は最初よりも多くの思想で満たされるわけではありません。
肉体を持つ人間は分割できない存在であり、それゆえに場所を占める。思考は魂にたとえられるものであり、これとは正反対です。一万人の人間があなたの花園を愛しても、その愛によってあなたの庭がより豊かになるわけではありません。
高尚な魂は天界において形も実体も持ちません。そして、彼らが住む領域も、肉体に比べれば同じようなものなのです」 - 王は言いました。
「私もあなたのようになりたいものだ!
もしあなたが杖を使って、私をあなたの半分ほどでも賢くしてくれるなら、私の王国をすべて差し出そう!」 - チンは言いました。
「信仰は、外套やサンダルのように取引したり、購入したりできるものではありません。しかし、信仰を得るまでは復活はありません。
鳥は、飛べると信じなければ、決して巣から飛び立つことはありません。
そして、信仰を得た時、あなたは自分の王国を捨て、天界の宝物を選ぶでしょう。そして信仰を得るまでは、あなたは自分の王国を保持し続けるでしょう。
これは、富める者にとっても同じように判断となります。 - 富裕者と王国の権力は、深い水中で、足に金の玉を縛り付けられた人に例えられます。
彼は、自らを縛るものから解き放ち、それらを投げ捨てない限り、水面に浮かび上がることはできません。同様に、人間も霊的に縛られており、自分の手でその束縛を断ち切らない限り、救済はないのです」
【29章】
- ティジー王はチンに言いました。
「あなたはこの私に偉大な光を与えてくれたので、私は全ての民にあなたの教えを受け入れるよう命じる布告を出そうと思う」 - チンは答えました。
「おお、人間よ!
あなたは私たちの御父をなんて浅はかに理解するのですかか!
暴力は御父の敵です。そのような布告は、他の天界の支配者の布告と何も変わりません。
それは自らを破滅させてしまいます。
彼の御方は偶像の神々のように剣や槍を持って来られるのではありません。
彼の御方は教育をもたらしに来るのであって、その最も重要な教本は、模範となる善行であり、万人への平和と自由なのです」 - ティジーは言いました。
「あなたは道理をよく弁えています。それでは最も偉大な人よ、聞いてください。
私に対して最も卑しい召使いであるかのように命じてください。私はあなたに従います」 - チンは言いました。
「おお、王よ、あなたを理解させられない私の無力さで私を苦しめるのですか!
あなたは誰にも仕えてはなりません。
ただ、偉大なる霊魂オーマズドにのみ仕えるべきなのです」 - 王は言いました。
「それでは、私は王国を捨てよう」
しかし、チンは言いました。
「まず、どの方法があの御方に最もよくお仕えできるのかをよく考えた上で、自分にとって最高の光となる道に従いなさい。そうすれば、間違いを犯すことはないでしょう」 - 王は尋ねました。
「私が王国と富を捨てて、あなたのように生きるにはどうすればよいですか?」 - チンは言いました。
「あなた自身で判断してください。もし私があなたのために判断を下し、あなたがその判断に従ってしまったなら、私はあなたを拘束してしまうことになります。
私にも自由を与えてください」 - ティジーは言いました。
「もし偉大なる霊魂が私にあなたの知恵を与えてくださるなら、私は偉大なる霊魂にお仕えましょう。
人はどれほどの期間、偉大なる霊魂にお仕えすれば偉大な叡智に到達できるのでしょうか?」 - チンは言いました。
「もしある人が何枚かのガラスを持っていたとします。一つは透明で、別のものは煙や油で曇っていたとします。それらをすべて同じように透明にするには、どれくらいの時間がかかると思いますか?
人間の自我も同じことです。それは魂を曇らせます。そして、人が自我を捨て去った時、その魂は清らかになります。それが叡智なのです。なぜなら、そのとき人は自分の魂を通して御父を仰ぎ見るからです。そうです、御父の声も聞けるようになるのです。
そして、人がこのことを行えるようになるまで、どれほど信仰を公言しようとも、御父の姿や存在を信じることはできないのです」 - 王はチンを何日も留め置き、深い叡智と喜びを感じながら質問を重ねました。
ある日、チンは王に言いました。
「ジェホヴィは私にこう仰せになりました。
『速やかにチンヤの他の五つの州に行き、そこの王たちにも私が何者であるかを伝えよ』
ですから、ティジーよ、私はあなたのもとを離れなければなりませんが、多くの日数を経た後、再びあなたのところに戻り、不死の命とはどういうものなのかをあなたにお見せしましょう」 - 王は駱駝と召使いを用意し、チンを旅立たせました。
チンが去った後、ティジーはこう自問しました。
「私はチンの教えを布告することはできないが、ティインやその他の偶像を崇める神々を廃止することを布告するべきだと思うが、そうしてはならない理由はないだろう」
彼は、自分が最善と思うことを実行し、司祭たちがジョス(神)、ホジョス(主上神)、ティイン、ポー、あるいは偉大なる霊魂以外の他の天界の支配者に生贄を捧げることを禁止しました。
【30章】
- やがて、チンはジャフェスの六人の王たちへの使命を終えるとティジーのもとに戻り、そこで死を迎えました。
- この時までに、チンは、自分、あるいは弟子のラバ長たちの手によって、各地に千以上の信仰者の家族(共同体)を設立していました。
そしてチンがティジー王のもとに戻ると、チンに会ってその叡智を学ぶべく、世界各地から男女が集まりました。 - そして、病気や足の不自由な者、盲人、耳の聞こえない者など、あらゆる病気や障害を持つ者たちに対して、チンは「E-O-Ih」という言葉を唱えて癒しました。
また、悪霊に取り憑かれた人々に対しては、チンは杖で触れることで癒しました。そして、多くの死者を生き返らせました。こうして彼は人々の前で、全てを成し遂げる力を持っていることを示したのでした。
そうです、彼は空中に舞い上がり、群衆の頭上を歩いたりもしたのです。 - そして彼は空中にいる間、群衆に向かってこう言いました。
「今、私はあなたたちのもとに降りて、誰もが迎える死と同じように死ぬでしょう。そして、あなたたちは私の体を五日間、横たわらせておいてください。そうすれば、目がくぼみ、黒くなり、確かに私が死んでいることが分かるはずです。 - そして六日目に、あなたたちはその遺体を炉に投げ入れ、灰になるまで焼き尽くしてください。そしてその灰を野原に持って行き、撒き散らしてください。そうすれば、地上に私の姿は、一切の痕跡も残らなくなるでしょう。
- そして七日目は、あなたたちにとって聖なる日となります。
見ていてください、あなたたちは私の灰を撒いた野原に旋風が起こるのを目撃するでしょう。その旋風は私の体の灰を集め、そこに私の魂が宿り、あなたたちが今私を見ているように、再び完全な姿になって舞い戻ります。そして私はその旋風を破って地上に降りてきて、さらに七日間あなたたちと一緒に過ごします。
その後、あなたたちは天から極めて大きな光を放つ船が降りてくるのを目撃します。私はその船に乗って、第二の天界へと昇っていきます。 - いかなる男女子供も「チンは神であった」と言ってはいけません。また私の像を造ったり、記念碑を建てたり、あるいは最も卑しい人間に対してする以上のことを私や私の記憶に対して行ってはいけません。なぜなら、私は地上の財産、欲望、願望を捨て去った一人の人間にすぎないということを、あなたたちに言いたいからです。
- そして、私が行ったこと、あるいは私が行ったと知っていることは全て、地上に生を受けた全ての人々にとって実現可能なことなのです。
- 全てのことはジェホヴィ(オーマズド)によって実行可能であり、全ての誉れと栄光はただジェホヴィのみに帰せられるべきであるということを心に留め置いてください」
- こうしてチンは死に、ティジー王の監修のもと、六日目に火葬にされ、その灰は命じられた通り野原に撒かれました。
- そして七日目、群衆がその場所一帯を取り囲んでいる時、旋風が起こり、灰をわずかに巻き上げると灰は光り輝き、チンの魂がそこに宿り、チンは旋風を突き破って王の足元に降り立ったのでした。
- チンは言いました。
「あなたたちは私が誰かを知っていますか?」
王はこう答えました。
「確かにあなたはチンです。今回のことが本当に起こったため、あなたの故郷は、今から永遠にチンヤと呼ぶことを私は布告します!
そして私は他の王たちにも使者を送り、彼らにも同じことを命じます」 - チンは言いました。
「そう思うなら、そうしなさい。
御父は私に、御父に選ばれし者たちと、王であるあなたと共に七日間過ごすことを許してくださいました。これから名を挙げる者たちに、私に会いに来るように伝えてください」
そしてチンは王に、誰に来てほしいかを伝えました。 - チンは、死ぬ前と全く同じように地上を歩き回りました。誰が見ても、チンが死を経験したと気付く者はいませんでした。
彼の衣服は旋風の中の灰から作られたものであったにもかかわらず、前と変わりなく、何ら違いはありませんでした。 - チンが現世に滞在する最後の日、彼はティジーと自分が選んだ人々を呼び集め、このように語り掛けました。
【31章】
- 「兄弟姉妹よ、偉大なる霊魂の御名において、これから私が語ることを聞いてください。
これから語ることがチンの最後の言葉です。なぜなら、御父が私を呼んでいるからです。
私の説教を心に留めておくためによく聞いてください。そして配慮もお願いします。私はあなたたちと同じ、ただの一人の人間に過ぎないからです。 - 私は、この偉大な人々をジェホヴィの御手によって囲い込むためにこの世に遣わされました。
私はあなたたちを、今後三千年にわたって特別な民としました。
私はあなたたちに平和と自由を与え、血塗られた過去を覆い、互いに愛し合い、尊敬し合うことを教えました。 - チンヤは世界中で最も人口の多い国となるでしょう。これは御父があなたたちに与える奇跡です。私があなたたちに与えた礎の上に、あなたたちの教義が今後永遠に続いていくことでしょう。
- 神々(偶像)や救世主に注意しなさい。特に、偉大なる全人格を信仰しない死者の霊魂には十分気を付けなさい。
- 彼らは全員、戦争の扇動者であり、地上の事物に貪欲な者たちです。
- あなたたちは互いに排他的でありなさい。特に、異教徒があなたたちの中に入り込み、私の民と結婚することを許してはいけません。
- また、あなたたちは彼らと戦ってはいけません。
- しかし、あなたたちは彼らを遠ざけるために、周囲に城壁を築くことは許されます。そして、この城壁は、あなたたちを苦しめたり傷つけたりする全ての人々に対する御父の裁きとして立ちはだかってくださるでしょう。
- そして、月の満ち欠けごとに、あなたたちは私の契約、すなわちジェホヴィとの契約を更新しなければなりません。
- それをあなたたちの子どもたちに教え、彼らにはその後に続く彼らの子どもたちにも教えるように命じてください。
こうして永遠に伝え続けてください! - あなたたちは、全ての天界の統治者を無視し、ただ常在にして我在たる創造主のみを崇めることを、偉大なる霊魂に誓いなさい。
- たとえ偶像崇拝者たちがあなたたちの中に入り込み、彼らの神や主神、あるいは救世主を宣言しても、彼らの言葉に耳を傾けてはいけません。それでも彼らを迫害したり、傷つけたりしてはいけません。なぜなら、彼らは闇の中にいるからです。
- 彼らに対して傲慢になってはいけません。なぜなら、あなたたちの祖先も彼らと同じだったからです。
- 御父は広大で実り豊かで喜びにあふれる世界を創造し、それを人間に委ねました。
- ある民族には一つの国を、別の民族には別の国を、というように、世界中の全ての民族にそれぞれ国を与えました。
- 御父はあなたたちにチンヤを与え、こう仰せになりました。
- 『この私の聖地において、あなたたちは兄弟姉妹のようにありなさい。
- 太古の昔、古き信仰者であった私に選ばれし者たちによって、この地は花咲き誇る王国として築かれました。
- しかし、彼らは私の戒めを無下に扱いました。
- 偶像崇拝者たちが彼らを襲い、彼らを滅ぼし、豊かな畑を荒廃させました。
そうです、私の民の骨はこの全土に撒き散らされたのです。 - しかし、今やあなたがたは再び救い出され、私の天界の王国のように、チンヤを再び繁栄させるでしょう。
- そして、あなたたちは子孫を増やし、家を建て、開墾し、私があなたたちに与えたこの地を、勤勉で、平和で、そして倹約の模範となるように努め、代々受け継いでいきなさい。
- そして、一つの王国に住むことができる大衆は、愛、忍耐、そして美徳を体現することでしょう。
- あなたたちは戦争と戦争のための発明を軽視することにより、今日における私の臨在の証拠としてください。
- なぜなら、私が全ての不正、戦争、偶像崇拝を根絶し、全世界にとって唯一の存在となる時が必ず来るからです』」
- チンはこうして語り終えました。彼の最後の言葉が終わったのでした。
ジェホヴィの火の船が、最も高い天界から降りてきました! - チンはこの中へと昇っていくでしょう。そして、清く善良で、愛に満ちたあなたたちもまた、そのように昇っていくでしょう。
- 大きな雲のようでいて、しかし輝きに満ち、聖なる光で目をくらませるような光が、群衆がいる野原全体に降り注ぎました。
- 多くの人々が恐れ戦いて倒れ伏しました。多くの人々が深い悲しみの中で大声で泣き叫びました。
- その後、チンはティジーに口づけをし、すぐに野原の中央へと歩み寄り、その途方もなく大きな光の中へと消えていきました。
- その光は旋風のように回転し、高く上昇していき、やがて見えなくなりました。
- チンは去っていきました!
- そして今、ジェホヴィの御力と栄光が顕現しました。
ティジーは直ちに神、主神、救世主を否定し、あらゆる光(ジェホヴィ)を崇拝する全ての人々を保護する特法を制定しました。他の4人の王たちも同様の勅令と法を発布しました。 - チンヤ全土において、信仰者たちは無事に自由へと解放されたのでした。
[ジェホヴィの息子カピーリャ、モーセ、チンという、同時代を生きた3人の啓示はこれで終わります]
原文:OAHSPE – The 1882 Edition (English Edition)


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